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第20話 意外な伏兵の第二王女と⑤

 帝都で皇帝陛下に謁見したのか。

 私は読み続ける。


「正直、帝都の門をくぐった時、びっくりしたわ。

 何が、って、チェリの王都と違って、ともかく大きいのよ。広いのよ。

 そして色んな人々が居たわ。

 私はアイデイル侯爵家相当の格好をしていた訳よ。

 もしチェリに居たらもの凄く目立って、それこそ人々からじろじろ見られるところだけど、そんなこと無くて。

 ああ、こういうところでカイシャル先生は勉強したんだなあ、と思ったらちょっとしみじみしてしまったわ。

 皇帝陛下がおわす居城は、本殿自体はそれほど大きいと思わなかったのだけど、その前の広場がもの凄く広かったわ。

 何でも、色んな帝国内の様々な大会がそこで行われるんですって。

 その時は何もなかったから、ただ小砂利だけの広場の広さでも圧倒されちゃったんだけど。

 だってそこだって常に手入れされてるってことでしょ。

 で、どうやら貴族の謁見にしても、爵位ごとに曜日が決まっていたらしくって。

 私達は週の真ん中に登城したわけ。

 そこで順番待ちをしていたら、一人の女性に声を掛けられたの。

 同じ日だから、帝国の侯爵夫人なんだけど、私には知り合いが居る訳がないので、首を傾げていると、『チェリ王国の元王女様ですよね』と。

 セレーデって名乗ったその夫人は、何でも父親から私のことを聞いていた、と言うの。

 その父親というのが、何と、カイシャル先生だったというの! 

 侯爵家に嫁いだということは耳にしていたけれど、会えるとは思っていなかった、嬉しい、と言ってくれたのね。

 先生に娘が居たなんて初耳だけど、セレーデという名であるあたり、何となくそれもそうなのかもなあ、と思ったわ。

 で、何でも皇宮には様々な大会の記録が飾られているから、それを見に来た、というの。

 そこで一緒に行かないか、と誘われたのね。

 何故だか判らなかったけど、拝謁の後で行っておいで、と夫が言うからそこは乗ってみたの。

 そして皇帝陛下への拝謁なのだけど。

 お父様とそう変わらないお歳だけど、……もう、圧力がまるで違うわ。

 一つ一つの言葉、一挙動の重みが凄いの。

 帝国の皇帝は、実力重視だと聞くわ。

 どんな方法をとったかは判らないけど、沢山の部族や属国からそれぞれ出した妃を抱えた後宮を持って、沢山の子の中から、その座を得る人の迫力っていうのは本当にチェリのそれとはまるで違うのね。

 そう言えば、私とそのセレーデ夫人は、後宮の方も案内してもらったんだけど、またこれが凄いの。

 広さもそうだけど、何というか、一つ一つの妃の建物が皆同じなのね。

 どれだけ裕福な部族や属国でも、貧しいところと建物は同じなの。

 だけど庭はとても綺麗。

 特に百花の王、と言われる牡丹! 今見頃だったので、こんなに鮮やかなんだ、って驚いたわ。

 夫にその話をしたら、花をそうそう飾ることができなくて済まないけど、と言われちゃった。

 だけど私こう言い返したわよ。

 草原には何処とも代えがたい広い空があるって。

 帝都は確かに素敵だったけど、一度草原のそれを見てしまうと、とても狭く感じるのね」

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