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第6話ー白い湯気の中でー

しばらく抱き合って、俺は言う。


「風呂、入ろうか。」


言うと冴子さんが頷く。


「うん。」


俺は冴子さんの頭を撫でて言う。


「場所、教えて。俺が支度する。」


冴子さんは少し驚いて言う。


「え、いいよ…」


起き上がろうとする冴子さんに言う。


「良いから、少し横になってな。」


俺は立ち上がって押し入れに行き、薄い上掛けを出すと冴子さんに掛ける。風呂場の場所を聞く。



風呂場に来て見回す。この辺の家にしては風呂場なんかはちゃんとしてるな。結構新しいの入れてるし。これなら支度なんて必要無いなと思いながら、シャワーコックを捻る。シャワーが勢い良く出てくる。少し風呂場を蒸気で温めた方が良いなと思って、その様子を眺める。さっきの冴子さんの様子を見て、俺は切なくなる。痛かったかな、もう少し思いやりと余裕を持たないといけないなと自分を戒める。



「冴子さん、風呂入れるよ。」


声を掛けると冴子さんが体を起こす。まだ気怠げだ。


「大丈夫?」


聞くと冴子さんが笑う。


「うん、大丈夫…」


立ち上がりかけた冴子さんがよろける。俺は慌てて支える。


「…俺のせい、だよね。」


言うと冴子さんが俺に寄りかかって言う。


「そうだよ、だから責任取って。」


そう言われて何かグワッと胸に来る。


「取るよ、責任。」


冴子さんを抱き上げる。



風呂場は蒸気で温まっていた。


「温めてくれたんだ。」


冴子さんが言う。風呂場に入ってシャワーを浴びる冴子さんを後ろから眺める。髪を解くと長い髪がお湯で濡れてその背中を隠す。冴子さんが振り向いて、俺に手を伸ばす。


「郁弥くんも浴びて。」


冴子さんと場所を入れ替わる。冴子さんは泡ネットに何かを出して泡立てている。あぁ、そうか、顔洗うのか。そもそも冴子さんは厚化粧じゃない。泡で顔を洗う冴子さんに聞く。


「流す?」


冴子さんが言う。


「うん。」


シャワーヘッドを取って冴子さんの顔にお湯を当てる。泡が流れて行く。冴子さんのすっぴん、でも普段とあまり変わらなかった。


「ん?」


冴子さんが聞く。


「あ、いや、すっぴんだなーって。」


冴子さんが俯く。


「あんまり見ないで…」


そんな冴子さんを抱き寄せる。


「可愛いよ。全然、普段と変わらないし。」


冴子さんは顔を上げて言う。


「はい、交代。」


場所を入れ替わる。冴子さんが髪を洗う。そして俺に言う。


「ほら、郁弥くんも頭、洗って。」



髪を洗い終わると冴子さんは器用に髪を結い、ゴムで纏める。あ、普段見てる冴子さんだ、そう思った。冴子さんは膝を付いてボディタオルにボディソープを出し、泡立てる。


「郁弥くん、ここで、一人で、した?」


急に聞かれて慌てる。


「あ、いや、その、うん…した。」


冴子さんはクスクス笑う。


「いや、だって、冴子さんあんなだったし、このままだと抱き潰しちゃうから…」


冴子さんが立ち上がる。


「何で分かったの?」


聞くと冴子さんが言う。


「入った時に壁に、ついてたから…」


俺は真っ赤になって顔を背ける。


「ごめん…」


また冴子さんが笑う。


「何で謝るの?」


冴子さんを見る。


「いや、何となく…」


冴子さんはモコモコに泡立っているボディタオルを俺の胸板に当てる。


「洗ってあげる。」


誰かに体を洗って貰うなんて、大人になってからして貰った事が無い。冴子さんは俺の胸板を洗い、首周りを洗い、腕を洗う。脇の下を洗われて少し体がピクッとなる。


「背中向けて。」


言われて背中を向ける。首を洗い、背中を洗う。


「力、弱くない?」


聞かれて俺は言う。


「うん、大丈夫。」


だんだんと下がっていくボディタオル。お尻を洗われて太腿を洗われ、ふくらはぎを洗う。手を回されて前側も。


「足、上げて。」


言われて壁に手を付いて片足を上げる。ボディタオルで指の間までじっくり洗われる。


「ん…」


くすぐったいような、何かムズムズする感じだ。反対側の足も上げて洗われる。


「こっち向いて。」


冴子さんは跪いている。上から見下ろす冴子さんは当たり前だけど全裸で、所々、体に泡が飛び散って付いている。艶かしい、そんな言葉が浮かぶ。冴子さんは立膝になってボディタオルで俺の下腹部を洗う。


「貸して。」


言うと冴子さんがボディタオルを渡してくれる。


「今度は俺の番ね。」


ボディタオルを一旦流し、ボディソープをボディタオルに付けて泡立てる。冴子さんを立ち上がらせて胸元から首を洗う。胸をボディタオルで撫でるように洗う。


「ん…」


冴子さんの口から声が漏れる。お腹を洗い、背を向けさせて背中を洗う。


「痛くない?」


聞くと冴子さんが言う。


「もう少し強くても平気だよ。」


火傷痕を撫でる。しゃがんでお尻を洗い、太腿、ふくらはぎ、足の先を洗う。どこもかしこも細くて小さい。泡をボディタオルから掬い、立ち上がって足の間に手を滑り込ませ、奥まで撫でる。


「んっ…」


俺はシャワーヘッドを取って冴子さんの体にお湯をかける。


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