「其方は?」
ふらりとその場から前に進み出たのは、背の高いひょろっとした体つきの青年だった。
「フリクソン子爵家次男キーネルと申します~
自分がその銃を開発しました。
上手く実用化できて満足です~」
丁寧なのだが間延びする口調。
とは言え敬意は払っている様にアンネリアには見えた。
「幾つかの、これまでには無い技術が使われている。
一体それは何処で学んだのか?」
「基礎は帝都のアカデミーで。
あとは独学で。
常日頃から、現在の銃には無駄が多いと思っておりましたので~何とかならないものかと、こつこつせこせこと研究をしておりましたが如何でしょうか」
「なるほど、其方もまた、常軌を逸した一群なのだな」
「そうですか?
お前は社交の才能は無いのでできることをやれという父からの教えを守っただけですが~」
「フリクソン子爵は正しいな」
くくっ、とアンネリアは笑った。
「して、何処が無駄だと?」
「弾丸充填関係と、そもそもの弾丸、それに用途に応じた大きさの問題ですね~ それでまあ、長年の友達が女の子でも簡単に持てる銃は無いかと相談されたんでちょっと試しで作ってみました」
「そして上手くいったと」
「はい」
にこにことキーネルは薄い笑みを漏らしながらうなづいた。
「その銃が今、この国の王太子を殺したことには何か思うことは?」
「さて」
うむむ、とキーネルはもじゃもじゃしたうす茶色の髪に指を突っ込むと、少しだけかき回した。
「殿下とは違いますが~自分も何処か壊れている様でして。
自分にとっては銃の性能が発揮されたことの方が重要ですし殿下の人間性は、自分の作品を上手く使ってくれる人であれば惜しみますが、失礼ながらどうもきっとあの性格でしたら敗軍の将になるに違いないので、非常に申し訳ないですし不敬だとは思うのですが、残念という気持ちは湧きませんのであしからず、です」
あはははは、とアンネリアは笑った。
「其方もまた壊れているな」
「知っております」
「本当にまあ、だが美しいもののために全てを投げ出せるこの男の友人であるなら、そのくらいでもおかしくないな」
惜しいな、とアンネリアは思う。
この国に置いておくには、この三人は勿体無いと。
そも、まずは第二王子自体を王太子につけてしまったこの国の王の決定自体が間違っている、と彼女は思う。
侍従はよく見抜いていた。
そして他の者もうすうすは気付いていただろうが、フットサム王子の資質は、ただ単に我が儘であるというものではない。