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第四の日 弍

斜陽が木々と少女自身の影を長く伸ばしきり、

空も大地も、世界全体が鮮やかな色彩に染めあげられる頃。


彼方の空には色彩の階調が少しずつ現れ、

やがて深い瑠璃色へとゆっくりと変わりはじめる頃。



少女は水辺を訪れていた。



何かを成すこともなく、ただ目の前の情景を眺めていると、ふと手持ち無沙汰を感じた。


それまでの興奮を冷ましたいという気持ちも、どこかにあったのかもしれない。


不思議なことに、地に降り立ってからというもの、再び宙に浮かぶことができなくなった――





などということはなく、むしろ自由に空中を漂い、思いのままに動き回ることができたのだ。


(すごい!なんだこれ!)と。

長らく忘れていた楽しみを見出した少女は、心の高鳴りを抑えきれず、年相応にはしゃいでいた。


そうして、気がつけばこのような時間になっていたのだ。


「らしくもない…」

少女はまだ冷たさの残る水に指先を触れさせ、少し二の足を踏んだのち、ゆっくりと足を浸しながら、思わずそう呟いた。


口に出してから思う。

そもそも、「自分らしさ」など、長い間奪われてきた。その心は、年相応の感情とは無縁に過ごしてきた。そんな自分にとっての「自分らしさ」とは、一体何なのだろうか。


少女は一人、静かに思索を巡らせたが、答えは出なかった。


ふくらはぎまで浸かった足元には、水が静かに寄せては返し、その心地よい冷たさが、体に残る興奮と熱をじわじわと冷ましていく。


頭上に輝き始めた月と星々の光を浴びながら、

少女は、かつて世界に救いがないことを、その身を持って知り、そして嘆き、恨んだ日々をふと思い出していた。


あの頃、何もかもが無意味に思えた。

救いも希望もなく、ただ生き延びるために必死だった自分。


そして全てを恨みながら襤褸きれのように、事切れたはずの自分。



それが今、こんな世界で…宙を舞い、自由を得ている。



だが、この場所が何なのか、何を意味しているのか、


それはまだ少女にはわからなかった。

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