チェリーちゃんはアデリーン侯爵令嬢だった。そんな衝撃の事実を皮切りに、彼女の歓迎会が開始される事となる。
一体どんな魔法を使ったのか? あれほどわたしと敵対していた筈のアデリーン令嬢が、普通にわたし達の前へ姿を現したのだ。本来ならば、わたしに関して言えば、ここで互いの正体を明かしてサプライズという予定だったのだが。
「ねぇ……
「気づいたのは結構前ですよ? 最初は気づいてませんでしたが、アプリ内で彼女の恋愛相談を受けている内に確信しまして。それでこないだ正体を明かしてうまく彼女の心を繋ぎ止めておきました」
クランベリーがこの間、アデリーン令嬢を説得しておいたと話していたのは、そういう事だったのかと納得するわたし。彼女はやはり信頼出来る有能なシスターだ。
「そうだったの。陰で色々動いてくれてありがとう、
「ぶはっ……
あらら、鼻をおさえて海の家の裏手へ移動するクランベリー。何やら呻き声や叫び声が聞こえたあと、何事もなく戻って来た。彼女の呼吸がまだ荒いところはそっとしておいてあげようと思う。
「アデリーン令嬢の未来と、わたし達の出逢いと未来に……乾杯!」
「「「「乾杯」」」」
こうして無事、〝サンクチュアリ〟アプリ内、プライベートビーチエリアにて、アデリーン令嬢歓迎会が始まった。
今回、
プライベートビーチに設置された海の家にて開催されるバーベキュー。食材なんかも
「バーベキューをするとの事でしたので、某共二人で、
「あら、ナナシの執事さん、ベル、ありがとう」
ナナシの執事さんがアプリのアイテムボックスを操作したのだろう。丁寧に捌かれ、巨大なお皿に盛られた巨大なレッドドラゴンのお肉の山が鎮座した。
「なっ、なんだとっ!? おい、アップル! レッドドラゴンと言えば、超級クラスの魔物じゃないか! サンクチュアリアプリにはそんな魔物の肉まであるのか⁉」
「これは……わたしも
王子と騎士団長の二人が突然現れた超級クラスのお肉に驚きつつ興味を示す。
そりゃあ、レッドドラゴンなんて現実で出て来たら大変ですものね。それこそ厄災レベルだ。なんか、
「
「そうか……なんか常識が覆されたみたいだよ。なぁ、ジーク」
「そうだな。これは現実で闘うとなると大変な事になりそうだからな」
感心した様子の
お肉を焼く係の
「ふっ、
「じゃあ
だんだんとお肉が焼けるいい香りが漂って来た。これは食欲を
「なっ……なんですの……この極上な霜降りのお肉は……いえ、こっ、このくらいのお肉程度じゃあわたくしの心は動かされませんのよっ!」
はい、
「はい、
ごくりと生唾を呑み込んだあと、
「はあぁぁああっ、ダメよ、この姿のわたくしを
暫く恍惚な表情の
引き締まったレッドドラゴンのお肉は、しっかりした肉厚があり、口に含むと溢れる肉汁と極上の旨味成分が広がったあと、口の中で溶けていくのだ。今迄食べたどのお肉よりも極上の味。これは
「普段は余が魔法で丸焼きにするんだがな。こうやって捌いたあと部位毎にいただくのも乙なものだな」
「
アップルパイも一瞬にして
「
「なに、
「デザートに極上のアップルを堪能してもよろしいですか……」
「堪能せんでよろしいっ!」
こうして、各人バーベキューを堪能し、(クランベリーはアップルを堪能し)、みんなでビーチへ移動する。わたしは日焼けが気になるので、ビーチに用意されたベンチへ横になる。
ちなみに
平穏なひと時。最近緊急事態や有事が続いたため、こんなゆっくりとした時間を過ごす事もなかった。たまにはお仕事の事も忘れて、こうした時間を過ごす事も大切だなと思うわたしである。
暫くして
「ふぅ……ようやく解放されました」
「お疲れ様
「何やら
「え、それってもしかして?」
二人きりではなく、三人という点は気になったが、
うーん、聖女としての立場はあるし、覗きはあまりよくないとは思うのだけど、
「どうしますか? 参りますか?」
「