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第7話 不器用な正妃様と②

 さてその正妃様が、いつものがちがちの最上級の上から言葉と並行して、根性で崩そう崩そう、と周囲の言葉や、自分が昔喋っていた口調を思い出しながらごちゃ混ぜにして私に説明したのはこういうことだった。


 まずこのたびの件で、自分はとても驚いた。

 そして国王陛下はとても傷ついていらっしゃる。

 何と言っても最愛の第三側妃であるセルジュ様があんなことになって、しかも自分のことは愛していなかった、ということを知ったのだから。

 しかも王としてその側妃の選択の目を誤った、セイン王子のおかしさに気付かなかったということで、王位もエルデ王女に渡すことになった。

 陛下はとても落ち込んでいる。

 せめて最初の妻たる自分は彼を慰めたい。

 だけど自分はずっとそういう女性として国王陛下から見られず、あくまで国政のパートナーとしてのつながりしかなかったから、今更どういう言葉をかけたらいいのか判らない。

 では他の側妃に慰めてもらえばいいのじゃないか、と思って見渡してはみたのだという。

 だが第一側妃のタルカ様は女王となる娘のことでいきなり手一杯だし、かと言ってアマニ王女のことを放っておく訳にもいかない。

 第二側妃のアマイデ様はエルデ様が女王となった暁には、とりあえず正妃の役割の中継ぎをするためにまたこれはこれで大変なのだと。

 女王には王配という相手が就くこともあるが、どうもエルデ様は独身を貫くおつもりらしい。

 だからそれまで正妃様が行ってきた、王と同等の政治のパートナーなのだが、とりあえずは常に公務を共にしてきたすぐ下の妹としたい、とおっしゃってる様で。

 というのも、ユルシュ王女は第二王女かつ、セイン王子より年上なのに、未だ何処かへ縁づこうという気配もなく、ひたすら姉の補佐をすることを楽しんでいたのだという。

 この娘同士の関係が良いせいか、タルカ様とアマイデ様との仲は良好。

 それがセレジュ様の動かした結果だったとしても、ともかく仲がいいのは確か。

 そしてそれは、後から入った第四第五側妃も同様。

 第四側妃トレス様はばたばたしているうちに、早くトバーシュ王女様の降嫁先を見つけなくては、といきなり焦りだしたし。

 第五側妃マレット様は、エルデ様における王太子として、第二第三王子達どちらかを立てる必要ができそうで、またそこで色々とややこしくなるとか。

 で、正妃ローゼル様は、これまでの多忙な時間がいきなり空いてしまい、その上夫を慰める人員も自分しかいないというのに、どうやって慰めたらいいのかさっぱり判らない、とおっしゃるのだ。

 そこで何で私なのか、と聞くと。


「其方は平民であったにも関わらず、短期間に王子と恋愛関係らしきものを構築することができた。それは私には無い才能であろう」


 とのことだった。

 何だろう。

 いや、短期間に貴婦人らしくなれたことを誉められている分にはいいんだけど、何か微妙に喜べないんですが。

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