目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
狂った妹の殺し方
柘榴
ホラー都市伝説
2024年10月26日
公開日
90,239文字
連載中
この物語に『救済』や『希望』は存在しない。
存在するのは『狂気』と『絶望』だけ。

ごく普通の高校生・塚原 祐介は妹の中学生・塚原 杏奈と2人で暮らしていた。
順風満帆に見える理想の日常……だが、その日常は歪んだ愛と狂気によって打ち壊される。

季節は夏、祐介の周りでは奇妙かつ凄惨な猟奇事件が立て続けに発生。被害者は皆、祐介と近しい人間たち。
そして、被害者たちは共通して身体の『一部』を無惨に切り取られていた。

この凶行は、狂った妹・杏奈の仕業なのか?
そうだとしたら、何の為に? 誰の為に?

全ての結末を知った時、そこに救いは一切無い。

第1話 あの夏の記憶

 この物語は俺たち兄妹と2人の幼馴染によるどうしようもなくて、救いようのない物語だ。他人から見たらそれはあまりにも狂気染みたもので、理解なんて到底出来ないだろう。

 人が人を好きになる。たったそれだけの事なのに、どうして人はこんなに醜く、残忍な生き物になってしまうのだろう。


 夏が終わる。

 夏という季節は、俺にとっては人生を2回も狂わせたロクでもないものだ。

 1度目の夏休みを思い出す。

 10年前のあの夏……俺は少女と約束をした。


『ねぇ、ゆうちゃん。ボクとあんちゃんのどっちが好き?』

『なんだよ、いきなり』

『いいから! どっち?』

『だって……杏奈はまず妹だろ』

『あんちゃんだって女の子だよ。ボクとあんちゃん、どっちが好きなの?』

『……杏奈』

『……なんで?』

『あいつの方が俺に優しいし、女の子っぽい』

『あはは! そっかぁ……やっぱりあんちゃんか』

『……なんだよ、やっぱりって』

『そりゃ、あんちゃんには勝てないかー。あんちゃんはとっても良い子だもんね』

『……そんな事』

『けど、おかしいなぁ。ボク、毎日毎日ずっと神様にお祈りして、お供えまでしてるのに。ゆうちゃんがボクの事を好きになりますようにって』

『馬鹿、そんなの意味ある訳ないだろ』

『馬鹿じゃないよ! 絵本に書いてあったんだもん! 毎日ちゃんと神様にお祈りしてれば、きっと夢は叶うって!』

『はいはい、優姫は何でもすぐ信じるんだから』

『もう! ゆうちゃんは何でもすぐ疑う! じゃあ約束! ボクはこれからもずっとゆうちゃんの為に毎日サボらずお祈りする。その約束を大人になるまで守れたら……結婚してよね』

『……おう、ぐうたらな優姫にそれが出来たらな』

『約束だからね! 結婚したら、一緒にお城みたいなお家に住んで、美味しいご飯沢山食べて、好きなお洋服を着て、好きな…』

『あー! もう分かったって! もし約束守れたら、俺が優姫と結婚してやるよ!』


 あの日、俺は少女とくだらない約束をした。

 その約束をした後、少女は行方不明になった。夏の暑い日だった、彼女は突然姿を消した。まるで神隠しにあったかのように。

 そして……2度目の夏を思い出す。今年の夏休み、俺は大切な全てを失った。


 これは俺たちの人生をぶち壊した最低で、最悪で、狂った日々の記録だ。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?