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第41話 はみ出しものたち

 魔導王の数ある子孫のうち一人として生まれた俺は、ほとんど軟禁のようなありさまで十五歳まで過ごすことになった。


 魔導王の勢力圏においては『魔術の才能』がなにより重要視されるのだが、その傍系ぼうけいの子孫であるのに、俺にはその才能がなかったからだ。


 他の『魔導王の血統』の者たちが生まれつき精霊を見ることができたのに対し、俺は訓練を経ても精霊を見ることができなかった━━と言えば、どれほど絶望的に才能がないかわかると思う。


 魔術というのは精霊の気を惹くことにより不自然・・・を起こす技術なのだが、そもそも見えないものには働きかけられない。


 俺はしばらく隠されるように育ち、そしてある日妹が生まれ、それが天才だとわかると、家から追放された。


『いなかったこと』になった俺は住む場所も後ろ盾もなく……

 さらに魔導王の勢力圏において魔術が使えないというディスアドバンテージを覆すのも難しく……

 十五歳まで世間に触れさせてももらえなかった、一人で生きていく方法なんて想像もつかない世間知らずの俺が行き倒れるまで、三日とかからなかった。


 いっそ追い出すんじゃなく首でもねてもらった方がマシという状況だ。


 けれどこの時の俺はなにもあきらめてなんかいなかったのだ。


 魔術は使えない。

 なら、魔術師を超えるほどの武術を身につければいい。


 そんなふうに考えて、体作りに勤しんでいたのだ。


 そもそも、魔術というのは攻撃技術として発達したものだ。

 なら、魔術なしで魔術と同規模の現象を起こせればいいだけの話なのである。


 ところが魔導王の国では、たとえ魔術より先に弓切り・・・で火をおこせようが、それが『魔術ではない』というだけで認められないような風潮があった。


 魔術以外のすべてを『魔術じゃないから』という理由で下に見る……


 ……『解析の時代』から百年が経って、隣国である『勇者の国』、すなわち『非魔術師の国』との冷戦関係が続き、互いが互いを馬鹿にし見下すことが普通になった世の中は、そうなっていたのだ。


 ちなみに勇者の国がイコール非魔術師の国として発展していったのは、魔導王と敵対し戦争になると魔術の一切が使えなくなるから、魔術に依らず、魔術を上回る必要性にかられてのことだ。


 つまるところ、どちらの国家も『隣国と戦争になった時に役立つかどうか』をベースとして価値観が醸成されていったのである。


 魔術師の国で生まれた魔術が使えない俺が行き倒れるには充分な下地があって、それは俺個人の技量がたとえ世界一でも……まあそこまで行くほどの天才ではなかったのだが……どうしようもなかった。


 そんな俺を拾ってくれたのは、ある集団・・・・だった。


 それは、魔術師の国に生まれたのに魔術の才覚を持たない者が数多く所属する集団であり……


 世界が確固たる価値観を持ち始めた時、その価値観において『無能』とされる者たちのよりどころ。

 世界基準における『才能判定』により低ランクとみなされた非才の者たちの集まり━━


 彼らは自分たちをはみ出し者アウトサイダーと名乗った。

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