「それにしても意外だったわね。まさか1位が3人もいるなんて」
教室に向かって歩きながら、エイダが話しかけてくる。
「ええ、そうね」
エイダの言葉に返事をしながらも、私は半分上の空だった。
さっき、見たのは気のせいだったのだろうか?
あのとき私とリオンの視線が合ったと思っていたのに、リオンは何も言わずに去っていってしまった。
あれは一体……?
「3人供、満点だったのでしょう? 今まで1位が3人も出るなんて始めてじゃない。2人はSSクラスの1組だったわよね。でも、その中の1人がユニスなんだもの。友人として、誇りに思っちゃうわ」
リオンは、もしかして私が学年1位を取ったから面白くないのだろうか……?
「ねぇ、ちょっと聞いてる? ユニス!」
突然腕を引かれて我に返った。
「あ……ご、ごめんなさい。自分が1位を取れたことが信じられなくて、ぼ〜っとしてたみたい」
「何だ、そうだったのね。でも分かるわ、その気持。だって、ユニスは女子の中で一番頭が良いことが決まったのだから。男子は2名だけど。でもさすがは万年トップのアンディ様とザカリー様よね」
「アンディ……ザカリー……?」
その名前を聞いた時、私はまるで雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
「え!? 待って、今アンディとザカリーって言った?」
「ど、どうしたの? ユニス。だって、クラスは違うけど……あの2人は有名人じゃない。学年で1、2位を争う天才だって」
「そ、そう……」
何故今まで気づかなかったのだろう。私はリオンと始めて会った時に前世の記憶を取り戻している。
アンディとザカリーは「ニルヴァーナ」のゲームに出てくる4人の攻略対象のうちの2人だと言うのに。
まさか、既にこの学園にいたなんて……。
「フフフ。ユニスがそこまで慌てるなんて珍しいわね。でも確かにレベルが違いすぎるし、試験の結果発表なんて気にしたこともなかったものね。どうせ私達とは関係ない話だから」
「確かに……」
エイダの言うことは尤もだ。試験結果は上位50人までしか発表されない。
一般クラスの私達とは無縁なので、掲示板を見に行ったことすら無かった。
「でも今回のことは、きっと大騒ぎになるはずよ」
エイダと2人で教室に向かって歩いていた時。
「ちょっと待ちなさい!! ユニス・ウェルナーッ!!」
背後から突然大きな声で呼ばれ、私とエイダは驚いて振り向いた。すると腕組みしているロザリンの他に、5人の女子生徒たちが集まっている。
彼女たちは全員私を睨みつけていた。
「ユニス……あの子達、全員SSクラスの2組の人たちよ……」
エイダが怯えた様子で耳打ちしてくる。
「ええ、そうね。だからエイダは先に教室へ行って」
「え!?」
「あの子達が用があるのは私だけだから。早く、教室に行ってて頂戴」
「だ、だけど……」
エイダが泣きそうな顔になる。
「私なら大丈夫だから」
すると、ロザリンが指さしてきた。
「ちょっと! 一体そこで2人揃って何コソコソしてるのよ!」
「エイダ、早く行って!」
私はエイダの背中を押した。
「わ、分かったわ……ごめんなさい!」
エイダは私から離れると、走り去っていった。
周囲では何事かと私達を取り囲んでいる生徒たちがいる。
「何で、あの子を行かせたのよ?」
腕組みしたままロザリンが私に尋ねてきた。
「だって、用があるのは私だけでしょう?」
「まぁ確かにそうだけどね」
ロザリンが意地悪そうに笑った。
大丈夫、こんなに大勢いる前で私に何かしてくるはずはない。恐らく別に何か魂胆があるに決まっている。
私を陥れるための何かを――