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闘技場

 そこは外からでもわかるくらいに会場……もとい闘技場内は盛り上がっているのがわかった。


「まぁNPCといってもこの世界で生きている人だし、娯楽が少ないからねぇ~?」


 そう言って受付の方へふらふらと向かうキョウちゃん。


「キョウちゃん、待って?」


 私は笑顔でその腕を掴んでキョウちゃんの動きを止める。


「な、なにかなぁ~?」


 明らかに視線を泳がせ、目を合わせようとしない。


「今日の受付は私も一緒に行くから、ちゃんと説明してね?」


 にこやかにそう告げる、そうしないと昨日みたいにとんでもない内容にエントリーされかねないからだ。


「あはは~?」


 バレてたか~みたいな表情になるノゾミちゃん。


「うん、大丈夫だよ~、今日は昨日みたいなことはせずにちゃんと"私たち"なら倒せる相手を選ぶから~」


 なにか引っかかる言い方だなぁ?まぁそこまで言うなら大丈夫かな?今回はちゃんと2人で戦うってことだし。


「あ、そうだノゾミちゃん、そういえばどうしようか~?」

「え、なにが?」

「戦い方だよぉ~? 普通に戦うか、あの体操服状態になるか」


 キョウちゃんの目がいつもより真剣な目になっている、多分これは今後の戦い方にも影響があるってことだろう。


「ん、普通に戦おう、あの状態はどうしても目立っちゃうし、普通でどれくらい戦えるかもわかっておいて損は無いだろうし」

「じゃあその状態でのいい感じの魔物でエントリーしておくね~」


 ――――――

 そう、そう言ったハズだ、お互いにきちんと話し合い、きちんと分かり合えていた。

 私は信じていた!!

 な!!の!!に!!


「なんで目の前にあんなのがいるんだろうねぇ!!」


 と、指をビシッと突きつける。


「ノゾミちゃん……今はそんなこと言ってる場合じゃないし、よそ見してると危ないよ」


 いつものほんわかしている空気では無いキョウちゃん、目も真剣で目の間にいる相手から逸らさない。


「誰のせいでこうなってるのかな!!」


 私は肩で息をするくらいに精一杯怒鳴っている。

 闘技場のど真ん中に位置取り、観客席からは声援が地響きのように鳴っている。


「キョウちゃん……終わったら覚えておいてね?」


 私はそう言って、目の前にいる相手に向き直り、両手で十字架鈍器を持つ。


「Grrrrr」


 目の前の相手は言葉の代わりに獣の言葉を発する。

 そう、ドラゴンだった。

 だがその竜は鉄格子に入れられているが、翼はもがれ、身体中から血が流れていて、満身創痍であることがはっきりとわかる。


「キョウちゃん、さすがにあの子を相手にするのは可哀想だよ……」

「じゃあ、どうする? 変わりに私たちがあの子に食べられちゃう?」

「そんな話はしてないでしょ!!」


 あー!いつものキョウちゃんの様子が違うのもあって調子が狂う。

 調子が狂ったままでも相手は手負い、かつお腹も空かせているのであろう激昂しているのが目に見えている。


「……キョウちゃん、私、あの子助ける」

「えぇ!? ノゾミちゃんさすがにそれは無理だよぉ~?」


 私の発言があまりにも突拍子なかったのかキョウちゃんはいつもの調子に戻る。


「どうせこの子に勝てばお金いっぱい手に入るんでしょ? 昨日の分と合わせて事情説明して買い取るよ、お金が足りないなら足りるまでここで私が見世物戦い続けるだよ」

「うう~ん……買い取れたとしても問題は竜が私たちに懐くかどうかと、竜と一緒にいて問題がないかどうかだけど……」


 キョウちゃんがなにかぶつぶつ言ってるがもう気にしない、私はやることを決めた。

 なら後はやるだけだ。


「……ごめんね、ちょっとだけ痛いかもしれないけど、明日……ううん、これからのために我慢してね?」


 そう宣言して、私は十字架を再度構え直す。


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