目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第6話 円盤将棋の妙

 だからこその「円盤」。

 何処に敵が居るか、というのが不確定なんですね。

 だからまず配置自体を設定することになります。

 当初の駒位置が定まっている他の盤と違い、円盤は最初の陣形から――すなわち、戦略から考えねばならないというものなのです。

 無論最初の配置に制約はあります。

 ですが、その制約自体も大会なり縛りなり、変更することが可能です。

 そしてそもそも「円盤」である以上、枡目も細かくすることが可能です。

 大陸の場合、枡目盤ではなく、砂漠だの密林だの設定したジオラマの様な盤を使うこともあるといいます。

 まあそこまでくると、遊戯ではなく本当に仮想戦略ですがね。

 ちなみに自分が体験した最も難しい「縛り」は、まあミツバチ縛りに近いものですね。

 歩兵と頭目しか居ない、というものです。

 これは正直、「革命」を意味する訳ですよ。

 既に正規軍など無くなった有象無象の民衆と、ろくな訓練も受けていない逃げ遅れた貴族だけで戦う、という設定です。

 そして勝利条件が変わってきます。

 王政側と革命側に分かれた場合、頭目は王政側は王女王、王が取られれば負けです。

 一方の革命側は強い駒、何でも良いのですが王女王以外、主・副・代理、その三つを全て取らなくてはなりません。

 王に替えは無いですが、頭目達には替えがある訳です。

 だけど王女王という駒は、強い駒三つより単品としては強いこともあります。

 あとはどちらの側の戦略戦術が元々得意か、ということですね。

 今回の大会の参加者がかなり南西に偏っていたのにお気づきですか?

 帝都で野良将棋をしている様な者でも、円盤に行き着く者はそう居りません。

 何故なら、六角八角十二角までいったとしても、あくまでそのルールは同じなのですね。

 ですが円盤の場合、前提が違うのですよ。

 この感覚が判るのは、やはりある程度南の大陸の感覚と脅威が判る地方の人間です。

 ――で、俺が指名手配されたのは、その大陸に派遣されていた時に向こうに取り込まれた、という容疑がかかったからです。

 これが少し前の話ですかね。

 細かい期間とかはそちらの調べの方が確実ではないでしょうかね。

 ともかく、ちょうどイスパーシャで、王の愛妾と脇腹の王子王女が住んでいた離宮が襲われた頃です。

 さてここなんですね。

 自分はイスパーシャ王国の情報系の傭兵だったのですが、何故かここで大陸から、この離宮に忍び込み、愛妾と王子、それに幼い王女を殺した間者の一人ということにされてしまった訳ですよ。

 当時の名前が、ラスラクサ・アンタイユ。

 大陸に送り込まれた時の名とも言えますね。

 向こうでありそうな名、ということです。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?