「ああぁー、つっかれたー」
「お疲れ様、ハクト君」
カグヤとの模擬戦が終了した後、ハクト達は部屋の隅で休憩をしていた。
予め買っておいたスポーツドリンクをゴクゴク飲みながら、ハクトは振り返る。
「マテリアルブーツ。たった一つのギアであれだけの動きが出来るなんて、思った以上に凄かったな」
「いやー、でも【インパクト】をあげた私が言うのも何だけど、あれはどっちかって言うとハクト君のアイデアと動きが普通じゃ無かっただけのように思ったんだけど……ハクト君過去に何か他のスポーツやってた?」
「ん? まあ、これでもトランポリンをメインに色々なスポーツ試してたからな。新体操とか陸上とかも一応軽く経験積みだよ」
「ふーん、あの身体能力の高さに納得……納得? なのかしらね?」
多少疑問符を浮かべながら、カグヤは一応納得する。
いろんなスポーツ経験していたからって、模擬戦時のあの身体能力を発揮出来るのかどうかはひとまず置いておいて。
「けど、どう? マテリアルブーツ。気に入ったかしら?」
「ああ、スッゲー楽しかった。模擬戦とはいえ、予想以上に跳べてたね」
……ただまあ、とハクトは言葉を続ける。
「どうしても、【インパクト】のコントロールが数メートル単位でズレるのがキツかった。何とか最後に、真上と真下に動きを限定することでラビットスタンプが上手く決まったけど、斜め方向に跳ぼうとするとまずズレるし」
「今日が初めてのデビューなのに上出来よ。あとは何回かやって慣れていくしか無いわね」
「そうだね。……そうしたら、空中でも【インパクト】の連続発動が出来る様になれるかな。当面は最終目標をそれに設定しようと思ってるんだけど」
「うん。経験を積んでいけば、ハクト君ならきっとすぐ出来るわよ」
よしっ。っとハクトはその場で立ち上がる。
経験が足りないならば、さらに練習を重ねるだけだ。
「それじゃあ、もっと特訓しないと。カグヤ、もう一回模擬戦出来る? そっちが疲れてるなら、暫くは一人で【インパクト】の練習でもしようかと……」
「へ? あ、ごめん。この部屋そろそろ出ないと不味いかも」
「え? もしかして、レンタルの時間が限られてる? 思ったより短かったな……」
カグヤの言葉にハクトはそう予想して、少しガッカリする。
まだまだ練習をしたかったのだが、マテリアルブーツの凄さは先程体験した通りだ。
あの凄さを感じたいと言う人が他にも沢山いると思えば、このような練習部屋を使いたいと言う人も多いことは予想出来るし、レンタルの時間が短いのも納得か。
そうハクトは自分の中で考えて予想を立てたが……
「いや、そうじゃ無くて。ハクト君、"大会"出るからもう部屋から出ないと間に合わないわよ?」
全然予想外の答えがカグヤから返ってきた。
「ちょっと待って、大会?」
「うん」
「何の?」
「マテリアルブーツの“Rank1 ソロトーナメント大会”。所謂初心者様の大会」
「誰が出るって?」
「ハクト君と、私」
「いつ?」
「今日の10:30から。と言うか、30分前には準備しなきゃいけないから、あと15分くらいしか余裕無い」
「めっちゃ急な話なんだけど!?」
なんて事のないように話すカグヤに対して、大層ハクトは驚いた。
そういえば、よくよく考えたらハクトがこの施設に入ったばかりの時、“rank1 ソロトーナメント大会”のポスターを確かに見た覚えがあった。
日時までは見切れていなかったが、まさか今日このあと直ぐだったとは。
と言うかこの女。まさかガチの初心者をいきなり大会に参加させようと考えてる?
「カグヤちょっと待って。初心者様の大会って言っても、マジで大会? マテリアルブーツ経験1時間未満は初心者以前では?」
「アッハッハ。ハクト君、あんな動きしておいて初心者以前も何も」
「ええー……でも、出るにしてもまだ練習続けてからにしたいし、今日はどちらかと言うとエントリーせずに見学の方が──」
「えー。でもハクト君、も・う・大・会・エ・ン・ト・リ・ー・し・ち・ゃ・っ・て・る・じ・ゃ・ん・」
「初・耳・な・ん・だ・け・ど・? ・」
さっきからとんでもない情報を立て続けに発せられて、ハクトは混乱していた。
と言うかマジでエントリーした覚えない。
「まって、確か施設内に入った時、受付で書いたのはただの名前と住所で、他の紙は──っ!?」
そこまで言って、思い出した。
ハクトが書いた紙は、確かに施設利用申請書だけだった。
しかし、別の小さい紙があって、そっちは────
「うん。ハクト君に書いてもらおうと思ってた小さい紙。あれ大会エントリー用紙。結局私が代理で書いてあげたけど」
「やっぱあれかー!? え、じゃあ何? あの時点でカグヤは俺に大会参加させようとしてたって事?」
「うん!」
「わあ、良い返事。って、何度も通ると思うなよ」
訂正。この女、ガチ初心者どころか、未経験者をマジで大会に突っ込ませようとしていた。
「あ! 今思えばプレイヤーネーム気にしてたのは、大会参加に必要だったからか!? 施設利用申請書の方は本名が必要だったけど、プレイヤーネームはなくてもいい要素だよね!?」
「うん。だからハクト君がブーツを初起動した時、プレイヤーネームが申請と変わっちゃってたら色々めんどくさかったから事前に決めておいて欲しかったのよね」
「俺今、『アイドルのオーディションに友達が勝手に応募しちゃってー』をされた人の気持ちが良くわかった」
「ん? アイドルじゃないよ、ブーツの大会よ?」
「突っ込みどころがそこじゃない……!」
違和感の正体はそれだったか……!
ハクトはめっちゃ後悔した。
あの時ちゃんとカグヤまかせにせずに、小さな紙のほうもよく見ておくべきだった、と……
というか、この女の”説明する前に先に行動する癖"が予想以上に酷かった。
「ちなみにこの大会、棄権とかした場合は……」
「んー。特にデメリットがあるわけじゃないけど、大会スタッフにやる気無いって目を付けられて、次回以降の警戒リストに入れられる恐れがあるかも」
「地味に嫌なとこ突いてくるね、ねえ」
ただ、初心者が一回くらい棄権したからってそこまで警戒リストに載るか? とハクトは思ったが、カグヤ曰く。
参加エントリーが無料だからって、過去に架空のプレイヤー名で大量登録した嫌がらせをしたやつがいたらしく、そのせいで余計に目を付けられやすくなっているとのこと。
おのれ過去のモラルめ。
「とか言ってる間に、どんどん準備時間が無くなっちゃう! エントリーは終わっててもやる事あるから、早くいこ!」
「ああもう! 分かったよ!」
もうこの場でどうこう言うのは諦めて、ハクトはカグヤの言うとおりに部屋を出ることにした。
行き先は、大会参加者が集まる控室に近い場所らしく、カグヤの後を追っていった────
★☆★
「よっし、残り5分! ギリギリ間に合ったわね!」
「間に合ったはいいけど、何この部屋? 控室にしては殺風景というか……何する部屋?」
カグヤに連れられて来た部屋は、多少謎の部屋だった。
所々壁際に光る床のところがあり、ブーツのエネルギーをチャージした所に似ているとハクトは感じていた。
「ここが、最後にプレイヤーのエントリーの最終確認部屋といってもいいわね。ブーツとグローブは付けたままよね? そのまま光る床に入って」
「ん? こう?」
カグヤに言われるまま、ハクトは光る床に立つ。
すると、ハクトの全身をスキャンするように緑の光が上からゆっくり降りてくる。
「おおー……」
==============
rank1 ソロトーナメント大会
バトルルール:殲滅戦
試合時間:15分
条件:
・使用スロット2つまで
・使用ギア2種類まで
・HP最大値半減
・残り5分でCT時間1/3に短縮
エントリープレイヤー:ハクト
rank:1
登録ギア1:インパクト
登録ギア2:バランサー
エントリー完了!
==============
「うん。その緑の光でスキャンされて、生態情報と照らし合わせて登録が完了になるの」
「なるほど、これで直前のエントリーは完全終了したということだね?」
「そうだけど、ハクト君はギア1個しか持ってないから、もう一つギアを登録出来る枠が空いているはずよ。だからこの【ファイアボール】を1個、ハクト君に上げる。このために模擬戦で私が使って、攻撃性能を実際に受けてもらって体感してもらおうと思ったんだから。だからこれを追加登録……」
……ん?
カグヤは疑問に思い、表示されたハクトの画面を見る。
────登録ギア2に謎のギアが登録されている!?
「え。ちょ、枠が無い!? 何で、ハクト君【インパクト】しか持ってないはずなのに! なんか別のギアも持ってることになってる!?」
「別のギア……あっ!?」
ハクトは気づいたように自分のポケットを弄る。
すると、そこから別のギアが出て来た。
「父さんから貰った【バランサー】!! これが勝手に登録されていたのか!?」
「ハクト君本当に別のギア持ってたの!? ちょっと待って、今回の大会のレギュレーションだと登録したギア以外の使用は禁止になっちゃう! これじゃあハクト君に【ファイアボール】上げても使えない!」
「マジ!?」
入ってもらう前にちゃんと確認するべきだったわー! と、今後はカグヤが後悔の声を上げる。
一応ちゃんと、攻撃面の事は考えてくれてたんだなー、とハクトは頭の隅で感じていた。
ある意味今日、ハクトとカグヤは互いに失敗している。
「機動力の【インパクト】と攻撃用の【ファイアボール】! この二つをあげれば初心者大会でも十分に戦えると思って準備してたのに! 【バランサー】って何!? 私そのギア知らない! 効果見せて!」
「あ、ああ。確かブーツのスロットに装備して、HPグローブをタッチだったよね」
「あと、付けるスロットは左足ね! ランク1だからもう右足には装備出来ないから!」
そう確認しながら、ハクトは【バランサー】を自信の左足にセットする。
そうして情報が見えるように準備を進めていく。
「でも見た所、【バランサー】ってギア、かなりのレアのギアね。と言うか、最高ランクといってもいいくらいかも」
「まだ情報見てないのに、そんなのわかるの? 確かに父さんもそんな感じのこと言ってたけど」
「ええ。ギアのふちとか、ギア自体の素材の色とかでだいたい分かるわ。大体レア度を5段回表示とすると、一番上ね、【バランサー】。正確には、ギアデータの保存量が素材によって変わるから、それだけ強力なギアのデータが入れられると言うこと」
「マジか。そんな凄いものを渡されてたんだ、俺」
「つまり、初心者といえど強力なギアが使えると言うこと!! 当初の予定とは変わっちゃったけど、"親からもらったチートギアで無双し放題"がハクト君出来ちゃうかも!」
「おお! って、とか言ってる間に、情報表示できた!」
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スロット2にギアが装着されました
<スロット2>
ギア名:バランサー
GP:- 最大E:- 最大 CT:-
ギア種類:バフ
効果分類:永続
系統分類:無
効果:これは、星の調和を掌る者に与えられしもの。星の統一者の使命の証
==========================
「……………………」
「……………………」
「……………………何コレ?」
「……………………フレーバーテキスト、かな?」
…………。
ハクトとカグヤは互いに暫く無言になった。
そして爆発した。
「いや何さこれ!? 効果説明欄がフレーバーテキスト!? そんなのあんの!?」
「知らない! 私も初めて見たし! こんな一切説明文してないの見たこと無いし!」
「え、つまりこれ。某カードゲームでいうバニラカードならぬバニラギア!? 事実上効果無し!?」
「いや、でも一応、ギア種類バフで、永続分類だから、何かしらの効果はあるはず。……と思いたいわね」
多少落ち着いたのか、カグヤが冷静になって【バランサー】の表示を改めて見返していく。
「とりあえず、分かる情報だけ整理していくしか無いわね。ハクト君、【インパクト】のギア種類と効果分類は覚えてる?」
「ああ。マジック・単体攻撃だったよね、確か」
「そう。そして、この【バランサー】のギア種類はバフ。マジックが魔法のような事象を放つ者だとしたら、バフは文字通り"身体強化"などの影響があるギアね」
そして、効果分類について。とカグヤは続ける。
「効果分類が永続。これも文字通り、付けている間ずっと効果が続くことになるギアよ。GPも、最大Eも、最大 CTも存在しない。【インパクト】みたいに、ギアの発動宣言をしなくてもいいギアね」
「ねえ、そういえばGP、最大E、最大CTの3種類についての説明もまだ聞いていなかった気が……」
「え? 言ってなかったけ? そうね。GPはあまり気にしなくていいけど、数字が大きいと隙が大きくなりやすい、とか思っておけばいいわ。最大Eは、まあエネルギーの量、要は弾数とかで、最大CTはチャージタイム、つまりエネルギーを使い切った後どれくらいで再度使えるようになるかの時間ね」
「え。弾数あったの【インパクト】」
「うん。あれ確か最大E:10になってたでしょ? 【ファイアボール】も同じ数値なんだけど、10発は打てるって意味」
「……待って。確かカグヤ、さっきの模擬戦で【ファイアボール】を12発は使ってたはず。計算が合わないんだけど」
「よく数えてたわね。まああれは弾切れになった後、さりげなくトークを挟んだり、そのまま休憩入っちゃったから弾数がないように誤魔化してただけなんだけど」
「カグヤ。何でそれを模擬戦で説明しないの?」
「最初に説明したら特訓の難易度が下がっちゃうと思って」
「いや難易度の前に弾数の説明大事ィ!! それなら模擬戦の時戦術変わってたよ俺!」
やっぱりカグヤ、説明の順番が微妙におかしい!
あんな覚えさせる気の無い長文より、まず説明しとかなきゃいけない部分を後回しにしてるか忘れてる!
ハクトはそう実感した。
「実際低ランクの時は、エネルギー切れの時のチャージ時間中無防備になるから、必死に逃げ回るか、トーク話術で相手の注意を逸らしたりとか必要なリアルスキルだったりするの。それを体験してもらおうと思って」
「模擬戦じゃなくて、試合中であんなグダグダ話すことあるの?」
「結構良くある。プロの試合でもたまにあるわよ。実際問題、15分間を短距離走ペースで走り続けることなんて出来ないから、何処かで息を整える必要がある。その時使うのがトークスキルよ」
ガンマンの早撃ちとか、剣士同士の睨み合いが発生するのは結構そういう呼吸の事情があって、ある意味リアリティがあったりすると、カグヤはそう続けた。
「それはともかく、今は【バランサー】よ! でも結局これ、どういう効果があるか分からないから実戦で使ってみるしか無いわね」
「またぶっつけ本番か……」
「逆に【インパクト】の事しか考えなくてもいいとも言えるから、ある意味初めての試合だとシンプルに動けていいかもしれない。そう考えましょう」
「よく考えたら、【インパクト】の説明文も微妙に分かりづらかったけどね。何、あの”2マスまで衝撃移動させる。”って。マスって何さマスって」
「大体1マス5メートル前後と思っておけばいいけど、そこら辺の単位が謎なのよね。基準が現代基準になってないっていうか……」
ちなみに、最大Eと最大CTの数値も1で大体30秒位だから。とカグヤは軽く付け足していた。
だからそういう情報をもっと先に言って欲しい、とハクトは思った。
「って、カグヤも早く登録しないといけないんじゃ……」
「おっと、そうだった!! 私も別の床に入ってっと」
そう言って、カグヤは慌てて別の光る床に入ってスキャンを行った。
==============
rank1 ソロトーナメント大会
バトルルール:殲滅戦
試合時間:15分
条件:
・使用スロット2つまで
・使用ギア2種類まで
・HP最大値半減
・残り5分でCT時間1/3に短縮
エントリープレイヤー:カグヤ
rank:1
登録ギア1:ファイアボール
登録ギア2:ヒートライン
エントリー完了!
==============
「よし! 私もこれでオッケー! ハクト君、急いで移動しないと開会式が始まっちゃう!」
「また移動するの! ああもう、仕方ない!」
そう言って、カグヤとハクトは急いでその部屋から離れて出て行った。
★☆★
『さあ、間も無く開催されます! マテリアルブーツ“rank1 ソロトーナメント大会”!! 実況は私(わたくし)大人気で引っ張りだこな人気者、カラーと! 解説は、この間のウィンターカップの結果が残念だった風雅選手でお送り致します!』
『実況が余計な一言で人の心抉って来るんだけど。何でこれで大人気?』
『え? 顔じゃ無い? あと毒舌キャラ』
『世も末だなおい』
ハクト達が開会式としてたどり着いた場所は、施設のど真ん中。
空が見える、屋外の陸上競技場のようなドーム状の広場だった。
会場中に、実況者と解説者のマイクの声が響き渡る。
実況者のカラーは、文字通り派手な格好をした女性で、解説の風雅はこの間の動画に出ていた男性だった。
『いやーしかし風雅さん。まさか初心者大会の解説に来るとは思っていませんでしたよ』
『別に。これもプロとしての仕事の一部だろ。仕事なんだから大会のレベルどうこうは関係無いだろ』
『いやー、普通解説の仕事って、プロ引退した人とかが来るのが普通なんですが、お呼ばれしちゃったんですねー』
『へ? はぁ!? まだ引退してないから! まだ雪女選手にリベンジ果たすまでは引退しないし、勝った後も続けるから!!』
『はーい。それでは今日はこの落ち目の風雅選手と一緒に、試合の実況と解説を進めていきたいと思いまーす』
『落ち目ってゆーな!!』
「ねえ、カグヤ。これが開会式でいいの?」
「ちょっとあの二人のコンビって、割と有名らしいから大丈夫」
コンビって漫才?
そう言いたくなったハクトは言葉を飲み込んで、アナウンスを聴き続ける。
『それでは大会ルールを改めて確認です。今回は1体1の殲滅戦15分間! ソロトーナメントとなっております! ルールは使用スロット2つまで、更に最大HPが通常の半分500になっており、同時に試合時間が残り5分になったらギアのCTの速度が3倍になります!』
『これは単純に低ランクの試合同士だと、フルのHPを中々削り切れないから時間短縮の為だな。泥仕合いになっても残り5分で一気に試合動くこともあり得るから、最後まで油断するなよ』
『また、今回は使用するギアはあらかじめ登録したギアのみとさせていただいております! 大会のレギュレーションによっては、登録の必要無しで付け替えなどが自由なパターンもありますが、今大会では固定です!』
『初心者の内は、まずは手持ちの少ないギアを使いこなすことから慣れて欲しいからな。付け替えとかはあまり考えない方がやりやすいだろう』
「まあ、そのルールのせいで俺が微妙にやばいことになってるんだけど」
「ハクト君、ドンマイ」
『今回の大会参加者は16人! 初心者大会にしてはそこそこの人数ですね! さあ、長々しい前置きは置いておいて、早速一回戦の対戦相手を決めましょう!』
そう実況のカラーが言った後、電光掲示板に派手なガチャガチャの演出のようなものが表示される。
そして出てきたカプセルから、プレイヤーネームが表示されていた。
==============
rank1 ソロトーナメント大会
1回戦
プレイヤー:ハクト
rank:1
VS
プレイヤー:異世界からの最強 絶対無敵 チート転生者・異界天晴いかいてんせい
rank:1
==============
『はーい! 早速痛々しいプレイヤーネームの方が出てきましたー!』
『あー、いるいる。プレイヤーネーム自由だからって、変な二つな長々しくつける初心者プレイヤー』
『そうですね。やっぱり"誓いの風 名も無き少年"とか付けてた人にとっては心当たりがありそうですね』
『ヤッベ藪蛇だった』
「マジでいたんだ、変な二つ名つける人」
「ね? いったでしょうハクト君。これじゃ名前負けしてるわよ?」
いや絶対してない。というかどうでもいい。
正直なハクトの感想だった。
『それでは、残りの対戦相手も一気に決めていきましょう!』
そう実況のカラーさんが言って、トーナメント表の残りの枠がどんどん埋まっていっていく。
最後の方になって、やっとカグヤの名前が表示されたところだった。
「ありゃりゃ。これじゃあハクト君と対戦出来るのは決勝戦までおあづけね」
「一回模擬戦出来たし、そう残念がることでも無いでしょ。ていうか、決勝まで残る気でいるんだ」
「うん、まあなんだかんだで、ハクト君ともう一度戦うところまではいきたいなと思って。模擬戦と公式戦じゃ、戦いの雰囲気が変わるわよー」
「そっか。じゃあ俺も、どこまで行けるか分からないけど頑張らないとね」
そう言って、ハクトは自身の気合を入れ直す。
rank1 ソロトーナメント大会
間も無く、開催────
★因幡白兎(イナバハクト)
主人公。
白兎パーカーを着た、空を飛びたい夢を持った少年。
微妙に運が悪かったりする
★卯月輝夜(ウヅキカグヤ)
ヒロイン。
空から降ってきた系女子。
初心者にこれは厳しいでしょー!? っと嘆いている。