後日、みんなの休みに併せて〝サンクチュアリ〟アプリ内でオンライン女子会が開催された。
このサンクチュアリアプリ、専用のヘッドホンを装着する事で、アプリ内のキャラクターへ自身が入っているかのように世界を冒険出来る
この機能を駆使する事で、サンクチュアリ内で食べたものも本当に食べたかのように脳内で味を再現出来る。わたしはオレンジ髪の自身のアバター、オレンジとしてサンクチュアリの大地を踏みしめる。
レヴェッカに先日指定された場所、アニマルフォレストエリアの〝ウリリンの丘〟へ到着すると、既に
「
「アッ……じゃなくてオレンジ様ーー、この度はワタクシ目ごときを素敵な女子会にお誘いいただき、ありがとうございました」
サンクチュアリ内では色んなキャラが活動しているため、リアルネームを呼ぶのは基本厳禁だ。わたしの姿を見つけ、ミント色の三つ編みにゴスロリ衣装へ身を包んだ
普段ワンピースや聖女の衣装に身を包んだわたしも、オレンジ髪に合うよう白色のシャツに若草色の手織りのケープ、薄茶色のミニスカートにブーツ、黒のレギンスといったコーディネートで決めてみた。
普段とは違うわたしの格好が珍しいらしく、『ア、アアア、オオオレンジ様、そんな挑戦的な格好……あまりに眩しくて直視出来ません』瞳をうるうるさせたまま、クランは自身の鼻を押さえていた。
「いや、クランも充分攻めてるとは思うけど……ねぇ、
「そうね、
「ん? 何か言った
「なんでもないわよ」
「わんわんわん!」
「わおーん、おんおんおーん」
わたしのペットである聖獣ホワイトと、クランが飼っている狼型のペット、シルバーンが再会を果たし、尻尾を振り振りしつつ周囲を駆け回っている。
そんな中、本日の女子会最後のメンバーが到着する。桃色ツインテールには大きな鍔の帽子。黒と赤が基調の魔法使い風のローブを身につけた女の子は、黒猫を連れてやって来る。
「皆様ーー、ごめんなさい。サンドイッチを作っていたら遅くなってしまいましてー」
「チェリーちゃん、大丈夫よー、わたしも今来たところだから。わぁー、魔法使いの格好似合ってるわね!」
「まぁ、オレンジさんこそ素敵なコーディネートですわ」
サンクチュアリアプリ内でお友達になったチェリーちゃん。いつも礼儀正しくアプリ内でもまめに餌やりや水やりをやってくれる女の子。どうやらどこかの令嬢らしいんだけど、最近恋の悩みもあるみたいで。
女子会ならそんな悩み相談や恋バナの話もきっと弾む事だろう。今日はひとまず本来の目的である狩りをやったあと、丘の上でランチと洒落こむ予定だ。
冒険者と違い、いつも神殿に引きこもりだったわたしは、こういった冒険のようなお出かけに憧れるのだ。以前行われた聖地巡礼の際も、周囲が反対する中、わたしが直接出向きますと司祭やシスター達へ直談判したのはいい思い出だ。レヴェッカとは聖地巡礼以来の付き合いである。
丘の上を駆け回っているウリリンという可愛らしい幼獣は危害を加えない限り襲って来る事はない。
問題は丘の中腹に位置する森。目的の
現実世界ならば、わたしが聖女の魔力で浄化すればいいのだが、ここは魔法によって産み出された仮想現実の世界。あくまでゲームの世界であって、仮に
「出たわ!
ライムが遠くを闊歩する巨大猪に気づく。先手必勝、向こうが気づいていない今のうちが勝負だ。
わたしのホワイトと、クランのシルバーンが森の中をすり抜け両側から巨大猪を狙う。しかし、猪が刹那ホワイトへ向き直り、猪突猛進を開始する!
「ホワイト、危ない!」
「わんわんわん!」
しかし、ホワイトはその突撃を予期していたかのように高く飛び上がり、巨大猪の攻撃を華麗に回避。鋭い爪で猪の体躯を引き裂く。どうやら危険予知のスキルが発動したのだろう。
一旦距離をとったホワイトへ向け、突撃を開始する猪だったが、右後ろ脚を何かに取られ激しく転倒する。ホワイトを狙っていた猪の虚をつき、シルバーンが足首へ牙を立てたのだ!
立ち上がろうとする
「ガルルルルーわんわん!」
このとき、二体の獣を振り落とそうと暴れまわる猪へ振り下ろされたホワイトの爪は白い輝きを纏っていた。恐らくあれは聖属性魔法。聖なる輝きを帯びた爪は、分厚い体毛に覆われた猪の体躯を引き裂き、赤い体液が飛散する。そのまま二体の獣は猪の喉元へと噛みつき、
「すごいよー、ホワイト」
「シルバーン、偉いわ」
「オレンジ凄い!」
「完璧なコンビネーションでしたわ」
尻尾を降りつつ喜びを全身で表現するホワイトとシルバーンをモフモフしてあげる
こうして巨魔猪を見事狩る事に成功したわたしたち。途中