いつのまに微睡みの中にいたのか、一瞬の逡巡の後であったか…
静寂と闇で全てを包む夜の懐が、ほんの僅かに、そして確かに揺らいだ。
それはぼんやりと夜の帷の輪郭を写し出し、
そうしていよいよ引き裂くように、
闇から少女を照らし出すように、
彼方まで隈なく温もりで満たす朝となって降り注いだ。
(朝…か。寝ていたのか私は…)
そうして眩く暖かな光の中で、中断していた少女の思考が再び熱を得て動き出そうとした時ーーー
またどこか遠くから、あるいはすぐ近くから、
声が響いた。
「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」と。
(…またか!)
驚きと、僅かに救いを求めるような気持ち、そしていい加減に答えを知りたくなり、何かに縋るように咄嗟に上を見上げる。
その瞬間、世界は広がった。
どこまでも続く光と闇の中にあったが、それでも確かに広がりを感じたのだ。
瞬く間にその果てしない奥行きを惜しげもなく見せつける世界。
少女のいる場所に、その上にどこまでも青い大空が現れ、その頭上には雲が浮かび、光を途切れ途切れに降り注がせている。
眼下には水が光を反射し、雲とどこまでも突き抜けるような青空を映し煌めいて…
それはまるで、別の次元が今ここに新たに誕生したかのようだった。
「だから…なんだっていうんだよ…教えてくれよ…」
当たり前に頭上にあったような空。ただの果てしなく大きな水溜まりのような海。
最期を迎えるまで、無価値で無意味で無味乾燥だったそれらに、何故か心が酷く揺さぶられる。
いつの間にか頬を涙が伝った。
第二の日が訪れたのだ。
世界は、あまりにも――
あまりにも輝きに満ちていた。