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第5話 模擬戦・カグヤ(後編)

「ぐ、う……生きて、る? 俺、生きてる?」

「生きてる、ちゃんと生きてるよハクト君!!」


 模擬戦を一時中断して、カグヤに介抱されながらハクトは自身が生きている事を実感する。

 ハクト自身、さっきのはこれは死んだと思い込んで、暫く動けなかった。

 HPグローブ。本来首の骨が折れると言う即死のダメージも、こうして肩代わりしてプレイヤーを生かしてくれていたと言う事実に、ハクトは凄く感謝していた。


「まさかトランポリン以上に飛ぶとは……あれくらいの高さだったらいつもならぶつからないだろうと、完全に油断してた」

「ハクト君、インパクトの衝撃に合わせて、丁度地面を蹴っていたから余計に高く飛んだのかもね」

「うん……にしても、すごいなHPグローブ。本来即死レベルの、しかもギア関係ないところでも、HP250ぐらいで抑えてくれるのか」

「うん。普通の人で言うと、心臓か脳にギアじゃない拳銃で4回撃たれるまでは耐えてくれる計算だって」

「とんだスーパーバリアだね、これ」


 しかもこれ、安全の為1000を超えてもダメージを防げるよう、倍近くのエネルギーを溜め込んでいるらしい。

 ハクトはそれを聞いて、マテリアルブーツなんて言う危険なスポーツがここまで盛り上がった理由をよく理解した。


「あの、それでね。ハクト君……続き、どうしよう? もし、今ので嫌になっちゃったなら……」


 心配そうな顔で、カグヤはハクトに聞いてくる。

 さっきまで模擬戦でテンションが上がっていた人物とは思えないくらいに萎れていた。

 実際、さっきの衝撃的な出来事は、初日の素人に経験するにはショッキングな出来事だ。

 普通はここで嫌になって辞めてもおかしくないが……


「……いや、やる。続きやろうよ」

「っ! いいの?」

「ああ。逆に絶対安全の装置がどれほどのものか実感出来たし、何より何か掴みかけたんだ。ここで止めるのはもったいない。でしょ?」

「うん……うんっ! やろう続き!」


 そうして、ハクトとカグヤは仕切り直しでフィールドに改めて立ちに行った。



 ☆★☆


 バトル、再開! 

 先程の状況のように、互いに10メートルほどの距離を開けたところからスタートする! 


 ==============

 バトルルール:殲滅戦

 残りタイム:5分13秒


 プレイヤー1:ハクト

 残HP:519

 rank:1

 スロット1:インパクト

 スロット2:────


 プレイヤー2:カグヤ

 残HP:988

 rank:1

 スロット1:ファイアボール

 スロット2:────

 ==============



「今度はぶつけない!! 跳ね上げろ! 【インパクト】!!」


 ボゥンッ!! 


 今度は天井にぶつからないように、気持ち前傾姿勢の状態でギアを発動する。

 ハクトはそのままの勢いで斜め前にジャンプしていく! 

 若干体勢は崩れかけ気味だが、それでも十分上手くいっている! 


「うし! 今度は頭をぶつけないな!!」


 しかし喜んだままではいられない、無事に着地することを意識し始めて、着地予定の地面をよく見て……


「って、カグヤ!? そこ邪魔!?  なんでわざわざ当たる位置に!!」

「あは! いいわよ!」

「何が!? さっきと別の事故起こさせたいの!?」


 気づくと、着地予定箇所にカグヤが立っていた。

 さっきまでその箇所の2、3メートル離れた位置に立っていたから、ぶつかる恐れは無かった筈なのに。

 あろう事か、彼女はわざわざハクトとぶつかる位置に立ちに来ていた。


「くっそ! 避けろ! 【インパクト】!!」


 咄嗟に避けようとして、空中で再度ギアを発動宣言するハクト。


 ……しかし、今度は右足のギアは反応してくれなかった。


「っは!? なんで!?」

「いいから、そのまま来なさい!! この間の仕返しやりたいでしょう!」

「う、おおおおおおっ!!?」


 ギアが突然反応してくれなかったことに動揺しながらも、今は目の前の彼女が先だ。

 そうだ、仮にも今は模擬戦中。

 ハクトはそう判断し、着地予定箇所のカグヤに向けて、空中で両足を整える。

 そしてそのまま、カグヤに空中から両足踏みつけを行う!! 


「お、らあぁっ!!」

「く、うううぅっ!!」


 ズドンッ!! と、まだ中学生とはいえ、それなりの体重を持ったハクトの踏み付けがカグヤに決まる。

 カグヤは両腕でガードはしていたが、それでも予想以上のダメージが彼女の体全体に襲いかかっていた。

 丁度勢いが止まったと判断し、ハクトはそのままついでにカグヤを蹴りつけるように離れて、空中バク転を1回しながら距離を離した。


 ==============

 プレイヤー2:カグヤ

 残HP:955

 ==============


「うっわー、今のでHP30くらい削られたわ。これをこの間ハクト君に生身でやっちゃったのね。改めて本当にごめんなさい……」

「そんなことはどうでもいい! なんでわざわざ当たりに来たんだ! HPグローブがあったとはいえ、普通に慌てたよ!! さっきの事故の直後だし!!」

「そうね。じゃあ説明のためにもう一回タイムで」


 そう言って、カグヤは姿勢を再度楽にして説明に集中する。

 2回目なので、ハクトのほうも大人しく聞いていく。


「まず一つは、この間の謝罪を兼ねて一回はハクト君のその攻撃を受けた方がいいかと思って。あの攻撃なかなかよかったわよ。そのウサギパーカーも合わせて、まるで”兎の踏みつけ”のようで……」


 そう言って、カグヤはうーん……と何かを考えるように唸り始めた。

 ハクトはそれを首を傾けながら待つと……



「よし! さっきの動き”ラビットスタンプ”って名付けるのはどうかしら!?」

「なんで急に技名考えてんの!?」



 振り回されるようなカグヤの提案に、ハクトは少し混乱していた。

 なぜ今技名? しかも名前も、めっちゃシンプルと言うか、ややダサい気が。

 そんな感想を抱いていた。


「再現出来そうないい動きは、直ぐ技名をつけて管理するのが一番いいのよ。思い出しやすいようように名前もシンプルにしてね。以前の動画で、雪女選手が”アクセルムーブ・キック”を使っていたのを覚えてる?」

「ああ、確かあの選手の得意技の一つって解説があったけど……」

「そう。あれ、厳密にはギアを使ってないのよ。いやまあ、スケート靴に変形させて加速していたと言う点では、間接的に使用していたとは言えるけど……とにかく、ギアを組み合わせたその人独自の動きには、技名をつけた方がいいの。いろいろな理由でね」


 後、今は関係無いけど後々リピート系のギアに関係してくることだし。

 そう軽くカグヤは付け足した。


「だからハクト君。多分【インパクト】利用の体術メインになってくると思うから、自分で気に入った動きがあれば型として名前つけといた方がいいわよ」

「理由は分かった。けどだからって、なんで”ラビットスタンプ”なのさ。もうちょい何かないの?」

「じゃあ、"空から舞い降りる純白の小さき獣"とかは?」

「”ラビットスタンプ”シンプルで良いね。サイコー、良い名前ありがとうー!」


 ハクトは無理やり今の会話を打ち切った。

 シンプルイズベストだ。そっちの方がまだマシだった。



「で、話を戻して二つ目の理由だけど。ハクト君さっき空中で避けようとして、計3回目の【インパクト】発動しようとしたけど、失敗したでしょ」

「あ、ああ。なんでだろ、1回目と2回目の時のイメージは出来てたから、3回目も避けようとするイメージは出来てた筈なのに……」

「2回目と3回目の時間の間隔、かなり短かったでしょ。そう言う時、初心者は同じスロットのギアを連続で発動出来ないのよ」

「マジか!? でもなんで? カグヤの【ファイアボール】みたいに、3、4秒のインターバルタイムが必要とか?」

「うーん、それもある意味関係あるんだけど……今回の場合だと2回目のイメージが続いたままで、いわゆる頭の中で【インパクト】使用のスイッチが押しっぱなしだったのが原因かしらね」

「ん? え?」


 カグヤが少し難しいような話をし始めてきた。

 頭の中のスイッチ? 


「ギアって、極論イメージさえあれば簡単に発動出来ちゃうでしょ? それで、イメージをする事で頭の中で【インパクト】を発動するって言うスイッチが入って、ギアが発動する。ここまでが普通の流れなんだけど……このイメージって、途切れないとスイッチを外した扱いにならないらしくて。押しっぱなしだと、スイッチ連打扱いにならないの」

「……つまり?」


「【インパクト】を再発動したいなら、 "最低何か別のことを考えてから"、それから【インパクト】の事をもう一回イメージしないと再発動できない。簡単に言うと、こうね」


 へー……と、ハクトはその話を聞いていた。

 いや……難しくない? 

 正直まだ理解しきれていないぞ? 


「まあ、適当に1発撃った後、そこらへん逃げまくったり、ある程度呼吸を整えてインターバルタイムを整えれば自然と再発動出来る様になってるのが大抵らしいけど。ハクト君みたいに、飛んでる間続けて再発動はまだ厳しいわね」

「そう言う事か……くそっ」


 要するに、空中で【インパクト】はまだ使えない。

 いつかは使えるかもしれないけど、今はそれが現実と。


「あとは、"ルーティーン"とか採用している人がいるわねー」

「ルーティーン? それって、あの決まった動きをやってリセットする、テニスとかのスポーツでやるやつ?」

「そう、それ。例えば、私も【ファイアボール】を撃つ時って、性質上相手に当てるために足を振り上げなきゃいけないんだけど、その"振り上げてから発動"までが一連の流れとしてルーティーンになってると言えるわね」


 だから3、4秒間の間隔が出来ちゃってるし。

 そう言ったカグヤの言葉に成る程とハクトは納得する。


「さて、と。そろそろタイムは終了するけど、ハクト君整理出来た?」

「ああ、とりあえずはなんとか」

「そう。それじゃあ再開ね!」


 ==============

 バトルルール:殲滅戦

 残りタイム:1分23秒


 プレイヤー1:ハクト

 残HP:519

 rank:1

 スロット1:インパクト

 スロット2:────


 プレイヤー2:カグヤ

 残HP:955

 rank:1

 スロット1:ファイアボール

 スロット2:────

 ==============


「もう試合時間ほとんど無いな……模擬戦だし、勝敗は特に気にするほどのものじゃ無いんだけど……」


 それでも、少しくらいはやれることはやっておきたい。

 そうハクトは考えた。

 しかし……


「最後までやる気があるのは嬉しいけど、ハクト君どうする? どうやって私にこれ以上ダメージを与える? 言っておくけど、さっきのラビットスタンプ、あの時は説明も兼ねてわざと食らったけど、普通は避けられるからね」

「ああ、分かってるよ!」


 今回の模擬戦で、一番ダメージ効率が良かったのはラビットスタンプだった。

 しかしカグヤの言うとおり、あれは隙が大きすぎて相手に回避の時間を与えてしまう。

 当てるためには、相手を体勢を崩して直ぐに逃げられないようにしてから、それから跳んでラビットスタンプを放つと言う作戦になるが……


「(その程度のこと、カグヤは想定済みだろうしなあ)」


 なら、最初の時みたいに接近戦で普通の蹴りを放ち続けると言う、地味の戦い方はあるがどうも味気無い。

 それに【ファイアボール】も飛んできて、それを避けながら近づいての戦いは時間が掛かってそのままタイムアップだ。

 せめて一回、負けるにしてもせめて大技を決めてみたいが……


「うーん……」


 そこでハクトは無意識に天井を見る。

 自身の首を折った(実際には折れてないが)、忌まわしき天の壁とも言えるもの。


 ……天の、"壁"? 


「(そっか。天井があって、ぶつかれるほど頑丈なら……)」


 そしてもう一つ。先程カグヤが言っていた"ルーティーン"。

 例題でカグヤの【ファイアボール】を上げてくれていたが、【インパクト】で考えると……


 いや、むしろトランポリンの流れとして考えよう。

 トランポリンは、一度跳ねた後、再度落ちてからネットの部分を踏むまで跳べない。

 これもある種の"ルーティーン"として意識出来るだろうか。


「(だとしたら……俺の【インパクト】の"ルーティーン"の条件は"地面を蹴ること"として……良し!)」


 思考をまとめ終わったハクトは、自分のラビットパーカーのフードを徐に被り出す。

 フードから柔らかめのウサギの耳が垂れていて、かつ深くフードを被ったため、ハクトの表情が少し見辛くなった。


「ん? 急にパーカーのフードを被ってどうしたのハクト君。まるでますます大きなウサギみたいになってるわね」

「別に。こっちの方が気持ち集中出来るって言うか、覚悟が決まる感じがしてやる癖みたいなもんだよ」


 フード取っている時は、どちらかとリラックス中だ。

 そうハクトは付け足すように言った。


「ふーん、まあそれもある意味一種のルーティーンね。けど視界が狭まって、逆に不利にならない?」

「否定はしないよ。実際多少横とか見えづらくはなる。……けど、余計な情報遮った方が、判断力が上がることもあるでしょ?」

「成る程、多少のリスクは負ってでも、そっちの方がメリットになりそうならそうね。それじゃあ、時間的にもここからがハクト君の最後の攻撃かしら」

「ああ。最後の挑戦、受けて欲しい」


 準備は、出来た。

 あとはカグヤに一泡吹かせるだけ。


「いくよ、カグヤ!!」

「来なさい、ハクト君!!」


 先手を打ち出したのはハクトだった。

 まずはカグヤに近づけなければ話にならない。


「跳ね上げろ! 【インパクト】!!」


 まずは地面を蹴って斜めに移動する使い方で、【インパクト】を発動する。

 先程と同じように、カグヤに向かって飛んで行こうとしたが……


「っ! やっぱり、2、3メートルはズレるか!?」


 どう予想しても、カグヤの今いる位置から着地予想地点がかなりズレる。

 少なくとも、斜めジャンプ移動の使い方ではハクトはまだ制御しきれていなかった。


「私の忠告聞いてたのかしら? ただ無策で跳んだんじゃ格好の的よ!! 【ファイアボール】!!」

「ぐあっ!?」


 ==============

 プレイヤー1:ハクト

 残HP:519 → 488

 ==============


 空中を移動中のハクトに向かって、遠慮無くカグヤの攻撃が放たれる。

 まだ空中でギアを連続発動出来ない以上、逃げ場は無いので当然の結果だった。

 だが、ハクトにとってそれは覚悟の上だ。


「着地! そしてダッシュ!」

「むっ!」


 ズザァーッ、と地面を擦り付けながら着地し、すぐさまカグヤに向かって走り出すハクト。

 もはや彼の目的に、残りHPの状態なんて考慮するものでは無かった。

 ある意味余計な思考を捨てて、とにかくカグヤに近づこうとする! 


「怯まなかったのはいい度胸ね! でも少なくとももう一発は食らってね! 【ファイアボール】!!」


 着地後のハクトに、すぐさま追撃を放とうとしてくるカグヤ。

 ギアが発動され、火球がハクトに向かって迫ってくる。

 そしてカグヤは”攻撃直後で片足を上げたまま”。


「そこだ! おらあ! スライディング!!」

「ちょ!? 嘘!!」


 火球の真下を潜り抜けるように、ハクトはスライディングで回避する。

 そしてそのまま、カグヤの残った軸足にも刈り取るように蹴りを入れる! 


「へびゅっ!?」


 軸足をとられたカグヤは当然そのまま倒れ込み、うつ伏せの状態になってしまった。

 大したダメージにはなっていないだろうが、少なくとも大きな隙が出来た。

 このままただ単純に蹴りを入れ続けるのも悪くは無いだろうが……


「どうせなら挑戦だ! 跳ね上げろ! 【インパクト】!!」


 ハクトは一旦カグヤを無視し、そのまま【インパクト】を再発動した。

 斜め移動ではなく、トランポリンの時のように完全に真上へ向かって。


「え! 真上!? それじゃあさっき天井にぶつけたことの再現じゃ……」


 倒れた状態ながらもハクトの方を見れたカグヤは、そんな感想を持つ。

 また頭をぶつけるんじゃ無いかと心配して、仰向けに転がって上の方を見上げ様とした。


 そしたら、そこには“逆さまになったウサギがいた”。


「へ……? 逆?」


「天井も、ある意味地面だよね」


 真下を向いているハクトはそう、自分自身にも言い聞かせるように呟く。

 中学時代のトランポリンで空中で姿勢を回転させるなんてよくやっていたことだった。

 斜めジャンプの時ならともかく、単純な真上ジャンプならこのトランポリンの技術を遺憾無く発揮できる。


 それでハクトは、逆さまに天井に着地したのが真相だった。


「そして、天・井・を・蹴・る・準・備・は出来た……」


「ま、まさか……!?」


 慣性がまだ残っていて、天井に押し付けられるような重さを感じた状態のまま、ハクトはイメージを固める。

 それは先ほどまでと同じように、ギアを使って真上にジャンプするイメージ。

 イメージ自体はほぼ変わらない。但し、自分の居場所と状態が逆さまだ。


 空へでは無く、地面に向かって。


「跳ね落・と・せ・! 【インパクト】!!」


ボゥンッ!! 


 天井を蹴って、真下へのジャンプ。そして途中で、両足を地面に向けている。

 今までの勢いプラス、自由落下の加速も追加されたそれは。

 先程までの斜めジャンプからの踏みつけの速度とは比較にならない。

 気づいた時にはもう遅く、カグヤには回避する時間はとっくに無かった。


「喰らえ! 最高速度、ラビットスタンプッ!!」

「っ!!? か、はあッ!!?」


 ズドオオオオン!! っと辺りに音が響き渡る。

 踏みつけたカグヤの人体越しに、それほどの音が発生するほどの衝撃が地面にまで伝わってきていた。


 ==============

 プレイヤー2:カグヤ

 残HP:955 → 849

 ==============


 一撃のダメージが100越え。

 上手く鳩尾辺りに攻撃がクリーンヒットしたとはいえ、今日最高の一撃をハクトは放つ事ができた。


 その直後、ビーッ!! とブザー音が辺りに鳴り響く。

 電光掲示板を見ると、表示がいくつか切り替わっていった。


 ==============

 バトルルール:殲滅戦

 残りタイム:0分00秒


 プレイヤー1:ハクト

 生存

 残HP:488


 プレイヤー2:カグヤ

 生存

 残HP:849

 ==============



 ==============

 両者生存の為、残HPによる判定を致します


 よって、勝者 カグヤ! 

 ==============


「はあっはあ……ふう。模擬戦、カグヤが勝利だって。おめでとう」

「もう、馬鹿言わないでよ。あくまで練習だから、勝敗にそこまで意味は無いわ。……そんなことより、あの最後のラビットスタンプ。あれを見れただけでも凄く価値があったわ」

「そうだね。ありがとう、カグヤ。楽しかったよ」


 そう言ってハクトは、倒れたままのカグヤに手を差し出した。

 その手をカグヤはしっかり握り返して、そのまま立ち上がらせて貰った。


 元々の模擬戦のルールに則れば、明らかにカグヤの勝利扱いだった。

 しかし、最後の全力のラビットスタンプを繰り出せたハクトにとっては、確かな満足感が残っていた。



 ★因幡白兎(イナバハクト)


 主人公。

 白兎パーカーを着た、空を飛びたい夢を持った少年。

 リベンジ完了!


 ★卯月輝夜(ウヅキカグヤ)


 ヒロイン。

 空から降ってきた系女子。

 リベンジされちゃったー、と満足。

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