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第2話:十二界・一万二千年の修行

 気がつくとカイは、異世界の神秘的な空間に立ちすくんでいた。


 さっきまで学校の古びた部室にいたはずなのに、目の前には見たことのない、まさに異世界の光景が広がっている。


 呆然としているなかで、頭の中に冷静な声が響き、この場所が『神の資格』を得るための修練の場だと告げられた。


 ——殴られてでも抵抗して、あの部室に入らなければ、こんな事にはならなかったのに。


 カイは過去を振り返りながら、絶望と後悔を繰り返していた。


 すると再び『声』が語りかけてくる。


『さて、君は神としての修行を始めることになるのだが。まず最初は鍛錬に耐えうる基礎体力づくりだ』


「き、基礎体力づくり……?」


 カイはポカンとして声を聞き返した。状況もわからず、次々と訳のわからないことが起こる。ここが「神の修行場」だとしても、普通の人間が耐えられるとは思えない。


 「ちょっと待ってください!そもそも人間がどれだけ鍛えたって、神なんかにはなれないんじゃないですか?!世界一のアスリートが一生努力したとしても、漫画のヒーローみたいには絶対なれないのに!ましてやボクが神になんて無理ですよ!」


 カイの混乱と叫びに、部屋の声は静かに返す。


『それは人間の寿命がせいぜい100年程度しかないからだ』


「だから無理ってことじゃないですか!」


 カイはまるで勝ち誇ったように言い返すが、声は動じずに冷静な説明を続けた。


『ここでは寿命による限界は存在しない。君は歳を取らず見た目も変化しない、修行が続く限り若いままだ。』


「え……それってどういう――」


『つまり、これから君には1000年間、第一界の修行、基礎体力づくりを行ってもらう』


「1000年の基礎体力づくりだと……」


 カイは自分が聞いた内容を反芻し、理解するのが遅れる。しかし、次の説明はさらに衝撃的だった。


『ここでの修行は『十二界』に分かれている。それぞれの『界』で1000年ずつ、合計12000年の修行を終えた時、君は神の資格を得ることになる。』



 すると目の前の空間に、『十二の界』からなる修行の内容が示される。


 一界:基礎体力づくり

 ・肉体の限界を超える持久力・筋力を養う


 二界:動物との融合

 ・動物特有の鋭い感覚(視覚・嗅覚・聴覚)を身につける


 三界:自然との調和

 ・風・火・水・地と調和し、エネルギー操作を習得


 四界:知識と知恵の習得

 ・神話・戦術・歴史を学び、高度な知識と戦略眼を養う


 五界:精神と魂の鍛錬

 ・幻覚や恐怖に耐え、強靭な精神力を得る


 六界:空間認識と瞬間移動

 ・空間を自在に認識し、瞬間移動能力を習得


 七界:エネルギーの吸収と変換

 ・周囲のエネルギーを吸収・変換し、攻防に活用


 八界:攻撃技術の極限化

 ・近接戦・遠距離攻撃・霊的攻撃など多彩な戦闘術を習得


 九界:治癒能力の獲得と肉体の再生

 ・細胞レベルで自己再生する治癒能力を身につける


 十界:未来視と予知能力

 ・宇宙の理を知り、戦況を予知し、先を読む力を得る


 十一界:創造と破壊の力

 ・物質創造と存在消去の力を操る


 十二界:神の心と意思の獲得

 ・神としての使命を悟り、究極の覚醒を果たす



「1000年が12項目で……12000年の修行!?え、えええええっ!?わぁぁぁ!無理だ無理無理、人類の文明だってもっと短いだろ……!」


 声はカイの驚愕をまったく気にせず、淡々と続ける。


『君は歳を取らないが、修行で得た体力、知性、精神は、しっかりと蓄積されるから心配はいらない』


「いやいやいや、そんな問題じゃないですよ!12000年も修行をしてたら、絶対に頭がおかしくなる!」


 すると、声はカイの嘆きに対して少し考え込んだように答えた。


『君はストレス耐性においては人類で最大値を持っている。まあ、他の能力はすべて平均以下だが、ここで重要なのは耐える心だ。問題はない』


「ストレス耐性が最大値って、そんなわけあるか!」とカイは叫び返すが、すでにその声は聞こえていない。辺りが静かになり、目の前の空間がゆっくりと変わり始めた。


 異次元のようなその空間で、第一界〜1000年間の基礎体力づくりが今、始まろうとしていた。





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