それからの私は、試験勉強に没頭した。
とにかく今私に出来ることは勉強だけだった。試験でロザリンよりも良い点数を取らなければ、終わりだ。
私は誕生パーティーに参加できないだけではなく、リオンの魔力暴走によって多くの人たちが犠牲になってしまうかもしれない。
「何としても、それだけは阻止しないと……」
私は寝る間も惜しんで、勉強を続けた。
そしてその間、1度もリオンやロザリンと顔を合わせることは無かった――
――1週間後
今日は学力試験の日だった。試験科目は7科目。1日で全ての試験を終わらせるので、生徒たちにとってはとても負担がかかるスケジュールとなっている。
学園に到着し、正門をくぐり抜けたところで声をかけられた。
「おはよう、ユニス」
振り向くとロザリンが3人の女子生徒を伴っている姿があった。
「おはよう、ロザリン」
すると一緒にいた女子生徒たちが次々と言い合う。
「この人ね。リオン様の婚約者って」
「ほんと、地味な外見ね」
「一般クラスのくせに、私達と張り合うなんて生意気よ」
その様子を黙って見つめていると、ロザリンが意地悪な笑みを浮かべた。
「試験、せいぜい頑張ることね。ま、所詮あんたの頭じゃ私達の足元にも及ばないと思うけど」
「私の試験の心配をしてくれているの? ありがとう」
すると途端にロザリンの顔が険しくなる。
「誰が、あんたの心配なんかするのよ! もう今から負けを認めたほうがいいわよ? そうしたら、特別に少しだけリオンの誕生パーティーに顔出しするのを許してあげてもいいわよ? ま、せいぜい5分くらいだけどね?」
ロザリンの言葉に3人の女子生徒たちがクスクス笑う。
「その必要は無いわ。私は負けを認める気はないから。用はそれだけ? なら教室に行くわ」
それだけ告げると、私は踵を返して教室に向かって歩き始めた。
「なんて生意気なの! 一般クラスのくせに! 後で泣いて謝ってきても知らないからね!」
背後でヒステリックに叫ぶロザリンの声を聞きながら……。
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教室に入ると、既に教室にいたエイダが駆け寄ってきた。
「おはよう! ユニス!」
「おはよう、エイダ。どうしたの? そんなに慌てた様子で」
「それはそうよ。だって、今日はいよいよ学力試験なのよ? それで……ユニス。試験の方は大丈夫そうなの?」
「そうね。自分の出来ることは全てやったつもりよ。後は自分の実力を出し切るだけよ」
するとエイダがため息をつく。
「本当にユニスは大人よね……そんなに余裕があるのだから」
「そう見える?」
別に余裕があるわけではない。
けれど前世では何度もこういう経験はしてきているし、難関と呼ばれる国立大学を受験して合格しているのだ。
あの時に比べれば、今回の試験勉強は楽だった。
「ええ、でもユニスなら大丈夫そうに見える。頑張ってね、私もユニスを見習って今回はいつも以上に頑張ってきたのよ。それに他の人たちだってユニスの影響を受けているみたいだし」
言われてみれば確かに、クラスメイト達は皆机に向かって真剣な眼差しで教科書を見つめている。
「それじゃ、皆に負けないように私も試験頑張らないとね」
「ええ、頑張りましょうね」
笑顔で頷くエイダ。
そして……いよいよ運命を決める試験が始まった――