試合のスタート合図が響く前に、ハクトは改めて試合会場を見渡していた。
1回戦の時は相手を近距離で蹴り続けるだけで終わったから特に気にしていなかったが、フィールドの広さや空間を改めて把握したかったからだ。
試合会場は大きなアリーナで、ど真ん中の天井が無い屋外で試合を行う。
模擬戦でやった屋内の部屋より遥かに広い。スケートリンクでもそのまま開けそうな広さだ。
この広さで贅沢に1試合ずつ進めており、壁際まで全域移動可能という一対一の試合にしてはバカみたいな話だ。
これだけ広いと、HPの差を付けられた瞬間ガン逃げ戦法をされてしまったら、それだけで試合が終わってしまう事もあり得るだろう。
「(カグヤの【ファイアボール】みたいな、遠距離攻撃だけでずっと責められ続けたら詰むな)」
そうならない様、相手との距離の詰め方は考えなければならない。
どうせハクト自身には遠距離攻撃を持つ手段は無い。
蹴りを放つしか能が無いのなら、開き直って距離を縮めた方が話が早い。
そう考えを纏め終わった後、スタートの合図が鳴り響いた。
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バトル・スタート!
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バトルルール:殲滅戦
残りタイム:15分00秒
プレイヤー1:ハクト
残HP:500
rank:1
スロット1:ーーーー
スロット2:バランサー
VS
プレイヤー2:アリス
残HP:500
rank:1
スロット1:ーーーー
スロット2:ーーーー
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『ハクト選手vsアリス選手のバトルスタート! おおっと、先に動き始めたのはハクト選手! ダッシュでアリス選手に向かっていくー!』
実況の言うとおり、ハクトのもうダッシュで互いの選手の距離が急速に縮まっていく。
対してアリスはまだ動かない。走ってくるハクトの方をじっと黙って見ている。
「カウンター狙い? 何にしても、どうせ蹴りにいくしかない!」
アリスが何をするのか不明だが、どの道ハクトのやる事は変わらない。
もう少しで蹴りを入れられる距離に近づこうとすると……
ゾクっ! と、嫌な予感がハクトを襲った。
「ーーーースロット1。【ロング・ソード】起動 」
アリス選手が何かを呟く。
それを聞いたハクトは急ブレーキを掛け、直感に従って上半身を大きく後ろに逸らす。
ヒュッっと風を切り裂く様な音が一瞬響く。
ハクトの首があった位置に、次の瞬間鋭い刃が通り過ぎて行った!
「っ! うお!?」
「へえ。これを躱せるんだね」
そう呟くアリスの姿は、先に蹴りを放った体勢だった。
ただし、その蹴りに使った右足の先には、"長い剣"が伸びている。
それを見てハクトは警戒して数歩後ろに下がる。
「【ロング・ソード】! ハクト君、それは"フォームギア"よ! "靴の形そのものを形態変化させる"ギア種類よーっ!」
「フォーム! 前言ってた5つのギア種類のあれか!」
遠くからカグヤの声が響いてハクトにアドバイスが来る。
ハクトの使うマジック、バフとは違う初めて見る種類のギア!
「そうだよ。でも、そんなよそ見してて良いのかなッ!」
「うわっと!?」
カグヤの声に耳を傾けている内に、いつの間にかアリスが距離を詰めて来ていた。
右足の長剣で斬りつける様な蹴りを何度も放ってくる!
「くそ! 良くそんな1m近い長い剣を付けて蹴るだけでなく、走ってこれるな!? スッゲー邪魔だろそれ!」
「まあね。でも足首を意識してすり足に近い走り方とか工夫すれば、そんなに速度は変わらないよ!」
「たく、とんでもねえ話だなおい! でもギリギリ躱せる!」
アリスの答えに悪態を吐きながらも、なんとか躱していくハクト。
移動速度は驚いたが、攻撃速度とそのリズムは違う。
右足だけで攻撃してくる関係上、一度切りつけたら右足を下ろして、左足を一歩前に出してから再度攻撃をするサイクルとなっている。
単発毎の攻撃なら、1回1回集中すれば避けるのはそう難しくなかった。
長剣の分、攻撃のリーチが違いすぎてハクトの蹴りを中々出せなかったが、リズムを確認し続け……
「1、2。1、2。……そこ!」
「くっ!?」
逆に隙をついて懐に入り、ハクトの蹴りがアリスの横腹にぶつかる!
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プレイヤー2:アリス
残HP:500 → 489
==============
「よし、行ける!」
ハクトは一撃だけ入れてすぐにバックステップして、アリスのカウンターを避ける。
ヒットアンドアウェイの戦法なら、十分通用する。
アリスの右足だけに注目して、攻撃を避け続けてタイミングを見てカウンターすれば、何とかなると手応えを感じていた。
「それは、どうかな!」
「おっと!」
再度アリスの右足の攻撃が来るが、それをまた躱す。
右足だけに注目して、左足が踏み込まれた後、再度次に来る右足に備え……
……右足でもう一歩踏み込まれた?
「しまっ!?」
「スロット2! 【ショート・ソード】起動 !」
気づいた時には遅かった。
アリスは"左足"でギアを発動し、そのまま斬りつけて来た!
リズムをずらされ、更に予想外の行動を重ねられた為ハクトはそのまま"短剣"の攻撃を喰らってしまう!
「1回だけだと思った?」
「ッ!?」
左足で切り上げられただけじゃない。
そのまま左足を"引き戻す際"も切り捨てられた!
1回の攻撃が、そのまま二連撃になっている!
==============
プレイヤー1:ハクト
残HP:500 → 459 → 420
==============
「やばい!?」
明らかに大ダメージを受けた。
一旦体制を立て直すために離れたほうがいい、そうハクトは即判断した。
「逃さないよ!」
両足剣を伸ばしながらも、その状態で走って来るアリス。
このままトドメまで連続攻撃を行おうとしていたが……
「跳ね上げろ! 【インパクト】!!」
「っ!?」
アリスの追撃が来る前に、ハクトは即足元で【インパクト】を発動し、後ろにバックステップの要領で大きく飛んだ。
そのまま空中で宙返りしながら飛んでいき、遠くの場所で綺麗に着地していた。
予想外の動きにアリスはその場で止まってしまい、追撃が止まってしまっていた。
☆★☆
『す、凄い動きが出たー!! ハクト選手、アリス選手から手痛い反撃を喰らうも、とんでもない大ジャンプでその場を離脱ー! まさにウサギの様です!』
『【インパクト】を自身に撃っての緊急離脱か。あれ思いついても、上手く着地や方向がコントロールし辛くて難しいのに、良くあんなバク転宙返りしながら離脱出来たな。サーカスか何かか?』
ハクトの動きに会場がワーっ!! と盛り上がる。
その歓声で試合が一時停止の雰囲気が流れ、なんとか呼吸を入れ直す時間を稼げそうだった。
「はあっ……くそう」
「ハクト君、大丈夫!?」
「カグヤ? そっか、丁度近くに飛んで来ちゃってたんだな」
ハクトが逃げた方向には、観客席のカグヤがいる位置だった。
そのまま壁の上の方からカグヤに心配の声を掛けられる。
「完全に失敗した。片足だけに注目して、もう片方のギアがあることが頭からすっぽ抜けてた……」
「とりあえず状況を確認しましょう。今の攻防で、お互いに全部のギアの情報が公開されたわ」
==============
バトルルール:殲滅戦
残りタイム:14分10秒
プレイヤー1:ハクト
残HP:420
rank:1
スロット1:インパクト
スロット2:バランサー
VS
プレイヤー2:アリス
残HP:489
rank:1
スロット1:ロング・ソード
スロット2:ショート・ソード
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「くそう、あの1回の攻撃、というか2回斬り付けられただけで80も削られてるのか……」
「完全に不意打ちが決められたのが痛いわね。でも良くも悪くも、これだけダメージの差が出来たからアリス君も無理に責めてこようとしていないわ。今の内に作戦を立て直しましょう」
「ああ、成る程。こんだけ広いフィールドでダメージの差が出来たならタイムアップを狙える。なら勝ってる方は動く必要が無いから、負けてるほうが息を整える時間が出来ると。ある意味初心者に適したルール設定になってるんだな」
一息をついたところで、ふと気づく。
「ところでカグヤ。俺さっきから観客席の君とめっちゃ喋ってるけど、一応大会なのにそんなことしちゃって問題ないか?」
「初心者大会だから、そこまで目くじらを立てられるような事は無いはずよ。初心者なんだから、外部のアドバイスは積極的に取り入れていきなさい」
カグヤの言葉に納得し、思う存分に体を落ち着かせるハクト。
念の為遠くのアリスから目を離さないでおくと、アリスが何かをしているようだった。
「攻めてこないんだったら、このまま起動し続ける意味は無いかな。スロット1、【ロング・ソード】停止。スロット2、【ショート・ソード】停止」
この距離だと、流石に呟くようなアリスの声は聞こえなかった。
しかし、アリスが何かを呟くのが終わったと思ったら、その直後にアリスの両足それぞれから剣が靴に戻るように消えていった。
「っ!? 剣が両方とも消えた! カグヤが前言ってた、エネルギー切れってやつ? だとしたら、今が攻めるチャンスか!?」
「いえ、あれはただ自分から解除しただけね。【ロング・ソード】、【ショート・ソード】。この二つはどっちも"自身持続"の効果分類ギアよ」
「自身持続?」
聞いた覚えがあった。
と言うか、模擬戦前にカグヤが話してた長文の中にそんなのがあったような……
ハクトがそう思い返しながらカグヤとそう話していると、実況の声が新しく響いてくる。
ハクト達が話している場所と、実況と解説の席はそう離れていなかったことに今気づいた。
『観客席からフォームギアについての声が聞こえて来ました! 試合の流れも停止している事ですし、今の内に風雅選手、フォームギアとは一体どう言うものか説明していただけないでしょうか?』
『ああ。さっき聞こえた通り、基本的には"靴の形そのものを形態変化させる"で合っているな。ついでに補足しておくと、その性質上靴の素材に大きく依存しやすくてな。アリス選手みたいな鉄製のブーツを履いていると、基本的に硬くなって攻撃力が出やすいといった特徴がある』
「ああ、なるほど。靴の素材がモロに影響するのか。そういえばマジック、バフとかって靴の種類関係無さそうだもんね。というか靴ってそんなに種類あるの?」
「一応木製のブーツだったり、鋼、ゴム製とかあったりするわよ。靴の軽さとか頑丈さで各々好きな材質のブーツを履いている場合があるの。凄いものだとダイヤモンド製とかあったりするわね。金持ちとかがやることがあるけど」
「ダイヤモンド製って、すごいな……」
『更に、"自身持続"って言葉もあったから説明するか。これは文字通り、自分自身だけに影響する持続の効果。つまり弾数制ではなく、"時間制"でエネルギーが管理されているギアなんだよ』
『ほう、時間制?』
『ああ。分かりやすい差別の例だと、【ファイアボール】は最大E10で、E1毎に一発攻撃が撃てる。今回の【ロング・ソード】は最大E3で、E1毎に30秒。つまり最大90秒間の間、長剣の形を維持できるギアなんだ』
『ほう。しかしアリス選手は90秒経つ前に、形態変化が溶けてしまったようですが?』
『持続型のギアの特徴として、自分から途中で”解除出来る”というメリットがあってな。使い続ける必要が無いと判断したら、そうやって解除してエネルギーを節約することが出来る。つまりアリス選手は、大体30秒ぐらいはまた形態変化できるぐらいのエネルギーを取っておいている状態だな』
まあ持続のON,OFFも正確なイメージが必要になるから、基本的には素人はどんなに急いでも数秒は掛かるけどな。
そう解説の言葉が付け足されるが、要するにアリスはまだ迎撃出来る準備があると、そういう意味だとハクトは理解した。
「なるほど、フォームギアと自身持続ってそういう事か。しっかし、これちゃんと相手の情報調べておく事がいかに大事か身にしみたな。せめてアリスの一回戦の戦いを見ておくべきだった……控室に戻るのはそれからでも遅くなかったなあ」
最低でも、同じ近接特化型の選手だという事は事前に把握しておくべきだった。
そのせいで無警戒に近づきすぎて、返り討ちを喰らってしまったから。
あとは、ギアの知識も必要だった。
少なくとも使用する可能性のあるギアの情報は、事前に調べて頭に叩き込んでおく必要がある。
そうじゃ無いと、電光掲示板の名前だけじゃギアの効果は分からないし。
そうハクトが後悔していると……
「え? 少なくても今の状態でもアリス君の情報、ある程度ハクト君見れるわよ?」
「はい?」
予想外の答えがカグヤから帰ってきた。
「え、情報が見れるって、対戦中に? あ、カグヤがこの場で調べてくれるって意味?」
「ううん。ハクト君自身がこの場で。HPグローブで表示出来るのは装備者だけの情報じゃなくて、対戦中なら相手の情報もそれで確認出来るわよ」
「マジか!? それを早く言って欲しかった!」
カグヤの言葉に驚き、急いで自身のHPグローブを操作するハクト。
ソリッドビジョンの情報から、タッチパネルで画面情報を切り替えていく。
「対戦相手情報……これか!?」
目当ての情報にたどり着き、ハクトが確認すると……
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プレイヤー2:アリス
生年月日:7月10日(ということにしている)
出身地(または出身校):中学校卒業程度認定試験
趣味:過去の思い出を振り返ること
特技:剣を振ること
資格:今はもう無い
マイブーム:アンパンの食べ比べ
メッセージ:かつていた彼女に恥ない生き方をしたい
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「ーーーーただの自己紹介プロフィールじゃねえええかああぁぁぁっ!!!」
「そうだけど!?」
「そうだけど!??」
全力で突っ込まざるを得なかった。
ソリッドビジョンじゃなかったら、その場で地面に叩きつけるところだった。
ハクトは切れた。
「いや確かに相手の情報だけど、もっとこうさあ! ゲームとかでよくある、パワーとかスピードとか、よく使う戦術とか、そういうの数値化したデータとかじゃ無いの!?」
「え? そんなの学校の"体力測定の記録"でも見せて貰えばとしか……」
「違うそうじゃ無い、確かにそうかもしれないけどそうじゃ無い!」
あと大きな声で言えないけど、この自己紹介プロフィール所々黒い。ていうか重い!
個人情報だから言いふらさないが、よく見たらとんでも無い情報が書かれまくっている!
しかもカグヤの言ってる学校の"体力測定の記録"すら、アリスには無いかもしれないのが闇が深い!
つーかこんな情報自己紹介プロフィールに書くんじゃねええええええ!!
などと、ハクトの脳内では声に出せないツッコミでいっぱいだった。
「ハクト君も、後で自己紹介プロフィール書いておいてね。あったほうが色々と便利だから」
「いや今必要ないよねそれ? 今それ以外の情報が重要だよね!?」
「でもそれ以外の情報は、電光掲示板に書いてあるやつと殆ど一緒だし。あとはまあ、"試合中に相手の使ったギアの詳細データ"と"そのエネルギーの残量"くらいしか……」
「それぇーっ!!? それが欲しかったの! そっちの方が欲しい情報なの!!」
「なんか大変そうだなあ、あっち……」
アリスから何か同情するような視線を感じながらも、それを無視した。
というか大変そうな原因の一部はあっちも関係している。
ハクトはとにかく改めて、欲しい情報を急いで探した。
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プレイヤー2:アリス
<スロット1>
ギア名:ロング・ソード
GP:1 最大E:3 最大 CT:3
残りE:1
ギア種類:フォーム
効果分類:自身持続
系統分類:剣
効果:ブーツから1m程の剣が伸びる
<スロット2>
ギア名:ショート・ソード
GP:1 最大E:3 最大 CT:3
残りE:2
ギア種類:フォーム
効果分類:自身持続
系統分類:剣
効果:ブーツから30cm程の剣が伸びる
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「あった、これか! 相手の装備しているギアの効果とE残量! というか効果めっちゃシンプルじゃん! しかもあれ? 【インパクト】と違って、マス計算とかじゃない?」
「あー。そのギア両方とも割と近年作られたギアらしいから、効果説明文欄は現代基準で記載されているパターンね。【インパクト】とかは歴史が古いらしいから」
「そういうもんなの? まあそれはいいや、とりあえず相手のギアの効果と状態はよく分かった。そしてアリス、あいつもどっちかっていうとギアをそのまま使うより、自前の技術で工夫してくるタイプだね。1回で実質2回斬って来る所とか、展開したまま走って来るとか」
「よくこんな装備で初心者大会とは言え優勝経験複数回あるわね。他の大会だと別のギアを装備していたのかしら? ……それとも、まだ出してない工夫があるのかしらね」
あり得る……
ハクトはカグヤの考えを否定出来なかった。
たった数十秒の攻防だけで、アリスの技術力の高さが伺えた。
自分の【インパクト】の使い方みたいに、仕様外の使い方を思いついていてもおかしく無いと感じていた。
「とにかく、気を付ける事は分かった。もう一回行って来る!」
「ハクト君、大丈夫なの?」
「ああ! 特に【ロング・ソード】のE残量が1なのを把握出来たのが大きい。30秒きっかり残ってるのかまでは分からないけど、一番射程の長い攻撃がもうすぐ使えなくなりそうと分かっただけでも、十分攻めやすい」
そう言って、ハクトは改めてアリスに向き合う。
そして呼吸を整え、また一気に距離を縮めていく!
☆★☆
『ハクト選手、再度アリス選手に向かって行ったー! 勝算が出来たのでしょうか!?』
「来たね! また返り討ちにしてあげるよ!」
「そっちこそ! そのまま時間切れまで逃げれば勝ちなんじゃ無いの?」
「あとまだ12分近く残ってるんだ、走り続けるより迎撃したほうが効率がいい!」
そう言ってアリスは、蹴りを出す構えの準備をする。
ハクトは念の為、構えとは逆の足が飛んでくる可能性も考慮しながら接近していく。
アリスのそれぞれの足の刃渡りの長さを把握した今、攻撃の射程を冷静に注意しながら走っていく。
「(一番注意しなくちゃいけないのは、やっぱり"右足"の【ロング・ソード】!! そっちに注意して使い切らせれば、"左足"の【ショート・ソード】だけなら、射程的に十分インファイト出来る!)」
「スロット1! 【ロング・ソード】起動! 」
「早速来た!」
ハクトの想定内ではあるが、いきなり【ロング・ソード】の起動宣言をされた。
これなら"右足"を注視し、攻撃のタイミングを見極めれば……
そう思っていると、アリスの"左足"が飛んでくる!
やはり右足の構えはフェイントだった。
恐らく左足で【ショート・ソード】を追加宣言しながら攻撃が飛んでくる。
もしくはそのまま直接蹴って体勢を崩して来るか?
いずれにせよ、その左足は当たらなーーーー
==============
プレイヤー1:ハクト
残HP:420 → 382 → 341
==============
★☆★
「……カグヤ。ちょっといい?」
「どうしたのハクトくん?」
「さっきアリスさ。"左足"で【ロング・ソード】出しながら攻撃してきたんだけど」
「うん。それがどうしたの?」
「……一応確認なんだけどさ。ギアって、"装備した足側からしか発動出来ないんじゃ無いの?"」
「”ううん。そんな事ないけど”」
「……………………」
「……………………」
「……………………つまり、【インパクト】を装備しているのは右足でも、左足からでも発動できるって事?」
「そうよ」
「なんでそれ先に行ってくれなかったのさああああぁぁぁぁっ!!?」
「えええぇぇぇ!? ハクト君両足で大ジャンプしてたんじゃないの!?」
「"両足"じゃないよ! "右足"だけだよいっつも【インパクト】出してたのは! それで大ジャンプしてたんだよ! 君確かよく蹴ったりする方の足に取り付けましょうって言ってなかったけ!?」
「"左右に大きな違いとかは無いのだけど"とも言ってなかったかしら!?」
「そうだねそう言えば言ってたね畜生ごめんねっ?」
「……盛り上がってるな〜」
『ハクト選手! 2回目のアリス選手の返り討ちに心折れたのか、先程の観客席の知り合いに泣きついております! 側から見ると情けないです!』
『あー。でも言ってる内容は同感しちゃうな。俺も始めたばかりの頃、右足につけたもので左足から発動出来るの? って疑問に思ったし。メモリーカードが装備されてるなら、共有扱いで使えるらしい事を後から知ったけど』
2回目の返り討ちが速攻で決まってしまい、再度【インパクト】で逃走したハクトは。
現在真っ先にカグヤに詰め寄って思い違いしていた事を確認していた。
「カグヤ! まだ言ってない重要な情報とか無いよね!? 多分絶対まだ何かあるよね知っておいた方がいい操作方法とかテクとか!」
「えっ? ごめん。あまりにも最終的に教えたい情報が私の中でありすぎて、どれが先に教えておいて、どれが後回しにした方がいいとか、そういうのが判断し切れない。確実に知っておいた方がいい情報は教えたつもりだったから……」
「そっかごめんね! わざとじゃ無いならいいや仕方ない! うん切り替えてく!」
これはもうハクトの責任とかカグヤの責任とか関係なく、マテリアルブーツは難しい。
そういう事にして話は纏めて、気持ちを切り替えて行った方がいい。
ハクトはそう判断した。
「残り時間10分ちょい! これはもうどんどん突っ込んでいくしかねえー! もう初見のテク出されても、その場その場で対応していくしかない! カグヤ、また分かんないとこ出て来たら聞きに来るからよろしく!」
「それはいいけど、ハクト君勝算はちゃんとあるの? ここ天井無いし、高ダメージ出せないけどやけっぱちになって無い!?」
「急所狙いでなんとかする! 首の骨折るような形の攻撃でどうにかなるでしょ!」
「言葉にすると物騒!!」
「うっさい! このまま負けてたまるか!!」
「負けず嫌いな気満々!! そういうの嫌いじゃ無いわ!」
『ハクト選手! とりあえず立ち直って試合続行するようです! これは盛り上がってきました!』
『ああ、いいな。まだ全然諦める範囲じゃ無い。互いにどんどんぶつかって行って欲しい所だな』
残り時間10分弱。
vsアリス戦は、まだまだこれからだーーーー
★因幡白兎(イナバハクト)
主人公。
白兎パーカーを着た、空を飛びたい夢を持った少年。
ツッコミが激しい。いきなり大ピーンチ。
★卯月輝夜(ウヅキカグヤ)
ヒロイン。
空から降ってきた系女子。
説明の足りない系女子だった。
★有栖流斗(アリスリュウト)
ハクトと二回戦で戦う少年。
紳士的な態度で話しかけてきた。
戦いながら、ハクト達めっちゃ楽しそうだなー、と思っている。
★風雅(ふうが)
マテリアルブーツプロ選手。
解説者。
選手が使ったテクニックなどを、初心者に分かりやすいように説明してくれる。
★カラー
実況として風雅と共に大会のアナウンスをする女性。
性格は破天荒。面白ければ何しても良しなタイプで、風雅によくツッコミを入れられる。