……今まで問題は三人かと思っていたけど、もう一人増えるなんて……
一体王家の人々はどれだけ私的な相談ができる人が居ないんだろう……
犯罪の片棒をかついだ私が思うのも何だけど、あの方々達には友達が居ないんだろうか、と思ってしまう。
何せ次に来たのはこの方だ。
地味なドレスに前掛け、ボンネットで髪を隠しているこの方ときたら。
「あの子はもう戻った様ですね」
「……もう少しお言葉をお崩しになった方が良いのではないでしょうか、正妃さま」
そう、正妃ローゼル様。
さすがに私は、この方が私の元にいらっしゃるとは捕まった時点では、全く考えても居なかった。
なのだが。
何と最初に私のところに愚痴を吐きに来たのはこの方だったのだ。
セイン王子より早く!
そう、まずいらしたのは、私の処分が正式に決まるまで軟禁されていた場所だ。
そもそも軟禁場所が「良すぎた」。
王宮の離れの中でも、人気が無い、普段は使われないやたらに庭が広い一つの中にある使用人部屋に私は留め置かれていた。
使用人部屋と言っても、時期によってはそもそも使用人をおかない場所なので、ただがらんとしているだけで、居心地は実に良かった。
だから私はまず思った。
いやそれ罪人に待遇良すぎるでしょ?
だがどうもそこにしたのは、そっと正妃様がやってこれる環境だったから、ということだった。
監視する兵を出口という出口に置き、ローゼル様は私の前に座った。
正直、全く意図が掴めなかった。
ともかくこの方に関しては、判らないことだらけだったのだ。
「あの…… 一体私に何の」
語尾をぼかして向こうの言葉を待った。
「どう言ったらいいのか」
はあ、と正妃様はため息をついた。
「私、もう長く、正妃たる口調で皆に話す様になっておる…… いるので、其方と忌憚ない話をするのに上手く言葉が出て来ないのだ…… のよ」
忌憚ない話。
何で?
しかも何ですか、この方、普段のあのかっちりした最上級の方のお話しになる口調をあえて崩そうとなさって!
しかも、もしかして、そうじゃない喋り方を忘れてしまったからどうしようと悩んでいるという訳ですか!
もしかして…… 正妃様って…… 不器用?
さっと私の頭の中でそれだけのことが駆け巡った。
「あ、では、その、私が先に質問しても宜しいでしょうか」
「ええ」
よし、そのくらいは大丈夫なんだな。
「私を糾弾しに来たというのでは」
「無い」
「ではセイン王子を色仕掛けで何やらしようとしたことに関してお怒りになっていらっしゃるとか?」
「否」
「つまり私自身にどうこうおっしゃるつもりでは無いと」
「ええ」
「……正妃様、もの凄く失礼を申し上げることお許しくださいませ。もしかして、正妃様は、何かもやもやしたものが心の内におありになるのですが、それを上手く今は言葉にお出来にならないし周囲にも言えない、ということですか」
ぱっ、と正妃様の表情が輝いた。
「で、忌憚ない話を、もしかして垂れ流したいのでしょうか」
「ええ」
ええじゃないですよ!
何でその相手が罪人なんですか!