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17 幕間2-4 王家の話し合い④

「私に子が無いことが貴女方を入れた最大の原因ですし、更に言うなら、亡くなった第三側妃は、ここに居る皆と違い、陛下が直々にお望みになった方。その上第一王子を出産された。そのことに私が全く嫉妬しなかったと言えば嘘になります。ですがそれを外に出したらどうなりましょう? 私は正妃としての誇りだけは決して失いたくありませんでした」


 辺境伯令嬢の審議が行われるということは、彼女自身も正妃の座から降りなくてはならない可能性が大だということである。

 ならば、できるだけ今まで胸の中にしまっておいた物事も、正直に王家に明かしておいた方が良いのではないか。

 正妃の中にそんな計算があるのは仕方がない。


「当時陛下が配下の者に指示させて、セイン殿の教育に当たらせる者の候補を十数名提出させました。第三側妃が希望したのは、気難しい子に対し気軽に接することができる若い年代の者、そして優秀な者、新しい知識を備えた者、でした。彼女は普段、本当に控えめで質素で、そして私や第一殿、第二殿のところの侍女達からの嫌がらせに対しても、愚痴一つ漏らしませんでした。その上での懇願でした。正直あの時は、その時のために溜めていたのだ、というばかりの迫力で、私もぞっとしたものです」

「確かにあの時の候補の中で、年齢が若く、優秀で新しい知識を持った――となると、限定されるな」

「デターム子爵の他、同じ条件にあったアカデミーからの帰還者は、今日発言を許されたスルゲン侯爵家のティミド殿、そしてもう一人、セルーメ子爵家のカイシャルです。ただティミド殿の場合、専門が窮理学ということで、除外させていただきました。それはそれで非常に素晴らしい学問ですが、王子としての教養にしては方向が違いすぎ、専門的すぎました。それ故に現在、ティミド殿は国立天文台勤務となって素晴らしい業績を上げていると思いましたが…… また、カイシャル殿に関しては、専門は良いのですが、当人の性格が風来坊的で、何年も一箇所に留まって教えることができないだろう、ということで除外。結果として、デターム子爵になったという訳です。しかし陛下、私も当時そのことは申し上げましたはず」

「そうだな。条件を挙げていったことは思い出した。しかしそれが、第三側妃の希望だったとは」

「でも、お母様はそういうところがおありだったわ」


 クイデはぼそ、とつぶやいた。


「どういう意味だね、クイデ」


 王は彼女に問いかけた。


「お父様はきっと戯れ言だと仰るでしょうし、お兄様もご自分の方にはそんなことないから絶対信じなかっただろうから、私今まで言わなかったけど、お母様はそういう方だったわ」


 吐き捨てる様なその口調に、皆怪訝そうな顔になった。

 特に第四、第五側妃はどういうことだ、とばかりに戸惑った。


「一体どうしたのですクイデ様。あの方が、何か」

「皆に優しい良い方でしたけど、貴女様は、いったい」

「だってお母様は、人を自分の良い様に動かすことにおいては天才でしたもん」


 言ってみなさい、と王は娘にうながす。


「あの方は、私が馬鹿だと思っているから、時々ぽろっと本音が出たのよ」


 さらりとクイデはそう言う。


「私は確かに頭は良くないけど、お母様の口ぶりとか、お父様やお兄様や、そして侍女召使い達の見ていないところのことだけはよく知っていたわ。だからお母様の前では絶対に気を抜かない様にしてたの」

「気を抜かない、ってお前、母上に」

「お兄様、何でマリウラを好きになったの?」


 唐突に話が飛び、セインは考えが一瞬止まる。


「誰が紹介してきたの?」

「紹介、というか…… お茶会に招かれた令嬢の中で、」


 そこでセインの記憶がよみがえった。


「確か…… あれは母上が主催したお茶会だった」

「そうよね。私はお母様が主催するのは珍しい、と思って不安になったから一応出てみたんだけど」

「お前その言い方……」

「しょうが無いでしょ、お母様は私のことは放っておいて可愛くないのは知っていたし、あの外面の恐ろしいまでの良さも知っていたから、先生がついた辺りからずっと警戒していたんだから」

「先生が? 何でだ」

「お兄様の時の様な決め方全くしなかった様で。だって私の先生は、さっき言ってたカイシャル様よ」

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