ただどうも、この計画には漏れがあった様なんですよ。
と言うのも、真の目的である王子王女のうち、王女が実にすばしっこかった。
これはもう、王女にはあるまじき。
離宮でのびのび暮らした関係なのか、
で、王女を取り逃がした訳です。
その後、次々とガキ傭兵も殺されて行くんですが、一人だけ傭兵にしておくには惜しい様な綺麗な子が居たらしいんですよ。
それをこの時の雇い主は、条件つきで自分の自由にするべく生かしてしまったというんですよ。
非常にずさんですね。
ただこのずさんなところが、何か引っかかるんですね。
で、そういう話を同僚から、何か聞いたんじゃないか、ということが、結局は俺の「情報を盗んだ」ということですよ。
ただそれが何故イスパーシャ王国から出るのか。
それが問題なんですよね。
俺はお家騒動だと踏んでます。
ですがそれを帝国には報告していない。
これは帝国的には如何なものなのでしょうね?
まあそれで、俺はこれはやばいと思ってイスパーシャから脱出したんですね。
で、また名前も変えて。
それが今回の名なんですがね。
将棋しながら帝都への道を進んで、それで下町に隠れていたという次第ですね。
いやあ、やはり帝都の野良将棋は楽しいですよ。
皆が皆、何かと陛下の代になってから行われる様になった将棋大会のために、帝都に居着いているという者が増えましたでしょう?
陛下が何故将棋をこれほどに楽しまれるのか、は自分などには想像もつきませんが。
しかしやはり、この将棋をやっている時が一番楽しい訳ですよ。
――家庭?
はは、持つ気には結局到底持てませんでしたよ。
遠い空の下、どっかに俺の子種でできた奴が居ると思うだけで気持ち悪くなりますね。
そう、相変わらず女は仕事以外では近づけたくはないですね。
寄られてもあの肉には嫌悪感しかない。
ああ、かと言って別に男とどうの、もそうそうある訳でもないですよ。
そういう熱中できる部分が、大概将棋に行ってしまったんですよ。
だから同じ様に将棋にとち狂った連中が長屋に住んでる様な、今の暮らしは最高だった訳ですよ。
まあ、正直大会に出なければ、そのまま延々暮らしていけたんですがね。
出てしまえば、絶対に俺は捕まるでしょうから。
だから様々な大会でも、周囲の連中が出場するのを見送るだけでしたがね。
ところが陛下、円盤を出してくださった。
これはさすがに俺も心動かされましたよ。
で、思った訳です。
一つ賭けてやろうかと。
円盤太陽杯で優勝できたなら、ともかく陛下にイスパーシャの件を訴えようと。
さすがにそうでなくちゃ、残念な同僚も救われない。
気持ちを壊してなおかつ消された奴がどうにもいつもどっかにひっかかってるんですよ。