「良く来てくれたね。ユニス」
屋敷に到着すると、リオンの父親が迎えに出てくれた。
「こんにちは、おじ様。本日はお招き頂き、ありがとうございます」
スカートの裾をつまんで、挨拶をした。
この人には一度会ったことがある。リオンと始めて顔合わせをしたときに挨拶をかわしていたからだ。
リオンは父親に目元が良く似ていた。
「すまなかったな。妻がどうしてもユニスに会ってみたいと言ったもので、呼び出してしまって。妻は身体が弱くてね、こちらから出向く事が出来なかったのだよ」
申し訳無さそうに謝ってくる伯爵。
「いいえ、そんなことありません。私、1度リオンの家の遊びに行ってみたいと思っていましたし、おば様にもお会いしたかったので嬉しいです」
何しろ、リオンの母親を救おうと心に決めていたのだから。
「それを聞いて、私も嬉しいよ。それじゃ、リオン。ユニスを案内してあげなさい」
父親に声をかけられ、リオンは返事をした。
「はい。行こう、ユニス。案内するよ」
「ありがとう、リオン。では、おじ様。失礼いたします」
「ああ、またな。ユニス」
ハイランド伯爵に挨拶すると、リオンに連れられて彼の母親の元へ向かった。
「この部屋に母様がいるんだ」
案内されたのは、白い扉の前だった。
「そうなのね」
リオンはノックをすると、ゆっくり扉を開けた。
すると大きな窓を背に、車椅子に座る女性の姿があった。
「お母様、婚約者のユニスを連れてきました」
リオンが声をかけて部屋の中に入っていくので、一礼すると私も彼に続いた。
「いらっしゃい、ユニスさんね? 私はリオンの母、テレーゼよ。よろしくね」
ダークブロンドの女性は私に笑顔を向けてきた。
陽の光の下で見るテレーゼ夫人はとても美しく、風土病を患っているようには見えなかった。
「初めまして、ユニス・ウェルナーです。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「いいのよ、今回は私の我儘でユニスさんを呼びつけてしまったのだから。でもリオン、良かったわね。こんなに可愛らしい人が婚約者なのだから」
テレーゼ夫人はリオンに声をかけた。
「え? 可愛くなんてないですよ! 私なんて、平凡ですから!」
慌てて否定する。
だって、私はただのモブキャラ。18歳になるとヒロインが現れる。
誰にでも愛される美しい女性、そしてリオンもいずれ恋に落ちるのだから。
「フフ、そんなこと無いわよね? リオン?」
「うん、ユニスは平凡なんかじゃないよ」
頷くリオン。否定はしてくれたけど、可愛いとは言ってくれない。
うん、まぁそうだよね。だって実際可愛いわけではないし。
「ふふふ、リオンは照れているのね。それじゃ、早速だけどテラスでお話をしない?」
テレーゼ夫人はドレスのポケットから小さなベルをチリンチリンと振り鳴らすと、メイドが現れた。
「奥様、お呼びですか?」
「ええ、お茶の準備をして頂戴」
「あの、私にもお茶の用意をさせてください!」
お茶……その言葉を私は待っていたのだ――