プログラマーとして働いている私、黒磯くろいそ由香里ゆかり。情報専門学校を卒業後、この会社に入社して１０年になる３１歳だ。

　昔から情報分野が大好きで、小学生の頃から与えられたパソコンで簡単なゲームを作っていた。

　高校は商業科に進み、そこの情報コースに所属。情報処理の教師からは『ホワイトハッカー』と呼ばれるくらいには、プログラミングを極めていた。

　大好きなプログラミング。

　それを仕事にできたら、どれほど幸せか。

　そう思い、情報専門学校に進学をした。

　その後は大手ゲーム開発会社に入社し、人生安泰……だと思っていたのに。

「黒磯！！　一昨日メンテしたスマホ向けパズルゲーム！！　形の違うピース同士をくっつけても消えるって多数のクレームが来てるぞ！！」

「えぇ！？」

「緊急メンテだ！！　解決するまで帰さないからなっ！！」

　現在時刻は１９時３２分。

　今日２２時からの歌番組に、推してるアイドルグループが生出演する予定だ。久しぶりにリアタイできるかなって、密かに期待していたけれど。

　只今から、パズルゲームの緊急メンテに入ります。

◇

《この前メンテして、またメンテ！？》

《緊急メンテとか無いわ。詫び石ヨロ》

《今日まだログインしていないのに！！　運Ａは絶対ログイン補償を用意しろよ》

　緊急メンテ中の、僅かな休憩時間。１４０字で呟けるアレで、エゴサーチ。そうやってまた、自分自身の心を抉る。

　現在時刻は０時１６分。

　２２時にテレビに生出演した推しているアイドルグループは、新曲を初披露したらしい。

　日本のトレンド１位になっているみたいで、タイムラインにも動画がたくさん流れてくる。

「………」

　誰かが上げた動画なんて見たくない。そう思い、アプリを閉じた。

　現在の進捗率は２０％弱。終わりなんてまだ見えない。パズルゲーム担当チームのメンバーは、私を含んで４人だ。

　私はエゴサ。

　残りの３人は各々が天井を仰ぎ、呆然とシミの数を数えていた。