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2章21 問い詰める人たち

 まさかリオンも私に用事があるとは思わなかった。


「良かったわ、リオン。丁度私も用があったのよ」


「それは偶然だね。ところで……」


リオンは私の両隣にいるアンディとザカリーを見る。


「もしかして、遅かったのは2人と話をしていたから?」


「それは……」


すると、アンディが口を開いた。


「話はしたけど、僕たちだけじゃないよ。他にユニスのクラスの先生と、僕たちのクラスの先生と話をしたんだよ」


「え? そうだったんだ。一体何の話だったの?」


「どうしてリオンに話の内容を言わないといけないんだ?」


すると、私の代りにザカリーが答えた。その言い方が、どこか喧嘩腰に聞こえてしまうのは気のせいだろうか?


「……ザカリー。僕はユニスに尋ねているんだけど?」


「だけど、僕たちにも関わりのある話だからね」


再びアンディが返事をする。


「ユニス……」


リオンが私に答えを求めるかのように見つめてきたので、説明することにした。


「放課後、担任の先生に声をかけられたのよ。大事な話があるから談話室に来てほしいって。そこで行ってみるとアンディとザカリーに、SS1クラスの担任の先生が待っていたの。そしてSS1クラスに編入しないかと誘われたのよ」


「え……? どうしてユニスをSS1クラスに……?」


「そんなことは決まっているじゃないか。ユニスが試験で1位になったからだよ」


「そ、そうだったね……今回、ユニスは1位になったんだっけ……」


リオンの表情は浮かない。やはり、私が試験で1位を取ったことをよく思っていないのだろうか。


「でも断ったわ。私は一切魔法が使えないから。そんな私がSS1クラスに編入するわけにはいかないもの」


「確かにユニスは魔法が使えなかったね。それじゃ、SS1クラスに編入するのは無理だね。やっぱりユニスは自分のことが分かっているんだね」


するとアンディがリオンに一歩近づいた。


「リオン、他に言うことは無いのかい? 今回ユニスはロザリンに試験でどちらが良い点数を取れるか、勝負を申し込まれて試験勉強を頑張ったんだよ。当然理由は知っているんだろう?」


「……うん、勿論。でもどうしてアンディも知ってるんだい? まさかユニス、喋ったの?」


リオンが私に視線を向ける。


「ユニスは何も言っていないよ。ロザリンが大きな声で、ユニスに勝負を申し込んでいるのを見ていたからだよ。君のためにユニスは試験勉強を頑張ったんだから、褒めてあげてもいいんじゃないかな? だって婚約者なんだろう?」


アンディがきっぱり言い切った。


「!」


リオンは一瞬ビクリとしたものの、笑顔になった。


「ユニス、1位になれておめでとう」


「……ありがとう」


リオンはおめでとうと言ってくれたけれど、彼の表情は暗い。やはり、私を待っていたのは今回の試験のことについてなのだろう。

そうでなければ、わざわざ私を待つようなことをするはずもない。


「それじゃ、遅くなった理由も分かったことだし……ユニス、大事な話があるんだ。一緒に馬車で帰ろう? 家まで送るよ」


そして、リオンはアンディとザカリーを見る。


「分かったよ、僕たちは邪魔者だから帰れってことだろう? 帰ろう、アンディ」


ザカリーがアンディの肩を叩いた。


「そうだね、2人の邪魔をするわけにはいかないね。またね、ユニス」


アンディが私に手を振る。


「ええ。またね」


次に「また」という言葉があるかは不明だが、私もアンディとザカリーに手を振った。


「それじゃ、行こう。ユニス」


「ええ」


リオンに促され、アンディとザカリーに背を向けて歩き出し時。


「リオン!」


突然、アンディが声をかけてきた。


「何?」


リオンが振り向く。


「また、魔法学の授業で会おう! 楽しみにしているよ!」


その言葉にリオンの顔が一瞬こわばる。


「そうだね……僕も楽しみだよ。行こう、ユニス」


リオンは先に立つと、校舎を出ていく。


「さよなら、アンディ、ザカリー」


私は2人に手を振ると、急いでリオンの後を追った。


そして馬車の中で、またしてもリオンからお願いされることになる――




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