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Crybaby
オデットオディール
恋愛現代恋愛
2024年10月25日
公開日
45,634文字
連載中
土砂降りの雨の中、出会った二人…。

慶一はヤンキー上がりのチンピラ大工。仲間と共に片田舎で大工をしながら代り映えのない毎日を送っていた。ある日、仕事帰りに雨に降られ、軒先で雨宿りをしていると、そこに駆け込んで来た喪服を着ている女。儚げな雰囲気、彼女を包んでいる悲しみを感じて放っておけなかった慶一はコンビニまで走り、傘を買い、彼女に渡す。

「一緒に入りますか?」

そう問われ、彼女を彼女の家まで送る。

泣き虫な彼女と全ての事から彼女を守ろうとするチンピラ大工の溺愛ストーリー。

第1話ーキョウコー

風呂から上がって下着を履いて浴衣を羽織って出てくる。帯はせずに前を肌蹴させ、ドスドスと歩いて部屋に入る。ドスンと座って胡座をかく。スマホに手を伸ばしてイヤホンを耳に突っ込み、通話ボタンを押す。


「ウィース。」


挨拶すると仲間がおかえりーと言う。タバコに手を伸ばした時だった。俺の前にキョウコが正座する。


「あ?」


聞いてもキョウコは何も言わない。何も言わずに俺に手を伸ばして俺に抱き着いてくる。


「おっと…」


俺は体勢を崩しそうになる。


何、どうしたよー?


仲間が聞く。


「あー、何かキョウコが抱き着いて来てる。」


言うと電話の向こう側で仲間が笑う。キョウコは俺に抱き着いて俺の膝の上に乗る。


「あー悪ぃ、何かキョウコが俺の膝の上に乗ってんだわ、1回切るわ。」


おー、了解ー


仲間が言う。通話を切ってイヤホンを外す。


「何だよ。」


言ってもキョウコは何も言わない。ただ俺に抱き着き、そして口付けて来る。


「ん…」


口付けながらキョウコを支える。唇を離して聞く。


「何だよ。」


キョウコを見るとキョウコは泣いている。


「は?何で泣いてんの?」


キョウコは俺を見上げて言う。


「慶一さん…」


ポロポロと泣くキョウコを見て舌打ちする。


「チッ」


俺はキョウコの手を掴んで立ち上がる。キョウコを連れて部屋を出る。ドスドスと廊下を歩いて奥の部屋に行く。襖を開けて部屋に入る。真ん中には布団が敷いてある。そこへキョウコを連れて行くとキョウコはペタンとそこに座る。戻って襖を閉める。布団に座るキョウコを押し倒す。キョウコは俺に手を伸ばして俺の首に手を回す。


「何だよ、どうした?」


聞くとキョウコは小さな声で言う。


「慶一さん、私と別れるの…?」


そう聞かれて驚く。


「はぁ?何言ってんの?お前…」


キョウコは泣きながら言う。


「だって昨日、電話で話してた…」


そう言われて思い出す。


「あぁ、あれか。あれ、聞いてたんだ、お前。」


昨日、仲間内でワイワイ話してた時にそんな事を話した気がする。もし付き合ってる女と別れたら、別れるなら、そんな話。


「私、別れたくない…」


キョウコが言う。俺は聞く。


「別れたくねぇの?」


キョウコは涙を流しながら頷く。あーヤバい、めっちゃ可愛い。


「お前が俺の事、こんなに好きなのに、別れる訳ねぇだろ。」


違う、そんな事言いたい訳じゃない。


「ホントに…?」


そう聞くキョウコが堪らなく可愛い。


「別れねぇよ、俺と別れたらお前、生きて行けねぇだろ。」


違う、ちゃんと言え、俺!俺はキョウコを抱き締めて言う。


「愛してる…頭ん中、お前だらけだよ…」


キョウコは泣きながら俺にしがみつく。キョウコの頭を撫でる。


「大丈夫だよ、離れねぇよ、ずっと一緒に居る。だから泣くな。」



「寝てて良いぞ。」


そう言って俺は下着を履き、浴衣を羽織って部屋を出る。ドスドス歩いてリビングに戻る。ドスンと座ってタバコに火をつける。イヤホンを耳に突っ込み通話ボタンを押す。


「ウィース。」


挨拶する。


おー、おかえりー


仲間が言う。別の仲間が聞く。


何だよ、落ち着いた?


「あぁ、まぁ、抱いたら落ち着いた。」


言うと仲間が冷やかす。相変わらず熱々だなー云々。仲間が言う。


っつーかさ、ホントお前らよく続いてるよなー

全然タイプ違うのになー


トタトタと足音がしてキョウコがリビングに来る。キョウコは俺の傍に来て座ると俺に手を伸ばして俺と手を繋ぐ。


「あー、まぁな。」


俺がそう返事をすると仲間が言う。


お前、キョウコちゃんにゾッコンだもんなー

バーカ、キョウコちゃんが慶一に惚れてんだろ


俺はキョウコを引き寄せて言う。


「寝てて良いぞ。」


仲間がん?と言う。俺は少し笑って言う。


「あ、いや、キョウコが俺んとこ来てるから。」


キョウコが横になる。近くにあった座布団を丸めてキョウコの頭の下に入れてやる。


「待ってな。」


そう言って頭を撫でてやり、立ち上がる。ドスドス歩いてさっきの部屋に入り、タオルケットを持って戻る。横になってるキョウコにそれを掛けてやる。元居た場所に座り、灰皿の上に放置したタバコを吸う。キョウコが手を伸ばして来て俺の足に触れる。


キョウコちゃん、寝てんのー?


仲間が聞く。


「あー、何か隣で寝てる。俺の足に触ってるわ。」


仲間がまた冷やかす。



仲間の言う通り、俺とキョウコはタイプが全く違う。キョウコは良いとこのお嬢さん。俺はヤンキー上がりのチンピラ大工。俺とキョウコが出会ったのは今から2年前。暑い夏の夕暮れ。土砂降りの雨の中。



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