さて宴から戻ってみると、到着した時には綺麗に飾られていた離れが見事に我々仕様になっていた。
離れと言えども広さだけなら辺境伯領の館とさして変わらない。
ただ向こうが三階建てであるのに対し、こちらは張り出しに広さを取った二階建てだった。
「表」に連れて行くと言った人数には充分すぎるな広さだ。
そして既にそこで宴に出なかった彼等は庭で食事をしていた。
「ただいまー」
うへぇ、という顔をしてバルバラは持ち込んできた焚き火用の台を使って肉を焼いている男達に手を挙げた。
「お帰りなさいお嬢」
「ぱーてぃとやらは如何でしたかー」
「疲れた」
そう言いつつ、あちこちに置かれた半切りの丸太椅子にどすん、と腰掛けた。
広い庭のあちこちに、近くの林で切り倒してきた木で作った椅子が置かれている。
テーブルはまだ製作最中らしい。
十人程度の彼等では半日かそこらではさすがにそこまでできなかった様だ。
「木の質が違うんすよ」
「確かに、柔らかそうだな」
串刺しのあぶった肉を渡されたバルバラは座って触った感想を言う。
ちなみにこの焚き火台は持ち込みだ。
もともと雪の中でも火が点けられる様にと冬の俺達の作業の常備品だ。
帝都に出向く際にも、天候に関わらず焚き火ができるというのはありがたいものだし。
それがこういうところで役立つとは。
「さすがにこの綺麗に整えてある芝生の上では可哀想だと思いましてねえ」
「確かにそれは言えてるな。花もあちこちにあるし」
がっ、と大口を開けてバルバラは肉に食いつく。
よほどパーティでろくに食べられなかったのが堪えているのだろう。
ともかくあの場では王女達に質問攻めされだった。
そしてなかなか美味そうだ、と思う皿があってもどうも食べたいから持ち込んで、というのが言いづらい雰囲気だったのだ。
「あの姫さん達も、終わってからまともな食事するんだろうなあ」
「らしいですぜ。食材を持ってきてくれた厨房の連中がそう言ってましたし」
何でも、獲物を林に狩りに行こうとしたら、慌てて食材を持ってきてくれたそうだ。
「そんなことをしなくとも!」
ということらしい。
まあおかげで、普段は滅多に食べられない新鮮な野菜が沢山貰えたそうで、今もこの焚き火台の上に渡してある網の上には、串刺しにしたタマネギやにんじん、それにトウモロコシと言ったものが良い匂いを立てている。
「トウモロコシ美味いぞ!」
「こんなに甘いのができるんですな。うちでは甘くならないから馬の餌にしてますがねえ」
「その辺り詳しく聞いておいてくれ」
「了解っす」
皆美味いものには目が無い。
どのくらい居るのか判らないが、できるだけ向こうに戻った時に活用できそうな種類の野菜について知っておこう、という興味には満ちあふれていた。