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第21話 意外な伏兵の第二王女と⑥

「その後セレーデ夫人と一緒に、行ってみたかったというその大会の記録が揃っている場所へと行ったの。

 私は何の大会で、何の記録が目的なのか、さっぱり判らなかったの。

 だけど壁につけてある金色のプレートに、ミツバチの模様と一緒に、三人の名が刻まれていたのね。

 セレーデ夫人はこれを見たく、そして私に見せたかったんですって。

 説明がその下にあったのだけど、こうあったわ。


帝紀***年

六角盤将棋ミツバチ杯優勝

(三者引き分け)

ファルカ・アレイン

バーデン・デターム

カイシャル・セルーメ

なお三者ともその場にて自害にて、感想戦等は無し


 セレーデ夫人が言うには、これは将棋の試合だったというの。

 そしてこのファルカ・アレインという名は彼女の母君だって言うのね。

 でも私、そのファルカという名にちょっと聞き覚えがあったの。

 確か、お母様のところに居た侍女がそんな名だった気がして。

 だからまあ、ここしばらくずけずけと言うのがクセになっていた私は、貴女のお母様? と露骨に聞いてしまった訳。

 すると彼女、こううっすらと微笑んで言ったのよ。

 『名前はね』と。

 名前は。

 それ以上は言わないでおく、とばかりの表情だったので、私も聞かなかった。

 だけど、……だけど! もしかして、ということは考えるわ。

 あの時お兄様をひっぱたいたくらいだから、絶対お母様だということは疑わなかったけど…… まさか、とね。

 でも、いずれにしてももう三人とも亡くなっているのだから、それを知るすべは無いのだけど。

 セレーデ夫人は満足した、と言ってたわ。

 そしてまた、何処かで会えるといいですね、と。

 帝国は広いし、私達は日々に忙しいし、帝都に用事があるのでなければ、そうそう会うことは無いので、手紙を交換とかそういう話はしなかったわ。

 しなくとも、私たぶん、今周りに居る皆と話せばいいんだな、って思えるし。

 お母様がどんなひとだったか、いつかお義母様に話して、どう思うか聞いてみたい気もするのだけど。

 まあそれはもう少し後にしてみるつもり。

 ともかく私はそんな風にして忙しく過ごしながら、今は子供が生まれるのを待っているところ。

 マリウラは仕事の鬼になっていると思うけど、ユルシュお姉様にこき使われる様だったら、こちらへ来ればいいと思います。

 それでは。

 身体を大切に」


 私は何となく言葉を無くしたまま、手紙をユルシュ様に渡した。

 ぱっぱっぱっ、とユルシュ様は手紙を読む。


「あぶり出しとか無いわね」

「そんな約束してません」


 そう、と言って今度はじっくり内容を検討しだした。

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