少女がようやく降り立った地上は、今朝飛び立った時とまるで違っていた。
木々には鳥が留まり、囀りや羽音が心地よく響き渡っていた。
広大な湖のような場所では、魚が水面を飛び跳ね、またすぐに潜っていく。
その様子は、これまでに起こったどの変化とも異なり、まさに命の躍動そのものだった。
(なんてこった……!)
少女は、この光景を目にし、心の奥底でわずかばかりの期待と興奮を感じた。
草木の種を啄み、さえずりながら飛び立つ鳥たち。水底から自由に泳ぎ、水面を揺らして泳ぎ回る魚たち。
その光景は、彼女が元いた世界でも目にしたことのあるものだったが、今こうして見ていると、それとは全く違う感動が胸を打っていた。
人身売買で買われた先の性悪な小金持ちに、鞭打たれていた時、遠く木々の上を飛ぶ鳥になれたら…と、恨めしく思った事を少しだけ思い出しながら空を舞う。
そうして、時に鳥たちと一緒に宙を舞い、戯れ、水面を滑らかに触れながら魚を眺め、彼女はどこまでも世界を飛び回った。
その自由さ、そして世界に満ちる生命の力強さに、少女の心は次第に解放されていった。
これは、どこか別の世界が始まりのその時を迎えているのではないだろうか?
(そして…自分はなぜかそこに立ち会っているのではないだろうか?)
恐怖や不安とは異なる理由で、皮膚が粟立つのを感じながら、そう思わずにはいられなかった。
これほどの生命の息吹に満ちた新たな始まりを、彼女はその目で見せられているように感じた。
少女は今までにない感覚で、目の前に広がるこの不思議な世界の成り立ちを、いつまでもその目に焼き付けていた。