あれから数日後――
「とまぁ、そんな方向になりました」
「クランベリー、一体どうなったらそんな結果になっちゃうの」
テレワークがおやすみだったこの日、教会と神殿、それぞれの場所でミサを終えたわたしとクランベリー。彼女には色々と聞かなければならない事があったのだ。
この日、ミサがあったため、教会へ訪れたアデリーン。見習い
そもそも、わたしの姿を見たアデリーンが反発する事もなく対話に応じた事も疑問だったのだけれど、歓迎会への招待へ彼女が否定する事もなく承諾した事が驚きだったのだ。
教会でのわたしとアデリーンの会話はこんな内容だ。
『サンクチュアリアプリ内であなたの歓迎会をしたいの。サンクチュアリというシステムはご存知ですか?』
『ええ、存じておりますわよ。それにしてもアップル、まさか聖女という立場にありながら、そんな平民のお
『いえ、聖女であるからこそ、流行や文化に触れ、民衆の声に耳を傾ける事は大事です。むしろ貴族の間でもこのアプリは流行っていますよ?』
『そのようですわね。わたくしも、たまにはそのお遊戯に付き合ってあげてもよくてよ。ただし条件がありますわ』
『条件? なんでしょう?』
『わたくしのお友達もその場に同席させること。それが条件ですわ』
令嬢として一人で走って来た彼女。彼女にも彼女の心を理解してくれるようなお友達が居たという事だろうか? でも、もしそうなら、一人寂しそうにしている彼女を救うなどという考えは慢心であり、取り越し苦労だったのかもしれない。
『全然構いませんよ。では、詳細はレヴェッカからお伝えします。サンクチュアリアプリのやり方は彼女から教わっておいてください』
『心配いりませんことよ。わたくしほどの存在になれば、その程度のお
もしかしたら、いや、もしかしなくてもアデリーン令嬢は、既にサンクチュアリアプリをやっているのかもしれない。〝魔法端末の中にある箱庭の世界で遊ぶ夢のような現実体験〟。この内容を説明するだけでも、知らない者からすると、何を言っているか分からないといった反応を示す筈なのである。
見習い
そして、入口の扉を開ける直前、彼女はこちらへ振り返り、最後こう言ったのだ。
『そうそう、あなたの神殿に居たシスター、クランベリーにもよろしくお伝えくださいまし』
……と。
という訳で、彼女との対話を終え、お家へ帰ったわたしはクランベリーへ
「まだ全てをお話出来ないのですが、ワタクシのお友達を経由してアデリーン令嬢を説得することが出来たのです」
「なるほど、あの子が
クランベリーによると、サンクチュアリで彼女に逢えば、全てが分かるのだと言う。何やらアデリーンと約束している話があるらしい。
どうやらわたしの知らないところで彼女は色々と動いてくれていたようだ。まさか
わたしへ隠し事をしない印象のクランベリーだが、彼女はちゃんと人の秘密を守る子だ。彼女を信じているからこそ、わたしも彼女からの報告を聞いた上で、それ以上は深く追及しないことにした。
代わりにわたしもアプリ内のお友達である魔王グレイスとその執事フォメットを、魔王とは伏せてアデリーン歓迎会へ呼ぶ予定なのである。一応アプリ内のお友達……という名目になっている。
「クランベリー、チェリーちゃんは既に招待済なんだっけ?」
「はい、そちらも問題ございません」
「じゃあ全員揃った感じね。ジーク騎士団長とブライツ王子も誘っておいたから、賑やかな歓迎会になりそうね」
ちなみにジーク騎士団長と、ブライツ王子には、
「そう言えば、わたしのお友達がイケメンと聞いて、ライム=レヴェッカもハリキっていたわよ」
「ワタクシは乙女だけの秘密の花園でも問題ないのですが、今回はアデリーン令嬢の歓迎会ですから、
あらあら、クランベリーが通常仕様の妄想モードへ入ったところで、わたしは予め淹れておいた紅茶をひと口口へ含む。一人悶えて居る彼女の脳裏には、きっとアプリ内で水着の着せ替えをしているわたしの姿が映っている事でしょう。
これで準備は整った。
『アデリーン令嬢歓迎会』、あとは本番を迎えるのみね。