濃い一日だった。
そう、今まで生きてきた中で1番とも言えるくらいに。
目が見えることに感動し、自分の思い通りに身体を動かすことができ、そして怖かったけど、ファンタジーの醍醐味であるモンスターとの戦い、そして夢の1つでもあった全力疾走。
それもこれも一緒に来てくれると言ってくれたキョウちゃんのおかげで叶えることが出来た。
「お~い、ノゾミちゃん? 感傷に浸っちゃってる?」
さらには一生泊まれることなんかないだろう超高級な旅館の手配までしてくれ、さらに今はその旅館内にあるプールにまで連れてきてくれた。
「お~い、ノゾミちゃんってば~?」
もう、キョウちゃんったら、せっかく人がこの濃かった1日について感傷に浸っているのに、それにしてもプールっていいねぇ~、ぷかぷかと浮き輪に乗って浮かんでいるだけでも気持ちがいい。
「う~ん、悪いんだけど、邪魔しないでくれる? 今この子すっごく楽しんでいるみたいだから……さ?」
うんうん、すっごく楽しいよ~、ありがとうノゾミちゃん。
「はぁ!? そんなの関係ねぇーよ!!」
「そうだ、そうだ!! 俺たちがお前たちを可愛がってやるって言ってるんだから、つべこべ言わずに着いて来ればいいんだよ!!」
……うるさいなぁ、せっかくのいい気分が台無しだよ。
「えぇ~? あなたたち変態……なの? こんなスクール水着を着ているような女の子2人に対してその言い草って、流石に私でもドン引き……だよ~?」
「う、うっせーよ!! べ、別にスクール水着が好き……だとかじゃないからな!!」
「あ、兄貴!! 微妙に本音が飛び出てますよ!!」
「うんうん、わかったわかった~、
ね? 痛い目見たくもないだろうし、せっかくこんないい所に泊まれるだから、騒ぎ起こさない方が良いんじゃない? 追い出されるよ~?」
あぁ~ぷかぷかがいい気持ち~。
「い、痛い目ってなんだよ!? お、女の、そんな非力そうな身体で俺たちに勝てると思ってるのか!?」
「そうだそうだ!! 黙って俺たちに付いてこい!!」
はぁ……もういい加減うるさいなぁ……せっかく人がいい気持ちになっているっていうのに。
「キョウちゃん? 旅館の中って暴れちゃだめなんだっけ?」
「あ、やっと戻ってきてくれた~、普通はダメなんだけど、こういう分別を弁えない人をお仕置きする程度になら大丈夫だよ~」
「そっか、そっかー、じゃあ……お兄さん達? 邪魔しないで?」
そう少しだけ凄みを出し、お兄さん達を睨みつける。
「私たちが"言葉"で言っているうちにどこかへ行って?」
気圧されたのか若干しり込みしつつも
「う、うるせぇ! 俺たちを誰だと思っているんだ!」
「そうだそうだ!」
今日始まったばかりのゲームなのにわかるわけないじゃん?
「そう、わかった"言葉"でわかってくれないならあとはもう……」
そう言って、私はプールサイドへと立つ。
「うひょー、あ、兄貴! こいつもスクール水着とはいえ、なかなかですぜ!」
ぷちっと頭の中で何かが切れたおとがきこえた。
「あ、ノゾミちゃん、やりすぎは……」
キョウちゃんが何かを言い切る前に私は子分であろう男を問答無用で殴り飛ばした、そう星になるくらいの勢いで。
「さて、あなたはどこまで飛んでいきたい? どこまで飛んで、どうなったとしてもこの世界では"記録"している街に戻れるもんね?」
「ひ、ひぃ!?」
後ろを向いて逃げ出す男を問答無用で殴り飛ばす。
どこまで飛んだかはわからないが、別々の方向へ飛ばしたのだ、当分は静かになるだろう。
「あぁ~……ノゾミちゃん、やりすぎ……」
「だってしょうがなくない? 私たちみたいな学生に手を出そうとしてるくらいなんだし?」
自業自得ってものでしょ。
「さ、キョウちゃん、次はお風呂行こう、お風呂ー! なんでも天然露天風呂らしいじゃん! 水着のままでおっけーみたいだし、プールと直結してるし、いくよー!」
「……まぁ、いっかぁ~、うん、今日はとことん楽しもう~!」
その後、行方知らずとなった男たちの分の宿泊費を正当防衛とはいえ、ぶっ飛ばしてしまったため、請求された。
お金に困っていないとはいえ、解せぬ。