審議が日をまたぐものになる。
予告されてはいたが、貴族達にはそれはなかなかな精神的、肉体的苦痛を伴うものだった。
というのも、王宮――というよりは、建物自体から出ることができない。
そして自分の連れてきた侍女・召使い等とも会うこともできない。
それぞれ指定された部屋に入れられ、簡易的な寝台を用意され、パーティで食べられなかった御馳走を分けられた食事が運ばれた。
それは王家の人間にしても同様であった。彼等は一同に集められ、中広間一室に全員が押し込まれた。
五人の妃と八人の王子王女という顔ぶれが、この様な狭い空間に一時に集められ泊まり込まなくてはならない、という事実に、皆なかなか馴染めないでいた。
「まずは陛下、第三側妃様のご冥福をお祈りいたします」
そう第二側妃が口にした。
「あの方は本当にお優しい方でした」
「後々から入った私達にも……」
第四、五側妃は口々に第三側妃の死を悼む。
うむ、と王自身もそれを真摯に受け取る。
政略で結婚が決められていた正妃、子供がなかなかできないからと娶った第一、二側妃の次にようやく結ばれることができた、昔馴染みの令嬢だったからである。
故に、今回のことも、もしセインが選んだ女が側妃としてならば、問題はなかった、と彼は思う。
だが、何ということか、この息子は根本的なところを知らなかった。
教え込まれていなかった。
無論そんな人材を送り込んでしまったのは、自分の采配ミスであろう。
だが。
「そもそも、デタームを推挙したのは、其方ではなかったか? 正妃よ」
正妃は無言で夫を見つめる。
「其方は何故あの男を推挙したのだ?」
すると正妃はくす、と鼻で笑った。
「……陛下、ここでも裁判でございますか?」
「裁判ではない。意見の出し合わせだ。明日、また本当の裁判になる前に、お前等の知っていることを聞いておきたいのだ。そして王子王女達よ、この兄の様に、辺境伯令嬢が送り込まれてきたことに関して、危機感を覚えていなかったのは何故か?」
「セインがバルバラ嬢に冷たいことに対し、危機感はありました」
そう言い出したのは、長女であり、第一側妃の娘であるエルデである。彼女はセインより三つ上、王女としては既に嫁き遅れ、とも言われている。
「ただ、政略結婚というものはそういうものだ、という思い込みがありました」
「私も同様です」
そう答えたのは、エルデと同母を持つ第四王女アマニである。
「辺境伯が帝国直属であることは、無論お姉様同様知っておりました。それはトバーシュも同じでございます」
第五王女トバーシュは黙ってうなづいた。
歳が近いこの二人は母は違えど仲が良い。トバーシュの母が第四側妃ということもあっただろう。