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2章2 魔法学の先生

「先生、本日もよろしくお願いします」


補講が行われる教室に行くと、既に先生が待っていた。


「待っていたわよ、ユニスさん。それでは早速始めましょうか?」


魔法学を教えてくれるオルガ先生は、黒いローブに黒い三角帽子を被った、いかにも魔法使いのような出で立ちをしている。


「まずはいつものように、集中力を高める訓練をしましょう」


「はい、先生」


私は早速、先生と訓練を受けた――



****


「う~ん……やはり、駄目ですね……」


先生が火のついていないロウソクをじっと見つめる。


「す、すみません……」


肩で息をしながら、私は椅子に座り込んだ。結局20分近く、ロウソクに火をつけようと頑張ってみたものの芯を焦がすことすら出来なかったのだ。


「先生、私にはやっぱり魔法は使えないのでしょうか?」


申し訳ない気持ちで先生に尋ねる。


「まぁ、中には全く魔法が使えない人たちもいますが……でも、ユニスさんには魔力があることが分かったのに、妙ですね」


首をひねる先生。


「そうですか、先生にも分かりませんか……」


実は、12歳になって始めて私に魔力があることが発覚したのだ。あの時はとても嬉しかったのに、未だに私は何一つ魔法を使うことが出来ない。

そこで、一縷の望みをかけて先生に補講をお願いしているのだが……結果は散々な物だった。


「別に魔法が使えなくても、それほど気落ちすることはありませんよ。この学園でも、ユニスさんのように魔法を使えない生徒たちはいますから。だけど、何故そんなに必死になって魔法を学ぼうとしているのですか?」


先生は真剣な眼差しで私を見つめている。毎週、私のために時間を割いてくれるオルガ先生。

先生を信頼してみよう。


「先生は……魔力の暴走と言う話は聞いたことがありますか?」


「魔力の暴走……? いいえ、聞いたことがありませんね」


「そうですか」


やはり、そう答えると思っていた。

私は今までずっと魔力の暴走について、様々な本を漁って調べてみた。でも、そのような記述は何処にも見当たらなかったのだ。


恐らく、リオンのように強力な魔力を持つ人物が存在しなかったのだろう。だから魔力の暴走が起きたことが無かった……と、私は考えていた。


「ユニスさん、魔力の暴走というのは何ですか?」


まさか、ゲームの話をするわけにはいかない。


「あ、あの。例えば、バケツに水を入れすぎると溢れてしまいますよね? お湯だって沸かしすぎると沸騰して吹きこぼれてしまうし……。つまり入れ物には限度があるのに容量が大きすぎると、いつかは限界が来て溢れてしまうのでは無いかと思って……!」


自分でも何を言っているか分からない。こんな漠然とした話をしてみたところで意味は無いのに。


ところが……。


「ユニスさん、もしかして……リオン・ハイランドのことを言っているのですか?」


「え!?」


まさか今の話でリオンが出てくるとは思わなかった。


「その様子だと、当たっているみたいね」


「先生……」


「この間彼は魔法学の実践で、それぞれに与えられた薪に火を起こす試験を受けました。他の生徒たちは自分たちの薪に火をつける事ができましたが……」


先生はそこで一度目を閉じた。


「リオンは一瞬でクラスメイト全員分の薪に火をつけてしまい、大火事になるところだったのです。その場にいた教師達が水魔法で消し止めなければ大変な事になっていたでしょう。本人も余程驚いていたのでしょうね。呆然としていました」


「そ、そんなことが……?」


私とリオンは今はクラスが違う。

彼は優秀なSSクラスに所属しているので交流の機会も全く無い。


「大丈夫ですか? ユニスさん。顔色が悪いですよ?」


先生が心配そうに声をかけてきた。


「ありがとうございます。先生……。でも知りませんでした。リオンも話してくれなかったし……」


リオンにとって、私は相談するような相手では無くなってしまったということだろうか? そのことがショックだった。


「多分リオンはあなたに心配かけたくないと思ったのじゃないかしら?」


「そうでしょうか……?」


きっと先生は私に気を使って、言葉を選んでくれているのだろう。


だけど、リオンと私の間に隔たりが出来てしまったのは事実だ。


だって……そうなるように、私があえて彼から距離を取っているのだから――

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