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通信通信

 函館市のホテルで伝書鳩パーティが開かれた。諸国の著名な飼い主が親睦を深める……のが建前だが、互いをライバル視しているためハシビロコウ——という鳥がいる——のように彼らの目つきは鋭い。


「半年前にな、アルハンブラ宮殿の庭からモン・サン=ミシェルの尖塔までウチの鳩が飛んだよ。まさに長旅だからトリップではなくジャーニーと呼ぶに相応しいじゃないか」

「距離の話をするならこっちも黙ってないよ。俺はオーストラリア人だがね、パースからブリスベンまでウチの鳩が手紙を運んだ。あの広漠な大陸を横断したというわけさ」


 その瞬間、窓から1匹の鳩が飛び込んできた。そう、伝書鳩だ。足に括り付けられた手紙には……

「諸君、招待されたのにパーティに参加できなくて申し訳ない。どうしてもスケジュールが合わなくて。ところで、この手紙を読んでいるということはウチの鳩が日本に辿り着いたということだ。放鳩したのは地球の裏側、ブラジルはサンパウロでね。いやあ、これぞまさにといったところか。それでは、チャオ!」

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