リオンからの婚約解消の願い……予想はしていたけれど、改めて本人の口から聞かされるのはさすがにショックだった。
リオンが選ぶのはヒロインのはずなのに。
まだ登場するまでには6年も先なのに、何故今なのだろう。
第一、ロザリンというキャラはゲームには登場しない。恐らく彼女は私と同様、ただのモブキャラに過ぎないのに。
「ユニス、聞いてる? 今、僕は君に婚約解消の話をしているんだけど」
リオンに再度声をかけられ、我に返った。
「う、うん。聞いてるわ。婚約解消の話よね? だけどおじ様とおば様にはその事は話しているの?」
「それがまだなんだ。でも先にユニスに話すべきじゃないかと思ってね」
すると、ロザリンが口を挟んできた。
「そんなことよりも、どうなの? 婚約解消はしてくれるんでしょうね」
私は一度だけロザリンを見ると、リオンに尋ねた。
「リオン、こういう大事な話は第三者の前でするべきことじゃないと思わない?」
「まぁ! 私が邪魔だって言うの!?」
ロザリンの目が吊り上がる。けれど相手にすることなく、再度リオンに尋ねた。
「私とリオンの婚約はお互いの親が決めた事でしょう? それを両親に相談する前に私に……しかも無関係な人の前でする話じゃないと思うんだけど」
するとリオンが口を開く前に、ロザリンが声を荒げた。
「何よ! 私は今リオン様とお付き合いしているのよ!? だけど、リオン様はあなたって言う親が決めた婚約者がいるから悩んでいたの。だから私がアドバイスしたのよ。だったら婚約解消してはどうですかって。私は無関係なんかじゃないわ!」
え……? その言葉に耳を疑った。
「リオン……それじゃ、この人に言われて私と婚約解消しようと決めたの?」
「……うん。そうなんだ」
少しの間を空けて頷くリオン。
私との婚約は他の人の意見で、あっさり解消しようと思えるものだったのだ。
それがとてもショックだった。
どうせ、ヒロインが現れれば私は自分から身を引こうと思っていた。
だからそれまでリオンが不幸な目に遭わないように、自分なりに頑張ってきたつもりだったのに……。それなのに、ゲーム中で名前すら出てこなかったモブキャラが相手だなんて。
だけど――
両手を握りしめるとリオンを見つめた。
「ねぇ、リオン。2人だけで話がしたいのだけど、いいかしら?」
「私が邪魔だって言うの?」
敵意を込めた目で私を見つめるロザリンは、次にリオンに訴えった。
「ねぇ、リオン様。私も一緒に話を聞かせてもらってもいいわよね?」
「ロザリン……」
リオンは何と答えるのだろう? やはりロザリンの言うことを聞くのだろうか?
「ごめん、ロザリン。ユニスと2人だけで話しをさせてもらえないかな」
リオンが私の意見を優先してくれた!
「何ですって!? どうしてなんですか!?」
「だって、ユニスはまだ僕の婚約者だからだよ」
「!」
その言葉に、肩が跳ねそうになってしまった。一方のロザリンは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「そうよね。
「うん、後でね」
ロザリンはリオンに手を振るとこちらを見て、口元に笑みを浮かべた。
それは、まるで私を嘲笑っているかのようだった。
「それでユニス。2人だけの話って、何?」
リオンはロザリンが去ると、すぐに尋ねてきた――