魔の森を蒼白い閃光が駆け抜ける。地を
雷属性の魔力を纏わせるわたしのスキルは、かつてこの地を救ったとされる英雄ヤマトから引き継がれたものらしい。
だが、そんなことは取るに足らない事だった。それよりも重要なのは今であり、この先、英雄より引き継がれたこのスキルをどう扱うかなのだ。
「頼む……間に合ってくれ」
不覚にも、上級魔族――黒のルーインの攻撃により、一度わたしは命を落としかけたのだ。その場にブライツが駆けつけていなければ、そして、聖女アップル様の治療がなければわたしの命は尽きていたのだ。
一度救ってもらったこの命。民のために使わずして何に使おう。魔の森を抜け、草原を超え、街道へと出る。もうすぐ街の入口が見えて来る。
禍々しい
街の至るところに魔物の気配を感じるが、サーガ以外のドラゴンナイトならば、王宮騎士団のメンバー達だけでもなんとかなるだろう。
そして、街の神殿には魔を寄せつけない結界も展開されている。前回魔人の侵攻を
わたしへ施してくれた治療もそうだが、アップル様の
避難をしている最中の住民が見える。そして、遥か遠く、竜の硬い鱗に包まれたサーガの姿を捉える。奴は誰かに剣を向け、斬りつけようとしている。あれは……まさか、アデリーン!?
脚先へ籠めていた
サーガが振り下ろす剣をわたしの剣が受け止め、激しい火花と共に金属音が響き渡る。わたしの纏う蒼白い光に、どうやらサーガも剣を受け止めた相手がわたしだと認識したようだ。
「……どうやら間に合ったようだな」
「え……嘘……。ジーク?」
腰から崩れ落ちた
「
「……ジーク、あなた……」
わたしが来たからにはもう大丈夫だと言わんばかりに、アデリーンへ優しく微笑む。相手がわたしだと認識した
「オ前、先刻殺シ損ネタ」
「あんたとは因縁があるからな。ここで決着をつけさせて貰う!」
アデリーンの前に立ち、
「ジーク様、来て下さったのですね!」
「クランベリーさんか」
「はい。アデリーン様はワタクシに任せて下さい! アデリーン様、こちらへ」
「嗚呼、頼む」
住民を神殿へ避難誘導をしていたのだろう。神殿のシスターであるクランベリーさんがこちらの様子に気づいて来てくれたようだ。これで、周囲へ気遣う事なく、戦いへ集中出来そうだ。
「待って……ジークが……」
「ジーク様は心配要りません。ここは危険です、さぁ、早く!」
「ジーク……ジーク! 絶対……死ぬんじゃないわよ!」
離れ際、わたしへ向かって言い放ったアデリーンの言葉。その言葉に蒼白い光がより強い光となる。
「――その言葉があるだけで充分だよ。ありがとうアデリーン」
「イクゾ、ニンゲンノ騎士ヨ!」
「アルシュバーン国、王宮騎士団、騎士団長――ジーク・ヤマト・グランフォードだ」
「ルーイン様直属、
目にも止まらぬ速さで繰り出される
サーガの剣が振り下ろされた瞬間にバックステップで後退し、わたしは地面を弾いて真っ直ぐ突きを繰り出す。雷刃を纏わせたこの剣による突きならば、硬い竜の鱗も貫く事が出来るのだ。
しかし、サーガも繰り出される突きを上体反らしで
わたしは無理矢理、地に突いた脚へ魔力を籠め、高く飛び上がる。そして、空中へ浮かんだまま態勢を立て直し、サーガへ向かって雷撃を落とす。
「穿て――
「――
紅蓮の炎と激しい雷撃が空中でぶつかり合う! 全身を覆った魔力により、炎による攻撃を和らげ、わたしは地面へ着地する。雷を受けたサーガも、全身を焦がしたまま倒れる事なく剣を構えている。
やはり、そう簡単に倒れてくれる相手ではなさそうだ。あちらさんも何やら何かをしようとしているみたいだし、街の中でこれは使いたくなかったんだが、仕方がない。
「ジークとやら、ソロソロ行クゾ!
「――
刹那、わたしと超竜騎兵、二人の纏う空気が変わった。