「リオン、今日も送ってくれてありがとう」
馬車から降りると、リオンにお礼を述べた。
「お礼なんていいよ。だって元々ユニスを送りながら話をしようと思っていたから」
「ね、今日は家に寄れる? 誕生パーティーのことで、色々話したいことがあるし」
すると少しだけリオンは考え込み、ためらいがちに返事をした。
「う〜ん。ごめん、やっぱり……やめておくよ」
「……そう、残念だけど仕方ないわね」
やっぱり婚約解消を決めた私の家には寄りたくないのだろう。するとリオンが尋ねてきた。
「ところで、ユニスは両親に婚約解消の話はしてるの?」
「いいえ、していないわ」
「え? そうなの?」
「だって今からそんな話をすれば、両親からリオンの誕生パーティーに出席することを反対されるに決まってるもの」
仮に私がパーティーに参加しなかったことで、ゲームの筋書き通りにリオンの魔力暴走で父親が火災事故で死んでしまったとしたら……私は悔やんでも悔やみきれないだろう。
「うん……確かにユニスの言う通りだよね」
「そういうリオンは両親に私と婚約解消したいという話はしているの?」
「僕も……まだなんだ」
俯くリオン。
「そうよね。やっぱり誕生パーティーの前に婚約解消の話を出来ないものね」
「別に、そういうわけじゃなくて……」
「え?」
「あの……さ、ユニス。アンディとザカリーのことだけど……」
「アンディとザカリーがどうかしたの?」
けれどリオンは再び俯き、口を閉ざしてしまった。
「リオン? 」
もう一度声をかけると、リオンはパッと顔を上げた。
「ううん、何でもない。それじゃ、ユニスに誕生パーティーの場所選びは任せるよ。決まったら教えてくれる?」
「ええ、もちろん。数日以内に決めて知らせるわね」
「うん、よろしく」
私達は手を振り合い、リオンはそのまま馬車で帰って行った。
「リオン……絶対に、あなたを守るから」
リオンを乗せた馬車を見送りながら、私は自分の決意を口にした――
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「……ふぅ。やっぱり見つからないわね……」
自室で学園の図書館から借りてきた魔法学の本を眺めながら、ため息をついた。
魔力暴走についての記述は何処を探しても見つからない。
「リオンは特例なのかしら……? それならやっぱり、リオンの魔力が暴走した後のことを考えないと駄目よね」
魔力暴走を止める方法が見つからなかった以上、被害を最小限に抑える方法を考えるしか無い。
当然のように、リオンはパーティ会場を屋敷の中にしようとしていた。
それを私が止めて、会場選びを任せて欲しいとお願いしたのだ。
リオンはロザリンのことで後ろめたかったのだろう。理由も聞かずに、二つ返事で承諾してくれたのだった。
「やっぱり会場は外で、水場の近くがいいわね」
幸いリオンの屋敷の近くには湖もあるし、敷地内には大きな噴水つきの中庭もある。
「このどちらかを会場に出来れば……」
屋外は雨の心配があるけれども、恐らくこの日に雨が降ることは無いだろう。
何故ならゲーム中でリオンが、『あの日……雨が降っていれば、大火災になることは無かったのに』と呟くシーンがある。
「でも、念の為に雨よけのパラソルは立てたほうがいいわね」
けれど、問題はまだある。火災があったときに、どうやって火を消すかだ。
いくら水場が側にあるからといって、バケツで消していたら間に合わない。
「この世界にホースはあったかしら……」
魔法書をパラパラめくりながら考えた。
一番良いのは水魔法が使える人がいれば……一瞬、ザカリーとアンディの姿が頭に浮かぶ。
でも頼みにくかった。第一リオンはあまり2人を良く思っていないように見えた。
「私にも水魔法が使えたらいいのに……あら?」
魔法書のある1ページで目が止まった。
「禁断の魔法……? どんな魔法かしら?」
つい興味が湧き、ペラペラとページをめくる。
「すごい……こんな魔法が存在していたのね」
この日――
水魔法のことも忘れて、私は夜がふけるまで禁断の魔法について読破した――