「蝶や鳥なんか見てるとさ、飛べるのって残酷だと思わない? 人間には羽がなくてむしろよかったかもしれないね」
「そう? 空を舞うのって素敵だと思うけどな」
「だって、歩くことが心底億劫になるだろうから……。
竜巻のように突然ですが、僕のこれまでの――大した長さではなく残念ながら貴重でもない――生涯について語らせていただければと思います。それでも、すべてを話すとあまりに冗長ですからトピックを厳選します。聴くのに料金はとりません、いただけるなら貰いますが……というのはもちろん冗談でして、なんといいますか、お暇つぶしにでもなれば幸いです。
僕はとある緑豊かな土地で育った。でも、たぶんあなたが想像するよりもっと物騒な日常だった。自分で言うのもなんだけれど、食うや食わず、それから食うか食われるかの戦いを生き延びたという自負があるのだ。とにかくいろいろありまして……というと漫談みたいだけれど。
どんな酷い目にあったか例を挙げたい。僕の両親は、子である僕と共に
もう一例。あるいは気にしすぎかもしれないが、それでも僕が深く傷ついたのは、
負けてたまるか、と何度も自身を鼓舞した。僕は地べたを這いつくばって生きてきたんだ。
ただ最近、大きな変化が訪れた。僕は自分の世界に閉じこもるようになった。生命そのものの温もり、そんなものが存在するかすら分からないが、どうにか探し当てるように
生涯をどう区切るかは難しい。時間で? エピソードで? あるいは個人とはまた異なる存在である社会の変遷に伴って? つまり、元号が変わったら僕も新しいステージを迎える、みたいに。
総合して考えてみると、僕は今、生涯において〈幕開きから数えてその次のステージ〉に立っているだろう。果たして観客が存在するか、それは定かではないが。
さて、僕の第一のステージが
でも不思議と羽ばたくその日を心の底から楽しみにしているんだ。もちろん不安はある。羽化に失敗すると羽が広がらなかったりして、飛べずに死を待つだけという最悪の状況に陥ることもあるのだ。でも、そもそも僕たちモンシロチョウは卵の時期も含め成虫になれるのは(データにばらつきはあるが)0.6〜3%とも言われていて、要はダメ元だ。勇気を出して飛び出そう。……あ、僕が蝶は蝶でも種類でいうとモンシロチョウであることはお伝えし忘れていましたね。いつかあなたに僕の白くて綺麗な羽を見てもらいたいものです。
たまに、