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28 セレーデを娘として実家に連れていく

 ファルカとセレーデを連れて俺は一旦家に戻ることにした。

 彼女達のために馬車を用意し、数日間共に過ごすことになる。

 その間に、実家に早馬を飛ばし、自分の子供が見つかったので小さな家を用意して欲しい、という知らせを送った。

 そして打ち合わせをした。


「今日から必要な時が来るまで、貴女はこの子の乳母という形をとってもらいます」


 うなづく母親と俺に、どういうこと、とセレーデは俺にくってかかった。


「あのね、小父さんは小父さんの家から、子供の一人くらい作ってこい、と常々言われてるんだ。だけど残念ながら、それは一人じゃあできない。だったら昔からの友達の、君のお母さんの娘である君を俺の子供にしたいんだ」

「……? それって、母さんと結婚したいってこと?」

「いや、君の母さんにはついてきて欲しいんだけど、残念ながら、結婚はできないんだ。だから育ててくれた人としてついて来て欲しいんだ」

「……」

「判る?」

「……つまり小父さんにも色々事情があるのね」

「そう」

「母さんは無理に働かなくていい?」

「いいよ。ただ君にはちゃんと勉強なりしてもらうけどね」

「小父さん、偉いひと?」

「偉いかどうか知らないけど、一応貴族の次男坊だよ」

「偉いひとだわ」

「うん、だからその娘として相応しいだけのことは学んでもらうよ」

「そっか……」


 静かに、だけど様々なことを考えている様だった。

 何よりこの子供は母親の体調のことを常に気遣っている。

 俺がファルカと話し合っている時も、外に行かずじっとその様子を見守っていたのだ。


「そうしたら、君のお母さんはできるだけ君と一緒に居られる」


 ちら、と彼女は薬袋を見た。こちらに関しても思うところはあるのだろう。


「わかった――判りました」


 セレーデはしっかりとうなづき、この瞬間から俺の娘ということになった。


 無論実家では大騒ぎだった。


「お前女に興味が無いんじゃなかったんだなあ」


 親父などそうしみじみと言ったくらいである。


「小さな家、と言ってたが、離れを掃除させたぞ。それでいいか?」

「この子と乳母が共に住めれば充分だよ。本当に感謝するよ、親父」

「いや、正直我が家にはなかなか孫が増えないでなあ…… デタームのとこは結構増えているのに、何かうちの連中は、なあ……」

「デターム子爵のところは沢山家族が増えたんで?」

「ああ。長男次男とも嫁さん迎えて、まあぽこぽこと。あそこまでで行くと、逆に色々騒動は起こりそうだが、うちの連中ときたらなあ……」


 兄もだが、弟達にもどうもあまり子供ができないらしい。


「まあ居る子達とは仲良くなって欲しいとは思うけど。ただ、今まで帝都の郊外で質素に暮らしていた程度なんで、そんなに急に騒がないで欲しいな」

「判った判った。おお、この子か。セレーデと言うんだな、ん?」


 ふとその名に親父は思うところがあったらしいが、俺はあえて無視した。

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