カランコロン。
いつも通りドアベルが響く。
「いらっしゃいま……せ~……」
あまりにも厳ついその客の風貌のせいか、接客しようとしたアオイの声が一瞬詰まった。
「おう。ここが
すっかり見慣れた……いや、見慣れたくはないのだが……。どこからどう見ても「
「お、お前は!?
すると、その男の姿を見つけた八九三組の一人が立ち上がり、怒鳴り声を上げた。
一触即発の空気に静まりかえる店内。
「はい、唐揚げ」
ただ一人、空気を読まずに淡々と接客をするノアの声だけが響いた。
「姐御! ありがとうございやす!」
骨の髄にまで染みついた下僕精神の賜物だろうか。ノアが現れるや否や八九三組一同は一転、ゴトウのことなど眼中になかったかの如く、ノアの方へ深々と頭を下げた。
「ほう? そいつが最近、八九三を裏で牛耳っていると噂の
そんな八九三組の姿を見て、ゴトウは挑発するようにそう言い放った。
すると、バァンともの凄い勢いでテーブルを叩く音と同時に、八九三組の一人がゴトウの胸ぐらへと掴みかかった。
「貴様ぁ!? ノアの姐御を愚弄するやつは許さねぇぞ!? どう落とし前つけてくれんだ、ゴラァ!?」
「ふん。ほざけ。貴様らが儂に勝てたことなど、ただの一度でもあったか?」
怒りのままに掴みかかってきたその腕を、ゴトウは余裕の表情を崩さずになんなく払い除ける。
「上等だゴラァ! 今すぐ白黒つけたらぁ!」
「ふん。臨むところじゃ。儂らのやり方は分かっとるじゃろ?」
憤怒の形相の八九三組と、不敵な笑みを浮かべるゴトウ。依然として殺気立つ店内。
「いや、頼むから外でやりなさいよ……」
カリンの切実な訴えも当然彼らの耳に入るはずもなく、ゴトウは店の奥へとズカズカと足を踏み入れていく。
そのまま真っ直ぐ八九三組の座るボックス席へと向かっていくゴトウ。
そのままいよいよ開戦かと思われた矢先……。ゴトウは何故か、その隣のボックス席にドッカリと腰を下ろした。
ノアからお冷とおしぼりを受け取り、すっかりくつろぎ始めるゴトウ。そのままノアに何かを注文したようだ。
「さあて、噂の例のブツ。いかほどの物か見せてもらおうかのう……。この
ゴトウは不敵な笑みを崩さぬまま、そう独り言を呟いた。