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第19話 カレシいる?


 あの後? まぁカレンと口論になり、伊織と響子が止めに入って三和があきれて、笑い出す響子っていう、おかしなことになりました。


 そんなことがあった二日後、俺と伊織、響子と三和の四人でその二人と待ち合わせする場所で待っている。ちなみにカレンがいないのは「アイドル業が忙しいから」だそうで、俺との口論はまったく関係ないらしい。現に俺のケータイには「状況は教えてネ(^^)」って顔文字入りのメールが来てるから。


 ここは俺達義兄妹の住んでる場所から駅二つ分だけ隣の場所で、どちらかというとカレンや響子たちの家や学校に近い。要するにこの辺一帯は清桜せいおう学園の生徒たちが多い場所なのだ。

 その学校の近くの噴水のある公園内で俺たちは待っていた。


 少しの間日常会話をしていると、そろいの制服で歩いてくる二人の女の子が遠目から見えた。

「あ、来ました。お~~い!! こっちこっち!!」

 歩いていた二人も気づいたようでパタパタと走ってくるのが見える。

 俺には遠目に見えた時点で顔までは見えなかった。やっぱり運動してる人ってすげぇなぁって感心した。

「えと、紹介します。この髪の長い子の方が遠野弘子とおのひろこ。で、髪の短い方が妻野裕子つまのゆうこ二人とももちろんバドミントン部です」

 二人ともペコっと挨拶したけど、なるほど見るからにあまり体調は良くなさそうだ。特に遠野という子はもう青白い顔をしている。そして大事なのは二人から同じ感覚がする。

 間違いなくこの二人はその影響下にあるみたいなんだけど。確かに感覚はするんだけど……直接的にいてるとかじゃないみたいで今は対処できそうにない。


「今日はここまで来てくれてありがとう。体調はどう?」

「えと……あなたが藤堂くん?」

 と遠野。

「なんかちょっと……」

 と妻野。

――う~んその先を聞きたいような、聞きたくないような。言いたいことは何となくわかってしまうのが悲しいなぁ。

 俺の複雑な表情で気持ちを察してくれたのか響子が繋ぎをいれてくれた。


「あの、今日はお話を聞かせてもらえるのよね?」

 その瞬間に、二人の表情が初めての挨拶をした時よりも明らかに曇っているのが分かった。

 二人は顔を見合わせて更に曇らせる。

 ここで立ち話もと思い、どこか落ち着いて話せる場所が無いかと三和に尋ねると、近くに喫茶店があるというので、そこに移動してから改めて話を聞くことにした。

 移動の隊列の最後尾でついて歩いていた俺と伊織。移動中も二人の様子を見ていたが、かなり周りを警戒していてなんだかかわいそうになった。

 5分程度歩いて着いたのは、少しかわいい感じの外観の喫茶店。間違っても俺一人だけでは入れないし、当分は誰かと二人だけとかでも入れそうにない内装もカワイイ仕上がりになっていた。

 俺もそうだけど、こういう話はあまり周りにを聞かれたくないだろうと思い、店員さんにお願いしてなるべく広くて最奥の席に案内してもらう。


 それから、ようやく二人から重いクチが開き始める。

「どこまで玲子が話したかわからないんだけど……」

 まずは遠野がクチを開いた。

「ああ、ええと、〇市に部活の合宿で行った事くらいしか知らないけど」

「そう……。ホントは誰にも言わないつもりだったんだけど、だんだん気持ち悪くなって耐え切れなかったから玲子にだけ話したんだ」

 と二人が顔を見合わせる。


「どうして三和さんになんですか?」

 伊織が紅茶を飲む手を止めて問いかける。

「だって、玲子も見てたりとかしてると思って……」


 ここまで聞いても良くわからないなぁって思っていたら、突然胸ポケットに入れといたケータイが震えだした。

 表示は[日比野カレン]、メールが来たみたいだ。

 見ると「どんな感じ?」とある。俺は「〇市に行った事くらいしかわからん」と返すと、2~3分後に「それって〇市の〇〇湖の近くじゃない? あそこには確か話あった気がする」とある。

 俺は3人に向けて聞いてみた。

「もしかして、〇〇湖と何か関係あるのかな?」

 途端に、3人の表情が眼に見えて変わったのがわかる。その様子を見て、カレンに「ビンゴ、サンキュ」とだけ返事しておいた。


「言いたくないんなら、詳しくは聞かないけどね。ただ話を聞く限りはそこに何かあるみたいだけど……」

 言いにくそうにしていた三和が二人の方に目線を送り「いいよね?」とコンタクトを取った。二人はコクンとそれにうなずく。


「実は、その湖にはそういう話があるって事は先輩から聞かされて知ってたんです。それで、いつも仲がいい5人でそれを検証しようって話になって、部活が半日で終わった日にそこ行ったんです。湖についてホントにちょっと触ったくらいなんだけど。そしたらその夜からだよね? 最初は裕子が変な声を聞いたって言いだして、その後に二人とも変なが見えたって言い始めて」

「変なって?」

「髪の毛が濡れたままの女の人……」

 そこでいったん三和が話を切り、ジュースでクチを湿らせる。


「最初は私も二人の冗談だと思ってたんですけど、最近は私にも見えるようになって。そんなときに偶然理央ちゃんの話を聞いて、響子に連絡してみたんです」

 響子の表情が少し曇った。


「ありました。お義兄にいちゃん、これがみたいです」

 伊織がさっきからケータイで何かを検索してるなって思ってたら、そんなモノを検索してたのか。

 伊織が出したケータイに顔を近づけ、そこに書かれていた内容に目を通した。


 を読んだ俺は頭に浮かんだことをそのままクチにしていた。

「その5人の中で、んですね?」


その問いかけに二人とも力なくうなずいた。


 伊織の見せてくれたサイトには画像付きのでその場所の説明がされていた。


  〇市〇〇にある〇〇湖は、[カップルまたはカレシ・カノジョがいる者が、その湖面に触るとその湖の呪いにかかる]と言われている。その昔に近所に住む男女が恋に落ち、生涯を誓い合ったが、その村同士のいさかいに巻き込まれて二人を別れさせようとした。その事から逃げるように二人で心中しようとしたのだが、女は亡くなりその後男の姿だけが見つからないままだった。女は男が逃げ出したと思いその男が来るまでその湖でまっているがなかなか現れず、次第に裏切られたと思い込み、男女仲良いモノがその場に触れる度、そのモノ達に呪いをかけている。と、サイトの紹介分には書かれていた。


「すると二人のカレシも同じ目に?」

  読み終えた俺が顔を上げ二人に聞くと……。

「それが……。彼は何ともないみたいで……」

 と遠野が。

「私の方も何ともないみたいなんです」

 と妻野。


 先ほどの会話を思い出す。

――あれ? さっき三和はこう言っていた。……私にも……と。

 なら逆に言うとは見えていなかったという事だ。この違い。遠野・妻野と三和の違いとは何か……。わからん。


「あの、失礼ですけど三和さんて彼ができたんですか?」

 伊織から質問が飛んだ。

――あ、あぁ~~~なるほど!! そういう事か!! すげぇな伊織!! 

 クチに出して言えないから、隣の伊織の頭をなでなでしてやった。 思わずやっちゃったけど、伊織も嫌がってないみたいだし、良しとしよう。


 ビックリしたような顔をして、伊織を見つめる三和。

「え? 玲子本当?」

「あ、もしかして……」

 と、きゃいきゃいはしゃぎだす遠野と妻野。こういう話の時はやっぱり女子高生的な華やかさが出るみたいだ。

「あ、うん。できたというか、裕子は知ってると思うんだけど、高校入学前に別れてた彼と、最近よりを戻したというか……そんな感じで」

  恥ずかしそうに話す三和。


「と、言う事は……その湖に行ったときはまだ彼とは付き合ってなかったって事ですか?」

「そ、そうだね。よりを戻してまだ1週間くらいしかたってないから」

「5人でいった時の後の二人ってホントに彼とかいないのかな?」

 すると三人が顔を見合わせて、妻野が答える。

「う~ん、詳しくは聞いたことないけど、今はいないって言ってたけどなぁ」


頭に浮かんだ考えをどうするか迷っていると、伊織がわき腹をツンツンするので振り向いた。

 意外と近くに伊織の顔があって、少しドキッとする。伊織が俺の顔を見上げるような形になっていたのだ。


そしてその伊織がコクンとうなずいた。間違いなく義妹いもうとなんだけどかわいいと思った。だって俺の心を読んでくれて相槌あいづちまで打ってくれたんだから。いや、もしかしたら俺が読みやすいだけかもしれないけど。


 三人で話したことで少し気が楽になったのか、その後もこの三人はこちらが質問すると、答えられるところは一生懸命に答えてくれた。


俺は実に所、この時点でこの三人はの半分程度の想しか受けていないと思っている。

  後の半分は男女でそろって行っていた時だ。そういう事件がテレビや新聞などに載らない程度のモノがまだあるかもしれない。その方面からも調べておきたい。


「三人の話は分かりました。後は俺が調べてみますんで、今日はありがとうございました」

 席を立ってお礼として頭を下げる。

「え? 調べてくれるんですか?」

 顔を上げた俺に遠野が驚いている。

「ええ、もちろん。でも少しやって欲しいこともあるし、聞いて欲しいこともあるから響子さんか伊織を通して連絡がつくようにして欲しいんですが大丈夫ですか?」

「もちろんよ。こちらから相談を持ち掛けたんだもの、協力できることはさせてもらうつもりよ」


 相変わらずのお嬢様のんびりボイスで響子が答えてくれた。さらに片目ウインク付きで。

 そうしてまとまったところでこの女子会は終了した。バドミントン部の3人は一度学校に戻るというので、その場で帰って行った。

 残った三人で今後の事を話すんだけど、聞いておかなければいけないことがある。席に戻って近くになるように椅子を戻して、飲み物をまた注文して席に腰を下ろす。


 一息ついたとき響子から声をかけられた。

「ごめんなさい。こんなに大ごとになるなんて思ってなかったから…」

「いや、大丈夫です。皆さんは見えてないからこそ恐怖の度合いが分からないでしょうけど、あまり放っておく方がまずいと思いますから。俺がどれだけできるかわかりませんけど協力しますよ」

「ありがとう。でもこれからどうするの?」

「まずはその〇〇湖に行ってみようかと思ってます」

「え?」

 響子はきれいな眼を少し見開いて驚く。


「まずはその場所で何が起きてるのかを見る必要があると思うから」

「お義兄ちゃん、ソレは私もついていくからね!!」

 食い気味に伊織が前に出てきた。

「あ、あ、うんわかった」

 それを見ていた響子が心をこめて言った。

「やっぱり伊織ちゃんは、お義兄ちゃんと一緒がいいんだねぇ」

 なんてことをいつもののんびりした口調で。

 何気ない一言だったけど伊織はかなり気になったらしく。


「い、いえあの、お義兄ちゃんが心配というか、その……」

「あ、でもね伊織ちゃん。そこに行くのなら私たちも一緒だからね?」

 この言葉には俺が驚いた。

「私達もって……でもそれは危ないい目に……」

 大きくため息ついた響子が続ける。

「シンジ君は優しすぎるよ。ソレは良い事なんだけど、なんだから、もっと頼っていいんだよ?」


 この言葉に俺は本気で泣きそうになった。


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