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第12話ー本領発揮ー

車で向かっている時に慶一さんに聞く。


「で、どこまで行くんです?」


慶一さんは真っ直ぐ前を向いて言う。


「東条の家だ。」


東条と聞いて驚き、そして笑う。


「幸成か。」


言うと慶一さんが驚いて俺を見る。


「知ってんのか。」


俺は笑う。


「慶一さんに前、話した事ありますよね?俺の家は日本舞踊の家本だって。それが東条です。」


慶一さんが言う。


「でもお前の苗字、東条じゃねぇだろ。」


俺は笑う。


「俺の苗字は母方のです。東条の家を出たので。」


俺は溜息をついて言う。


「俺の母は東条の妾だったんですよ。日本舞踊やってて東条に目を付けられて、無理矢理妾にされたんです。俺は妾の子、幸成は正妻の子。酷い扱いでしたよ、俺も母も。だから俺は母を連れて東条の家を出たんです。母は死ぬまで東条への恨み言を言ってました。東条への恨み言を吐き捨てて死んだんです。」


慶一さんが聞く。


「で、その家に向かってる訳だが、お前、やれんのか?」


俺は笑う。


「願ったり叶ったりですよ、滅べばいいんです、あんな家。」



門の前に到着する。俺は皆に言う。


「あんまり手は使うなよ。俺たちは大工だからな。」


それぞれに木刀やらバットやらを持っている。


「行くぞ。」


俺が歩き出すとアツシが走り出す。それにリョウタとオサムが続く。既に数人の用心棒らしき男たちが構えている。


「慶一さんに道を開けろー!」


リョウタが叫ぶ。


「道は分かります、キョウコさんはおそらく屋敷の一番奥に居ます。俺が案内します。」


ダイスケが俺の横で言う。


「あぁ、頼む。」



俺は部屋に入る。東条は後ずさりしながら言う。


「有り得ない、ここは屋敷の一番奥だぞ?ここまで何人居たと思ってるんだ。」


俺は笑って言う。


「さぁな、なぁ?」


後ろに聞くと後ろからダイスケが姿を現す。


「さぁ何人でしょうね、ざっと150か、200か。」


ダイスケの姿を見て東条が驚愕している。


「150でも200でも、俺らの相手にはならないです。あんなカス共集めても意味無いんですよ。」


既に他の仲間たちも集まり始めている。


「に、兄さん…」


東条が言う。


「幸成、久しいな。」


ダイスケがニヤッと笑う。


「何で、兄さんが…」


ダイスケは俺の少し後ろに控えて言う。


「俺はこの人に拾われたんだ。この人のお陰で真っ当に生きてる。お前と違ってな、幸成。」


ぞろぞろと仲間たちが顔を揃える。


「坊ちゃん…駄目ですよ…コイツら、あの狂獣じゃないですか!」


用心棒が言う。


「狂獣?何だよ、それ!」


東条が用心棒に聞いている。狂獣か、懐かしい響きだな。


「ここいらで暴れて手の付けられなかった連中の事ですよ、すっかり鳴りを潜めてると思ってたら!」


ガタガタと用心棒が震えている。


「手が付けられないって!どういう事だよ!」


用心棒は真っ青になっている。


「そのままの意味ですよ、ガキでカタギの癖に強過ぎてヤクザにも一目置かれてたんです…噂じゃ組一つ潰したって…」


俺は笑う。


「そんな事もあったなぁ、なぁ?」


ダイスケがニヤッと笑う。


「そうでしたっけ?覚えてません。」


用心棒が東条に言う。


「と、とにかく!俺は降ります!こんな奴ら相手にしてたら命が幾つあっても足りない!」


逃げようとする用心棒を東条が捕まえる。


「ダメだ!お前は俺に雇われた用心棒だろ!逃げるなんて許さん!」


用心棒は東条を振り払う。


「金で雇われただけだろ!アンタに通す義理なんかねぇんだよ!」


俺は言う。


「話はついたかよ?逃げるなら逃げな?ケツ捲って逃げる奴なんかに興味はねぇよ。」


一歩踏み出すと用心棒が逃げる。東条は腰が抜けたようにその場に尻もちをつく。


「キョウコ。」


呼ぶとキョウコが立ち上がる。


「はい。」


返事をするキョウコに言う。


「来い。」


言うとキョウコがトタトタと俺の所に来る。


「キョウコちゃん!」


東条が叫ぶ。俺を見上げているキョウコはもう目をトロンとさせている。


「何だ?その格好…似合わねぇな、脱げ。」


言うとキョウコが頷く。


「はい。」


返事をしたキョウコは服を脱ぐ。


「キョウコちゃん!そんな!人前で服を脱ぐなんて!そんなはしたない…!」


東条が叫んでいる。キョウコは着ていた服を脱ぎ捨て下着姿になる。俺が抱き寄せるとキョウコはうっとりと俺を見上げる。


「良い子だな、後でめいいっぱい可愛がってやる。」


言うとキョウコが返事する。


「はい。」


ダイスケが自分が着ていた羽織を脱ぎ言う。


「これを。」


ダイスケがキョウコに掛ける。キョウコの頬に触れる。


「キョウコ、待ってろな、カタ付けて来る。」


キョウコは俺を見上げて返事する。


「はい。」


俺は歩き出す。東条は尻もちをついたまま、後ずさりする。


「こ、こんな事!許されないぞ?け、警察に!通報する!」


俺は笑う。


「警察に何て言うんだよ?男ボコって女を恐喝、拉致して監禁したらボコられましたって?お前の頭イカれてんのか?」


後ずさりしながら東条が言う。


「逃げる奴に興味無いんだろ?キョウコちゃんは諦める!そんな女要らない!だから、」


俺はそこで木刀の鞘を抜く。眩いばかりの日本刀が現れる。


「だから?命は助けてくれって?」


日本刀を東条に向ける。


「お前は別だ。」


俺は振り被って日本刀を振り下ろす。東条の服が切れてその肌に傷が付く。


「腕が鈍ったな。」


東条は胸から下半身まで俺に服を切られた事で肌が露出している。だらしないそれは小便を垂れ流している。


「怖くて小便漏らす奴なんか切れるかよ。」


俺は笑って日本刀を納め、東条に聞く。


「ご当主様はどこだ?」


東条は泣きながら言う。


「父は、書斎だ…」


俺は東条に背を向けて言う。


「アツシ!捕まえとけ。」


アツシは笑って言う。


「あいよ。」


俺はキョウコに近付き、抱き寄せると口付ける。唇を離してキョウコに言う。


「もう少し待ってろ。」


キョウコが頷く。


「はい。」


キョウコを離して歩き出す。ダイスケが俺の横に来る。


「案内します。」


後ろでアツシが聞く。


「コイツ、殴っていい?」


俺は笑う。


「好きにしろ。」



書斎の扉を蹴破る。中に入って驚いた。ご当主様は椅子に括り付けられていて、口をテープで塞がれていた。それを見て笑う。


「つくづく、縛るのが好きなんだな、お前の弟。」


言うとダイスケも笑う。


「知りませんよ。」


俺は驚いているご当主様に近付いて、口に貼ってあるテープを剥がす。


「何だ、お前たち、誰だ!」


ご当主様は俺を見て、横にいるダイスケを見る。ダイスケを見た瞬間に言う。


「大輔か。」


ダイスケはニヤッと笑う。


「ご無沙汰してます、父さん。」


ご当主様が言う。


「何でもいい、解いてくれ。」


俺もダイスケも動かなかった。


「アンタ、いつから縛られてる?」


俺が聞くとご当主様が言う。


「もう丸一日こうだ。」


なるほどね、と思う。じゃあこれはあの男一人でやった事か。


「大輔!息災だったか、心配していたんだぞ?幸成はもうダメだ、使い物にならん、お前、うちに戻って来い、お前を次期当主に据えてやる。」


ペラペラ喋るご当主様に苛つく。


「ペラペラ、ペラペラと…うるせぇんだよ。」


ダイスケの声が低い。あぁ、これは相当だな、と思う。


「俺はここを出てった身の上だ、今更戻るなんて有り得ねぇ。俺はこの人に付いてる。この人の下でこの人を支えて生きて行くと誓ったんだ。」


ダイスケは俺に会釈して聞く。


「慶一さん、俺に任せて貰えますか?」


俺は笑って言う。


「好きにしろ、俺はご当主様にご挨拶しに来ただけだ。」


俺はご当主様に背を向ける。背後でダイスケが動き出す。ベシッと何かを殴る音、ガシャンと椅子が倒れる音、止めてくれという懇願の声、グシャッという何かを踏み抜いた音…。ドスッドスッという音が数回して、ダイスケが戻って来る。


「お待たせしました。」


俺は腕を組んで聞く。


「気が済んだか?」


ダイスケは蔑むように言う。


「殺っても意味無いんで、止めときます。」


俺は笑う。


「違ぇねぇ。」



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