走っていった、そう、走っていったはずだった。
レイジはいきなり持っている槍を大きく振りかぶり……
「……あー、やっちまったなァ!?」
レイジはそう言ってあーっはっはっはと大きく笑っている。
しかし急に真剣な顔つきになり先程とは明らかに違う、スピードで走り、投げた槍の方に走り出した。
「ねぇ、キョウちゃん? レイジってもしかして強い?」
「そうだねぇ~? ちょ~っと思ってたより、強いかも~?」
キョウちゃん曰く、バジリスクは目と目が合えば、たちまち身体が石化していく魔物で、対処法は目を合わせないこと、だけどそれをゲームを初めて間もない私たちにはとても難しい事……らしいが、レイジは難なく撃破してみせた。
「なるほどねぇ~? 確かに気づかれる前に倒しちゃえば目が合うこともないもんねぇ~」
「でも外しちゃえば……」
「外す訳ねェだろ、俺が」
いつの間にかレイジが槍を担ぎ戻ってきていた。
「俺は外さねェ、狙った敵は必ずぶっ飛ばす」
レイジのその絶対的な自信……いや自信と言うよりも何かに誓っているようにも思えたが、まだ私にはその思いを聞けるだけの距離にはいないだろう。
きっとレイジもレイジなりに現実で色々とあったのだろうから。