こんにちは!
私はカスタード国の郊外に位置するメロンタウンの教会で神官をやっています、レヴェッカといいます。
町外れの小さな教会なので、広大な土地があるお蔭で、自分たちが生活出来るための農作物や鶏なんかも飼っており、神官とシスターみんなで育てています。
裏の山には大自然の聖なる力をいっぱい浴びた水や、果実なんかもなっており、生活には困りません。
私は教会の土地を持っていた神父であった父の娘で、教会の隣に家を構えているのですが、教会の隣に修道院があるため、若い見習い
「じゃあね、アップル。行ってくるね! 今日は修道院で昼食の予定だから、アップル用にお弁当作っておいたよ。キッチンにあるから食べてね」
「いつも感謝するわ、レヴェッカ。行ってらっしゃい!」
そう、今私の家には同居人が居るんです。同居人の笑顔に見送られつつ、家を出る私。なんか新婚カップルみたいで素敵ですよね。
同居人の名前は、アップル・クレアーナ・パイシート。お菓子作りが趣味の彼女は、なんとお隣、アルシュバーン国の聖女様なんです。
そもそもどうして私が聖女様とお友達なのか。かれこれ数年前、各国から聖者を集め、クレアーナ教――東の聖地と言われるヴェロニカ台地へ聖地巡礼をするというイベントがあったのです。
そのとき偶然アップルと同じ
田舎の小さな教会の神官である私が、世界的にも有名な聖女様とお友達だなんて、誰も思わないでしょう。
アップルはどうやら訳あってアルシュバーン国から追放されちゃったらしいのですが、彼女固有のEXスキル、
頭の回転も早いし、仕事も出来て、可愛さの中に大人の女性の凛々しさも兼ね備えており、誰にでも優しい彼女はまさに聖女。彼女の微笑みに誰もが癒される事は間違いないでしょう。
(アップルって本当非の打ち所がないのよねぇー。私もアップルみたいな素敵な女性になりたいわ。そしたら、きっと、このベリーサイズの二つの果実も、アップルと同じ、たわわに実った林檎サイズに……)
「……ェッカ様ー、レヴェッカ様ーー」
「えっ!? あ、マミごめん、何か言った?」
「ボーっとしてて、考え事ですか?」
「大丈夫よ、で、何の話だっけ?」
修道院の庭掃除をしていたところで、
ついついアップルの事を考えてボーっとしていたらしい。自身の胸あたりに移動していた両手を正し、掃除を再開する私。
「何って、今度新しい見習い修道女が来るって話ですよ! うちとユナにも後輩が出来るんだなって。どんな子だと思いますって話ですよ!」
「そういえば、マザーがそんなこと言ってたわね。こんな田舎の修道院へ見習いの子が来るのも珍しいわねー」
アップルが居るアルシュバーン国の神殿みたく、都会の神殿や教会なら見習いの子がやって来る事も多いけれど、此処はカスタード国のメロンタウン。なかなか
「うち可愛いらしい女の子がいいなぁー。そしたら一緒に温泉入ってイチャイチャするんです。それから……」
「こら、女神クレアーナ様の前ですよ。妄想はそのくらいにしなさい」
まぁ、クレアーナ教は欲に溺れさえしなければ、愛を育む行為を禁止している訳ではないけれど、昼間から修道院の前で話すような会話ではないのは間違いない訳で。
「はーい。でもレヴェッカ様いつも温泉で女の子の
「なっ、それは私とアップルの仲だからいいのっ! ほら、お勤めに戻るわよ」
『今度うちも一緒に温泉入りたいです』とウインクしつつ、マミは修道院へと戻っていきます。
最近はアップルが私の攻撃をうまく
それはそうと、新しい修道女見習いが来るって話。もしかして、その子も
修道院は基本、本人が話をしない限り、その子の過去や経緯を詮索する事はない。クレアーナ教は過去も身分も種族も年齢も関係なく、皆に平等なのです。
「アップルと同じ、
今晩にでもアップルにも報告しておこうかな? 見習いながらに聖女と直接話が出来るなんて、普通は中々ないことだし。
そんなことを考えつつ、お勤めに戻る私なのでした――