幻想の国。そこには三人の従者がいた。派閥やしきたりを別とする、されど淑やかな三人がいた。
巫女。メイド。修道女。その三名に優劣は無い。しかし。
例えばこんな事を思うのだ。
二年ほど前、「わたし」はその世界を観測していた。「わたし」が愛したその世界は一篇の物語のように終焉を迎え、幕を閉じた。
しかし、その時に生き残った者がいた。それが例の三人。巫女、メイド、修道女。この三名に名前は無い。
あってはならないのだ。そんな事。
何が「正常」で何が「異常」か。それを判断する為の軸さえも。基準さえも。
壊してほしい。消してしまいたい。そういう、説明不能な、危ない気持ちが。そのような、ありえない、あってはならない、そのようなものが。
「まるでゼロだと、言い切れるだろうか」
「え?」
一度終焉を迎えた世界が、どんな形であれ復活するなど。
それが可能になってしまっては、何がなにやら分からない。
主に、喋っているのは巫女の者であった。
ほかの二人に言葉は無い。とりあえず今のところ言葉は無い。
それもまた、自制なのかも分からない。世界は終わったのだと言い聞かせ。自分に言い聞かせ。
言い聞かせ?
それは、その自問自答があるという事は、すなわち、それは、つまり、それは。
生きている。まだ彼女らは。それを悟った巫女の者。もうたまらずに、横にいる者の肩を叩いた。
「お嬢さん!お嬢さん!」
何か、気持ちが溢れるようだった。それはもう、込み上げて。しかし、説明できない。分からない。
そういえば。あのときも。そうだ世界が終わった時。
「分かったよ。私たちは言葉を失っていたんだ」
物語だから。自分たちは。だから、存在する為には、どうしても言葉が必要で。自分たちをどうやって説明すべきか、その判断を失い死んでいった。
そういう、過去。そういう、歴史。夢、夢、いつかの夢。
幻想の国は、ここにあった。