準備を整え終えた、私たちはついにこの街から出て弟分が飛んで行った南の方向、砂漠地帯へ向かう。
「砂漠かぁ、やっぱり暑いのかな?」
「まぁ砂漠だしねぇ~? 暑いと思うよ~?」
やっぱり暑いかー、あんまり暑いのは好きじゃないけど、しょうがない。
「おい、そういえばアカデミーの受付でクエスト受けてたな? どんなクエストなんだ?」
街から出てしばらく歩いていると不意にレイジが聞いてきた。
「ん~? 捜索に時間を割くから比較的簡単なのだよ~?」
……絶対簡単じゃないやつだろうなぁ、私はこの数日の経験からそれを察した。
「ふゥーん? まァ俺も多少は手伝ってやるよ」
そういえばレイジの実力ってどうなんだろう?
初日にこそ同じ高級旅館にいたのだが、強いのだろうか?
「その目は俺の実力を疑っている目だな? 俺だって不意をつかれなければそこそこは……」
「でも私に吹っ飛ばされちゃったし……」
言葉の途中で私は話を遮る。
「女の子にあっさりと飛ばさちゃったもんねぇ~?」
キョウちゃんも追い打ちをかける。
「う、うるせぇ!! わかってるんだろッ!? それなりの実力が無いと初日からあんな旅館に泊まることは出来ねェって!!」
「でも実力私たち知らないしー?」
「うんうん、知らないし~?」
女の子2人に口で負けるとわかったのかレイジは顔を俯かせ肩をわなわなと震わせている。
「……わかった、わかったよ、お前たちの挑発ににってやらァ、どの魔物をどんだけ狩りャいいんだ?」
お、さすが男の子話がわっかるー!
「えっとねぇ~、砂漠地帯にいるトカゲっぽい魔物を……10体でいいよぉ~」
すかさずキョウちゃんがこたえる。
「おい、おいおいおい? そりゃァもしかして、バジリスクとかって言わないよなァ?」
「え~? あ~、そう書いてあるね~?」
「ふざけんな!! 流石に1人でバジリスク10体は無理に決まってるんだろ!!」
「え、でもレイジ任せろって……」
私はすかさずレイジの前に躍り出て両手を前で組み、上目遣いでレイジを見る。
「レイジなら、できるよね? か弱い女の子2人に戦えとか言わないよね……?」
ここで若干、瞳を潤ませるのがポイントだ。
あざとい女子ポーズ1度やってみたかったんだよねー!どうだ?これでどうくるレイジ!?
「ぐっ……わかった……わかったよ、やるだけやってやらァ……」
堕ちた。
レイジはあざと女子に弱いっと。
「ノゾミちゃん~? 流石にこのトカゲさんを1人は無理だからね~? レイジくんに無茶させたら、めっ! だよぉ~?」
「え、そんなに強い魔物なの? レイジ……ごめん」
「強いって言うか、厄介……なんだよね~」
「もしかしてノゾミは何も知らなくて無茶振りしたって言うのか……」
「え? うん」
キョトンとした顔で答えるキョウちゃんとレイジは顔を合わせ、首を振る。
「ノゾミちゃん~? 少しは自分で調べないとダメだよ~? それに私以外の人に魔法少女化がバレると面倒になるからレイジくんと行動しているうちは普通に戦わなきゃなんだよ?」
後半部分はレイジに聞こえないようにそっと耳打ちで教えてくれる。
「あ、そっか、気をつけないと……だね」
私も小声で返事をする。
「で、どうするんだ? 複数体相手にするのならさすがにキチィけど一体だけならなんとかなるぜ?」
レイジがそういった目の先には砂漠が広がり、ちょうど緑と砂漠の境目に一体のトカゲがいた。
「ま、俺の戦い方を見て今後の参考にしてくれ、一緒に戦えるか、それともただのお荷物係にするか……をな!」
そう言ってレイジは1本の槍を手に取り、トカゲに向かって走っていった。