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2章16 思い出したこと

「それにしても意外だったわね。まさか1位が3人もいるなんて」


教室に向かって歩きながら、エイダが話しかけてくる。


「ええ、そうね」


エイダの言葉に返事をしながらも、私は半分上の空だった。


さっき、見たのは気のせいだったのだろうか?

あのとき私とリオンの視線が合ったと思っていたのに、リオンは何も言わずに去っていってしまった。


あれは一体……?


「3人供、満点だったのでしょう? 今まで1位が3人も出るなんて始めてじゃない。2人はSSクラスの1組だったわよね。でも、その中の1人がユニスなんだもの。友人として、誇りに思っちゃうわ」


リオンは、もしかして私が学年1位を取ったから面白くないのだろうか……?


「ねぇ、ちょっと聞いてる? ユニス!」


突然腕を引かれて我に返った。


「あ……ご、ごめんなさい。自分が1位を取れたことが信じられなくて、ぼ〜っとしてたみたい」


「何だ、そうだったのね。でも分かるわ、その気持。だって、ユニスは女子の中で一番頭が良いことが決まったのだから。男子は2名だけど。でもさすがは万年トップのアンディ様とザカリー様よね」


「アンディ……ザカリー……?」


その名前を聞いた時、私はまるで雷に打たれたかのような衝撃を受けた。


「え!? 待って、今アンディとザカリーって言った?」


「ど、どうしたの? ユニス。だって、クラスは違うけど……あの2人は有名人じゃない。学年で1、2位を争う天才だって」


「そ、そう……」


何故今まで気づかなかったのだろう。私はリオンと始めて会った時に前世の記憶を取り戻している。

アンディとザカリーは「ニルヴァーナ」のゲームに出てくる4人の攻略対象のうちの2人だと言うのに。

まさか、既にこの学園にいたなんて……。


「フフフ。ユニスがそこまで慌てるなんて珍しいわね。でも確かにレベルが違いすぎるし、試験の結果発表なんて気にしたこともなかったものね。どうせ私達とは関係ない話だから」


「確かに……」


エイダの言うことは尤もだ。試験結果は上位50人までしか発表されない。

一般クラスの私達とは無縁なので、掲示板を見に行ったことすら無かった。


「でも今回のことは、きっと大騒ぎになるはずよ」


エイダと2人で教室に向かって歩いていた時。


「ちょっと待ちなさい!! ユニス・ウェルナーッ!!」


背後から突然大きな声で呼ばれ、私とエイダは驚いて振り向いた。すると腕組みしているロザリンの他に、5人の女子生徒たちが集まっている。

彼女たちは全員私を睨みつけていた。


「ユニス……あの子達、全員SSクラスの2組の人たちよ……」


エイダが怯えた様子で耳打ちしてくる。


「ええ、そうね。だからエイダは先に教室へ行って」


「え!?」


「あの子達が用があるのは私だけだから。早く、教室に行ってて頂戴」


「だ、だけど……」


エイダが泣きそうな顔になる。


「私なら大丈夫だから」


すると、ロザリンが指さしてきた。


「ちょっと! 一体そこで2人揃って何コソコソしてるのよ!」


「エイダ、早く行って!」


私はエイダの背中を押した。


「わ、分かったわ……ごめんなさい!」


エイダは私から離れると、走り去っていった。

周囲では何事かと私達を取り囲んでいる生徒たちがいる。


「何で、あの子を行かせたのよ?」


腕組みしたままロザリンが私に尋ねてきた。


「だって、用があるのは私だけでしょう?」


「まぁ確かにそうだけどね」


ロザリンが意地悪そうに笑った。

大丈夫、こんなに大勢いる前で私に何かしてくるはずはない。恐らく別に何か魂胆があるに決まっている。


私を陥れるための何かを――




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