「紹介しよう」
王は俺達と「家族」を向き合わせた。
「わが正妃ローゼル。そして第一側妃タルカと、王女エルデとアマニ。第二側妃アマイデと王女ユルシュ。そして第三側妃のセレジュと王子セインと王女クイデ。このセインがバルバラ殿の婚約者ということになりますな」
バルバラはちら、とセイン王子の方を見て、軽く頭を振った。
すると王子は露骨に不快そうな顔をした。
一方その隣のクイデ王女は目を瞬かせた。
「第四側妃のトレスと王女トバーシュ、最後に第五側妃のマレットと王子ミルトとナギス」
「義姉上、宜しくお願いします!」
この時十二歳だという最も年下であるナギス王子は笑顔と明るい声でそう言って頭を下げた。
これこれ、とマレット妃が今ではない、とばかりにたしなめる。
「良い。元気な御子ではないか。私も君とは仲良くしたい。宜しくな」
そう言いながらぽん、と少年の肩を叩くバルバラの態度に、十三歳だというアマニ王女とトバーシュ王女が軽く口を開けた。
それぞれの側妃はほほ、と笑顔を見せながら笑い合っていた。
ただ、正妃ローゼルと、第三側妃のセレジュの笑顔は硬かった。
――というか、笑顔というものを貼り付けている様だった。
少なくとも俺達のところではあまり見ないものだ。
正直俺からすると気持ち悪い。
そしていつの間にかするりとゼムリャが抜け出し、人々の間に紛れていった。
バルバラは長椅子に座り、主に王女達から質問攻めにあっていた。
「凄く細かい刺繍ですね! 何か素敵」
「ありがとう。これは自分でやったんだ」
「まあ、ご自分で!」
「私達のところでは、皆自分の衣装は自分で作ることができる様にする。上手くは無いが、これも自作だ」
「ええ! そうなんですか! 凄い!」
「刺繍は私達も致しますが、こういう延々続く模様の図案は致しませんね。根気が必要ですわ」
若い王女達は単純にバルバラの服や頭に巻いた飾り帯の模様に凄い凄い、と言い、ユルシュ王女は刺繍の図案に感心と、何か別のことも考えている様だった。
「それにしてもお三方だけなのですね」
「他の皆忙しく。なかなか違う環境だと今夜眠れるか判らないから、と寝床をな」
「どれだけ違うのですか?」
アマニ王女がぐい、と迫る。
「そうだな、まあ、こんな綺麗でもなければ、豪華でもないな」
「普段はどんなことをされているのですか?」
「雪が降る前は森でできるだけ多くの木の実を穫ったり、狩りに出たり」
「狩りに!」
その言葉にクイデ王女が反応する。
そう言えば、この王女とセルーメさんは師弟関係だったはずだが―― ここで口にしていいのかどうか。
「皆さんは狩りは」
「クイデは確か乗馬が好きよね」
「ええ。でも狩りまでは」
「馬に乗れるのか、それはいい」
すると「何がいいものか」という声を俺の耳が拾った。
同じ長椅子の側のテーブルの近くには居たが、できるだけ遠ざかりたい、という態度が見え見えだった。