未だ、会場はどよめきを残している。
「え、あの子なに?
「このゲーム始まったばかりだよな?」
「圧倒的じゃない……」
などなど信じられないと言った具合で遠巻きながら声が聞こえる。
(大丈夫! 私自身が1番意味わかってないから!!)
なんだろう?あのオオカミさんたちと戦った時みたいな感じにはなったけど、こうも簡単に勝てるものなのだろうか?
あれこれわからない頭で考えているとキョウちゃんが近づいて来た。
「おめでとう~、ノゾミちゃんならやってくれると思っていたよ~」
そうにこやかに声をあげる。
「さて、行こうか? 賞金と特典を貰いに~」
キョウちゃんは満面の笑みだ、私が走る前に見せていた影の入った顔つきは今はもうない。
「ん? 賞金はともかく特典って?」
「んふふ~、お楽しみ~」
そう言って私は競技場の受付まで引っ張られていく。
受付に着くまでの間も遠巻きにみんなに見られている気がする。
「ね、ねぇ、キョウちゃん? みんなに見られているから引っ張られるのはちょっと恥ずかしい……」
「あ、ごめんごめん~、私もちょっと嬉しくってさ~?」
キョウちゃんをここまで楽しみにさせる賞金はもちろん、特典ってなんなんだろう?
受付にたどり着いた私たちを待っていたのはさっきのオオカミを倒した時の比じゃないお金。
あ、あれ?もうこれだけあればそうそう無くならないんじゃない?
「この賞金は規定に定められているタイムに基づき支払われる、賞金になります」
えぇ……?これはドン引くよ……?私の背中に冷や汗が流れる。
「またこちらの用紙に記入をお願いします」
そう言って差し出された紙には"同競技における挑戦権の徴収権"と書かれていた。
「えっと、これは?」
「同競技においてタイトルホルダーには同じ競技が行われる度に一定の額がお支払われる決まりと待っています、なおこの期限はタイム更新がなされるまでです」
……えっと、つまり何もしないでもこれから一定の額が手元に入ってくる?
「分け前は半分こ♡だよ?」
「……えぇ? 半分はとりすぎじゃない? もう少し遠慮……しよ?」
理解が追いつかないままになんとかキョウちゃんに返事を返す。
「まぁ冗談はさておき、これで当面の資金の心配と泊まるところの心配はなくなったねぇ~、ノゾミちゃんありがとう~」
「んー、うーん?」
未だ頭が働かない私であったがまぁいいかと、気持ちを切り替える。
「さってと~、せっかくだし1日目だし、お金もいっぱいある、いいところに泊まろう~! ……明日からは普通にするけどね?」
「まぁいっか、一緒に行くって決めたもんね、今日だけは贅沢しちゃおうー!」
そう2人で笑い合いながら競技場を後にする。