【露呈】を殺し。
【解析】を殺し。
【静謐】の死を見届けた。
パッケージングされた転移の術式によって【虚無】のいる氷の塊の上に立たされた俺たちは、まず、寒さと風の洗礼を受けることになる。
【露呈】のいた大陸で似たような目に遭っていたので対策はしていたが……
その対策というのが魔術頼みであり、ただでさえ聖剣のせいで魔術を使いにくいというのに、そもそも【虚無】のいた場所には、精霊がいっさい存在しなかった。
魔術王がまず環境の洗礼を受けて倒れた。
幸いだったのは、俺たちがこの氷の塊に降り立った時点で、すでに【虚無】を目視できていたことだろう。
……いや、目視できていたかどうかは、自信がない。
【虚無】は、二つの人型の穴だった。
白と黒の人型の空洞が、まるで手をつないでいるかのように、そこにある。
……凡庸な俺は、異様さに気圧されて、足が止まった。
非凡である聖剣使いは、かまわず斬りかかり、その双子の首あたりを、一閃で斬り払った。
するとなんだかよくわからないが、すさまじい気配が広がるのがわかったのだ。
身体中の力を奪われるような、謎の気配。
混乱する俺と違って、聖剣使いは冷静だった。
「……まいったな。ここまでのものに成るのか」
俺はもう凍りついてしまって、その先に続く言葉を聞けなかった。
だが、聖剣が竜を斬るとだんだんと
そこから世界が初期化されずに現代に続いていることを思えば。
おそらく最後の始祖竜を斬った聖剣は、『そこに存在するだけで、星の中に精霊が発生しなくなる』ほどのものに成ったのだろう。
だから現代は魔術もなく、精霊もおらず、科学というものにより文明が支えられている、のだろう。
……ここから先、【静謐】が他の始祖竜と記憶を共有することもなく、また、始祖竜たちは完全に死んでいるので、正確なところはわからない。
俺だってすべての記憶を失って、きっと何度か転生したのだろう。
そのあいだに世界は、現代の俺たちが知るような進歩を遂げた。
……もちろん、歴史書に書かれているのがすべてとは思わないが。
そこには始祖竜も災厄もなく、魔術もなかったのだと思う。
……本当に長かったのはきっと、そこからの旅路なのだ。
覚えていないだけで、俺は彼女となかなか再会できなかったか、再会しても彼女と気付けなかった。
だから、その続きは
竜と呪いが消え去って、ただの人になった今━━
俺たちは、あの千回の旅の終着に立っている。