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幽霊が見えるからって慣れてるわけじゃない!!
武 頼庵(藤谷 K介)
現代ファンタジー都市ファンタジー
2024年10月24日
公開日
85,466文字
連載中

 「その能力を人に役立てられると信じています」
 母から言われた最後の言葉、それがいつまでも心に残っていた――。

 普通の高校生である『藤堂真司』は、幼い頃から人には見えないモノ[幽霊]が見えていた。
 
 しかしそれらの事を誰かに伝えた事はない。他の誰に話しても信じてもらえないだろうと彼は思っている。だからこそ真司は、出来る限り『普通』であり続けようと静かに暮らしていく。
 
 そんな真司の特異体質を、彼の家族は疑うわけでも否定するわけでもなく、時にドタバタに巻き込まれながらも一緒に仲良く暮らしていく。家族とともに、ごく小さな幸せを感じながら暮らしていた真司。
 
 しかし平穏な暮らしは突然崩れてしまう。得意体質の事で数少ない理解者だった最愛の母が突然亡くなってしまったのだ。
 病床で寝込んだままの母が、最期を迎える直前に真司へ最後のメッセージを伝える。

 母の言葉を胸に刻みつけ、忘れずに成長していく真司だが、母を失った悲しみを拭いきれず、心から明るくはなれなかった。

 そんな生活に小さな光が差し込み始める。
 
 新しい家族と平穏に暮らす中、霊感体質男子である真司が出会う[幽霊]との関りが、ゆったりした学校生活を送りたかった彼に少しずつ変化をもたらしていく。
 
 その変化の中に義妹という存在も参戦し――。
 
 義兄妹の愛情と仲間たちとの出会いを経ながらも成長して行く、霊感を持ってしまった少年のドタバタ青春ラブコメディ。

すべてはここからはじまった


 霊感があるって人前で自慢げに話す人がいますけど、あれってホントなのかな?


 普通に生活するには、視えても得はないのに……いや得どころか良いことなど一つもないのに。

 それに視えている人間は人前では本当のことを言わないと思う。


 それはなぜか。


 それまで友好的に築いてきた繋がりが終わりを告げ、告白した後に変な関係になりたくないし、気まずい空気にはしたくないから。


 それが、それまでの生活や友達関係を特に守りたいと思っている人なら、なおさらその想いは強くなるだろう。


 俺には……たぶんできないと思う。


 それが良い事なのかどうなのか結構な頻度ひんどで考えるけど、結局の所、その自問に対する答えは今まで出なかった。


 これから先も、出ないかもしれないと俺は思っている。もしかしたら出なくてもいいのかもしれない。


 だから俺は人との繋がりをなるべくは絶ってきた。話しかけられたりすれば返す事はするし、何かを誰かと一緒にやらなくてはいけない事などは断ることは無いけど、それ以上は踏み込まない。踏み込ませないという体を取り続けている。


 下手に仲良くなって詮索されたくないし、俺はあまり他人ひとに興味がわかない。


 その成果はもちろん学校生活に影響を及ぼし、友達と言えるようなクラスメイトはできたことが無い。いつも顔見知り以上知り合い未満。


 そのまま大人になっていく。それでいいと思っている。


 いつか、この考えの変わる日が来るのかは分からないけど、俺は俺のままでいられればいい。



 たとえ、人でないモノがえるこの世界の中でも、俺は俺のままがいい。

 このまま一人でも構わないと思っていたんだ。


 あの時、あの場所までは――。


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