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因幡の月兎 不思議な靴を使った架空スポーツで、俺だけ空を跳んでいます。
因幡の月兎 不思議な靴を使った架空スポーツで、俺だけ空を跳んでいます。
新月
現代ファンタジー異能バトル
2024年10月26日
公開日
44.5万字
連載中
ここは現代のようで、少し違う世界。
魔法のような技が使える不思議な靴、マテリアルブーツ。
それを使ったバトルの大会が世界中で開かれています。
そんな世界で、とある白兎パーカーの少年が暮らしていました。
彼には夢がありました。いつか空を飛んで見たい、と。

そんな夢いっぱいの少年が、空から降ってきたかぐや姫の少女と出会い、空を“跳ぶ”手段を手に入れました。
白兎の少年は、かぐや姫に誘われるまま一緒に大会に参加します。
自分の夢を叶える為に。

大会を勝ち進み、不思議の国のアリスの少年や、カメの少年とも対決していき。
それらを乗り越え、とうとうかぐや姫の試練が訪れます。
さあ、夢を叶える時です、白ウサギ。

試練が終わった後、かぐや姫は言いました。
一緒に月に行きませんか? と……
 
この小説はハーメルン、小説家になろうにも掲載しています。

第1話 親方、空から女の子が!!

 みんなは無いだろうか? 空を飛びたいと思った経験は。

 今まさに青空を横切っているツバメのように。

 もしくは、マントを付けて飛び立つスーパーマンのように。


 この俺、因幡白兎イナバハクトも、今まさに空を自由に飛びたいと思っている人間だった。


 人は空を飛べない。そんな常識な事は理解している。

 しかし、空への憧れは止められないのだ。



「────”調子に乗るんじゃないわよ、白ウサギ”」



 ──で、そんな俺に対して、目の前で女の子がブチギレてる状態なんだけど、どうすればいいと思う?


 いや、実はこれ、俺が悪いっちゃ悪いんだけどさあ……


 ==============

 バトルルール:殲滅戦

 残りタイム:9分50秒


 プレイヤー1:ハクト

 残HP:463 / 1000

 rank:1

 スロット1:インパクト (残りE:0 → 10/10)

 スロット2:バランサー (残りE:-)


 VS


 プレイヤー2:カグヤ

 残HP:202 / 1000

 rank:1

 スロット1:ファイアボール (残りE: 0 → 10/10)

 スロット2:────

 ==============


「HP250差、ね……”ハンデにもなりゃしないわね”」


 電光掲示板の表示を確認した目の前の少女……カグヤは、そう呟く。

 互いにスロット1のエネルギーもリチャージが完了した。

 覚悟しなさい、ハクト君。っと、カグヤは言葉を続ける。


「あなたは、私の全力が見たいと言うけれど……”試合になると思っているその傲慢さ、粉々に叩き壊してあげるから”────心、折れないでね?」


 その言葉とともに、カグヤは右足を大きく後ろに横向きに振りかぶる。

 来る、と、会場中が静けさにつつまれた瞬間────


「────開け」


「────”火球・紅扇子(べにせんす)”!!」



 振り上げたカグヤの足から、【ファイアボール】が発動された。

 ────但し、その【ファイアボール】が”10発分、しかも扇状”に飛んで来る!!


「跳ね上げろ! 【インパクト】ぉ!!」


 横方向は完全に封鎖された。ならば、上しかない。

 俺は咄嗟に【インパクト】で自身を真上に打ち上げ、何とか10発分の【ファイアボール】を回避する。

 後は着地後、接近すれば……



「────”跳んだわね”?」



 ……その単純な、事実確認のような言葉に俺はゾクッと寒気が走る。



「これがお望みの2つ目のギア……覚悟なさい」


 その言葉とともに、カグヤは大きく右足を上げる。

 足先までピンと伸ばし、振り上げた直線軌道上に一筋の赤い”線(ライン)”が引かれる!

 その線は、跳んだ俺の真下を通って行った。

 5cmあるかどうかの線……それが、直後には”5m”に拡張される!!



「迸(ほとばし)れ────【ヒートライン】ッ!!」



 振り上げた右足を、勢いよく地面に踵から落とす。

 まるで、火打の着火作業のように放たれたそれは、地面の線に触れた箇所から……炎が湧き上がって行く!!

 線上を伝い、高速で横幅、高さ5mの巨大な炎が俺に向かって迫っていく!!


「う、わああああぁぁァァアアアアァァアァ!!?」


 自由落下中の俺は、なす術もなく────炎に、飲み込まれた。



 ──ああ。


 どうして、こんな状況になっちゃったんだろう……? 



 ☆★☆


 ──時は少し戻り、別の場所。


 ──魔法のような力を持つ不思議な靴、マテリアルブーツ

 それを使ったバトルの大会が世界中で開かれている。


 今まさに、日本でその大会の一つが開催中だった。


 とある学校の校庭の隅で、声が響く。


「ハクト先輩、決勝戦のライブ配信が始まるっスよー! 

 せっかくなんで一緒に見ましょーよ~」


 先輩を呼んでいる少女がスマホで見ている配信は、

 【マテリアル・ブーツ ソロトーナメント日本大会 ウィンターカップ】というタイトルだ。

 画面の向こうでは、ちょうど試合が始まったところだった。



『こちらからいかせてもらう! スロット1発動! マジック【エアロスラスト】!!』


「スロット3、マジック。【アイスレーザー】」


 画面の中で、風の刃、氷のレーザーの応酬が広がっている。

 激しい攻防の音が、スマホ越しでも響いてくるほどだ。 


「っはあ〜。すごいっスねえ、マテリアル・ブーツ! 本当に魔法みたいな応酬が行われてるっス! ほら、ハクト先輩どうっスか……」


 そうして、少女が振り返ると……


「──え? 何?」


 ボヨーン、ボヨーン、とトランポリンを跳ね続けている少年がいた。

 もちろん、後輩のスマホなんて見ていない。


「って、ぜんっぜん見てねえっスこのウサギ野郎──ッ!!」


 後輩の少女は切れた。

 コイツ、せっかく面白そうな配信を見つけたと言うのに、聞く耳持ってねえ。


 肝心の先輩、因幡白兎(イナバハクト)はトランポリンでずっと遊んでやがる。


「ちょっとハクト先輩!! 決勝戦っすよ、生放送っす!! 興味無いんスか!?」

「ごめん、興味無い。今トランポリンで“空飛ぶ夢”叶えるのに忙しいし」

「それ“飛ぶ”って言うか“跳ぶ”ッス!! せっかくその夢の手助けになりそうなスポーツ見つけてあげたのにー!!」


 まったくもー、と後輩の少女はため息を吐く。

 この先輩はいつもこうだ。自分の夢の話を優先して、他を微妙に蔑ろにする。

 まあ、部活の後輩としてある程度世話にはなっていたから、それ自体はありがたかったが……


 それはともかく、マテリアルブーツだ。


 ……ハクトは、自分のスマホに何か通知が来たことに気づいた。

 見ると、後輩の少女が送ってきた動画のリンクらしい。


「とりあえず、後でその動画を見てみるっす! すっごい面白いっすから、そこからまたマテリアル・ブーツを調べて、先輩の空を飛ぶと言う夢に活かすっす!」

「えー」

「えー、じゃないっス! まったく、なんでそんなにマテリアルブーツが嫌いなんですか。後でちゃんと見てくださいっスよー」


 ついでに、トランポリンも片付けてくださいねー

 そう言って、後輩の少女はその場から帰っていった。


「んー……」


 後に残されたのは、リンクを渡されてどうしようか悩んでいるハクトだけだった……



 ☆★☆


「あー、やっと片付いたー。疲れたー、でも楽しかったー……」


 夕方の帰り道。ハクトはそう呟きながら公園の中を歩いている。

 本来の通学路に使うルートではないが、なんとなく考えを整理したくて、遠回りする気分だった。


「にしても、マテリアルブーツねえ……」


 後輩の少女から送られたアドレスデータをみて、動画ファイルを最初から再生しながら歩いている。

 丁度、風雅と呼ばれた青年が【エアロスラスト】と呼ばれるものを解き放っている所だった。

 成る程。確かに自分の知っている頃より、魔法の性能がアップしているというのは本当らしい。ハクトはそう納得する。


「なんで、マテリアルブーツが嫌いなんですか、か……」


 ハクトは、後輩の少女に言われたことを頭の中で反芻する。

 ……その答えは明白だった。



「“既に期待した事があったからだよ”……」



 そう。既にハクトはマテリアルブーツを“知っている”。いや、“知っていた”。

 魔法の様なことを実際に出来る様になる。その謳い文句に、ハクトは大いに興味を持ってマテリアルブーツを調べていた。

 自分の夢、“空を自由に飛べないか”を知るために。


「──けど、無理だった」


 ……結果は、そんな事は不可能だと言う事がわかった。

 マテリアルブーツで、炎や風といった魔法の様な現象を起こすことは可能ではある。


 ──しかし、創作によく出て来る魔法の箒や、浮遊魔法などは、マテリアルブーツではゴッソリ抜けていた。


 ……世界は、空を飛ぶと言う事に厳しい。

 いまだかつて、“人は空を飛んだことは無かった”。ブーツにしても、他の道具や乗り物にしても。


 だから、ハクトはマテリアルブーツが好きじゃ無いのだ。

 かつて期待したからこそ、裏切られた感じがして。


 ……実は、今も時々調べていては、結局無さそうだとガッカリして。


「むう。くそう、遠いなあ……」


 夢を諦める気は、まだ無い。

 やれる方法全部試して、裏技、コネ、禁技、あらゆる方法を調べて吟味した上で、それからやっと諦めるという手段を取るつもりだ。


 ……しかし、いまだに成果はゼロ。

 物心ついた頃から憧れている夢ではあるが、ここまで成果が無いと流石に少し、気が滅入ってくる。


「あーあ、憎らしい青空だ……」


 悔しさを感じながら、ままならない近い様で遠い空を複雑な心境で再度見上げていると──


「きゃああああああああああッ!!? ちょっとごめんそこの兎どいて避けてええええええええぇぇぇ!!!」


「────はっ?」



 ──空に女の子がいた。大体同い年位で、10メートル位の高さの位置に。

 自分が望んだ空に、トランポリンなども無しで。

 長い明るい赤髪で、スカートを履いていて、不思議の靴も履いていて。


「え、あっ? なあっ!? 空を飛ッ!!」


 ハクトにとっては、衝撃的だった。色んな意味で。

 女の子が空にいる、という事実に。

 そして……


 ズガンッ!! と、頭に響く音が。


 飛んでる、と言い切ろうとする前にハクト少年の意識は一瞬途絶えていた。

 空の少女は飛んでいたのではなく、落ちていたのだ。

 それがハクト少年にストライク。呆けていた代償だった。


「きゃあああ!? ホントごめんなさい大丈夫!? 病院、救急車ぁー!!」


 ……慌てる少女の声を聞きながら、薄れた意識のままハクトは倒れたまま先程の光景を思い返していた。

 自分の理想系に限りなく近づいていたかもしれない少女。


「(空飛ぶ、女の、子……?)」


 ──これが空から落ちて来た少女、”輝夜(カグヤ)”との出会いだった。

 この出来事をきっかけに、”白兎ハクト”の人生、そして夢が大幅に変わっていく事になるとは、まだ誰も気付かなかった……




 ★因幡白兎(イナバハクト)


 15歳

 158cm

 黒髪

 中立・善


 主人公。

 白兎パーカーを着た、空を飛びたい夢を持った少年。

 夢の難しさに悩んでいると、空から降ってきた少女に踏まれていた。なんで?

 親方、空から女の子が! は、言えなかった模様。



★卯月輝夜(ウヅキカグヤ)


 15歳

 156cm

 長い明るい赤髪

 中立・善


 ヒロイン。

 空から降ってきた系女子。

 ただし、受け止められるのではなく踏みつけたタイプ。事故なんです!



★後輩の少女


 14歳

 142cm

 茶髪

 秩序・善


 ハクトと同じ中学の後輩。陸上部。

 素直で明るい性格。

 ハクトがかつて同じ部活にいた頃があり、その時にお世話していた少女。

 先輩の夢の手助けになると思って調べた情報を、あまり聞かれずにプンプン中。

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